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アラブ世界初の衛星

アラブサットの通信衛星は現在、中東地域に現在何百ものテレビやラジオのチャンネルを届けている。(ゲッティからの写真)
アラブサットの通信衛星は現在、中東地域に現在何百ものテレビやラジオのチャンネルを届けている。(ゲッティからの写真)
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04 Jun 2020 09:06:54 GMT9
04 Jun 2020 09:06:54 GMT9

ニダル・ゲスーム

Arabsat-1Aは、急成長する中東地域の宇宙時代の幕開けとなった。

概要

1985年2月8日、初のアラブサット衛星がフランスのロケットに搭載され軌道に打ち上げられたことにより、アラブ世界の宇宙進出が始まった。アラブサット-1Aは失敗したものの、その後すぐにアラブサット-1B がサウジアラビアのスルタン・ビン・サルマン王子が搭乗するNASAのディスカバリー・シャトルに搭載され打ち上げられ、歴史的な宇宙旅行が実現した。

中東地域の宇宙事業が都市計画や軍の監視活動において重要な役割を果たす一方、アラブサットの通信衛星は現在、何百ものテレビやラジオチャンネルを中東地域に届けている。数十億ドルの投資が行われ、宇宙科学技術の分野は、中東地域の成長に欠かせない分野となっている。またアラブ諸国は国際宇宙ステーションから火星までの任務を計画している。

アラブ首長国連邦 シャルージャ:現在のアラブ宇宙時代は、アラブの衛星通信組織であるアラブ衛星通信機構のおかげである。1985年2月、アラブサットは衛星の第1号機を打ち上げた。(その後35年間で16機)2020年までに、アラブ世界には少なくとも6つの宇宙機関が設立され、数十機の人工衛星(数年の間に他の衛星と入れ替わったものもある)が打ち上げられ、3人の宇宙飛行士が宇宙ステーションで過ごした。そして間もなく火星に行く宇宙探査機が誕生する。

アラブサットは、中東、アフリカの半分、ヨーロッパの大部分における何百ものテレビやラジオのチャンネルを届ける衛星として主に知られている。しかし、様々な宇宙通信サービス(衛星電話やブロードバンド・インターネットを含む)の提供に加え、アラブサットは先駆的で大きな影響力を持つ組織としても知られている。アラブサットは1976年にアラブ連盟加盟国によって設立され、1985年2月から静止通信衛星の打ち上げを開始した。サウジアラビアとクウェートはアラブサットの半分強の株式を保有しており(それぞれ36.7%と14.6%)、残りは他の19のアラブ諸国が保有している。

1985年はアラブ世界の宇宙(元年)の年となった、アラブサット1Aの打ち上げは、残念ながら失敗したものの、すぐにこれを置き換えたのがアラブサット1Bだ。アラブサット1Bは、サウジアラビアの宇宙飛行士サルタン・ビン・サルマン王子がNASAのスペースシャトルに搭乗し行った歴史的な宇宙旅行により打ち上げられた。

その後の30年の間に、アラブ諸国は宇宙機関(1989年のモロッコから2014年のアラブ首長国連邦まで)を設立し、主に通信やリモートセンシングを目的とした集団的または国別の目的のために、多くの衛星を打ち上げた。イラクはアラブ諸国で初めて人工衛星を打ち上げた国であり(1989年12月に)、世界で10番目に人工衛星を軌道に乗せた国となった。

年表:

  • 1

    サウジアラビアが大部分を出資したアラブサットはアラブ連盟の21の加盟国により設立され、リヤドに本部を置いている。

    Timeline Image 1976年2月14日:
  • 2

    フランスのアリアンロケットに搭載され、フランス領ギアナの基地からアラブサット初の衛星「Arabsat-1A」が打ち上げられた。

  • 3

    アラブサット-1Bは、アラブ人、イスラム教徒、王族として初の宇宙飛行士となるサウジアラビアのサルタン・ビン・サルマン王子とともにNASAのスペースシャトル「Discovery」に搭載され、その翌日打ち上げられた。

    Timeline Image 1985年6月17日:
  • 4

    アラブ首長国連邦は、初の国産衛星「KhalifaSat」を打ち上げた。

    Timeline Image 2018年10月30日:
  • 5

    サウジアラビアの民間企業「Shammas」が、王国内の民間衛星「BadrSat」に出資すると発表した。

  • 6

    SpaceXは、Arabsat-6Aを世界で最も強力なロケットである「Falcon Heavy」に搭載し打ち上げた。これはFalcon Heavyの初の商業打ち上げとなる。

    Timeline Image 2019年4月11日:

アラブの宇宙事業への取り組みは2014年に、アラブ首長国連邦が2020年7月に打ち上げを予定している火星への探査機を建造する計画を発表したことにより飛躍的な進歩を遂げた。2018年には、すべてアラブ首長国連邦により建設された国産初の高解像度リモートセンシング衛星「KhalifaSat」が打ち上げられた。そしてアラブ首長国連邦出身の最初の宇宙飛行士であるハッツァ・アル・マンスーリが2019年に国際宇宙ステーションへと送り出された。これは1987年以来、最初のアラブ人宇宙飛行士であり、合計でもたった3人目となる。小規模ながらも宇宙における功績が他にもこの地域で行われてきた。大学や研究機関が「Cubesats」を建設し、宇宙に送り出している。サウジアラビアは、中国の嫦娥4号(嫦娥4号)の月の裏側への任務を支援するために打ち上げられた月通信衛星に貢献し、サウジアラビアの民間企業であるShammas社は、サウジアラビアの民間企業が所有する初の衛星である「BadrSat」を始動させた。

「アラブサットシステムは、アラブ諸国の22カ国における8,000以上の電話回線、コミュニティテレビチャンネルを含む8つの地域および国内のテレビチャンネルに対し、向上した通信を提供することになる。

1985年2月10日、アラブニュースのワシントン支局の一面記事より

宇宙科学技術は、学術、技術、経済など様々な分野でインフラや人材の育成を目指す国々にとって必要不可欠な分野となっている。アラブ諸国は宇宙の戦略性を理解し、様々なプログラムに数百万ドルから数十億ドルを投資してきた。

情報通信に加えて、宇宙科学技術プログラムには、戦略的、教育的、商業的に多くの利点がある。

戦略的に、政府は軍事行動は言うまでもなく、自然環境の変化から密輸などの違法行為に至るまで、自然と人間の両方の活動を監視しなければならない。

教育的には、学生らは宇宙事業に携わることにより人工衛星や機器の設計を学び、人工衛星で得られる豊富なデータを使用し、現状の課題の解決に取り組むことができる。また、このような宇宙事業を通して身につけた技術は、幅広い分野で活用することができる。急成長するアラブの宇宙時代は、今後の基礎研究と応用宇宙研究の両方でイノベーションを起こす若い専門家や宇宙に熱心な人々の幅広い基盤必要としている。そのためには、様々な種類の構造全体の関与が必要である。

1985年2月10日のニュースを示すアラブニュースのアーカイブより

商業的には、衛星は、高精細な放送、ブロードバンド・インターネットや電話、特殊なイベントや活動(捜索や救助活動を含む)のリアルタイムの画像を提供し、他の多くの収益性の高い、または重要な冒険性を提供することができる。アラブ世界の一部を含め、多くの宇宙機関がこの競争に参戦し始めた。

次にアラブ世界、特に湾岸地域が達成すべき大きな事業は、人工衛星や探査機を搭載した宇宙船を打ち上げることのできる施設の建設である。アラブの6カ国は宇宙機関や機関を設立しており、そのうちのいくつか(アルジェリア、エジプト、モロッコ、サウジアラビア、アラブ首長国連邦)は独自の人工衛星を運用している。しかし宇宙船の打ち上げ能力や宇宙飛行士の訓練施設を持っている国はない。

アラブ世界は、次世代宇宙事業を追求し、実行するために、資金と人的資源を蓄えるべきである。

ニダル・ゲスーム

このような取り組みや施設が地域的に設けられる可能性がある。実際、欧州宇宙機関と同じような、新しく野心的で集団的な事業を調整し運営するための全アラブ宇宙機関の設立を求める声が上がっている。このような地域機関があれば、衛星や探査機の建設、打ち上げ、運用にかかる費用を削減し、宇宙飛行士や若い専門家を育成することができる。アラブ世界は、21の国に衛星通信を提供するために一丸となったアラブサットの例に倣うべきである。これからは、資金と人材をプールして、次世代の宇宙事業を追求し、実行していかなければならない。

宇宙開発プログラム(技術と探査)は、科学的、技術的、経済的、教育的、文化的発展を遂げているこの時期に、アラブ世界に多くを提供している。宇宙計画は現在、都市計画、土地の観測と利用、軍事監視などにおいて重要な役割を果たしている。より密接に言えば、宇宙計画は国家に地政学的な威信を与える。また、非常に重要なことに、若者に感銘と教育の道を与える。

アラブサットは様々な意味で大きな成功を収めた。ラブ世界はアラブサットの成果の後に続くため、今こそ、ア明確で多面的、かつ未来を見据えた宇宙戦略を集団的に設定しなければならない。

  • アラブニュースのコラムニスト、ニダル・ゲッソムは、アラブ首長国連邦のアメリカン・シャルジャ大学で物理学と天文学の教授を務めている。ツイッター:@NidhalGuessou
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