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着物風のアバヤと日本の芸術:ドバイのCHI-KAは日本とアラブ首長国連邦の結びつきを探る

「長く使えるよう作られていて、何世代も受け渡していくことができます。それこそ着物の精神です」とネマニャさんは説明する。
「長く使えるよう作られていて、何世代も受け渡していくことができます。それこそ着物の精神です」とネマニャさんは説明する。
04 Nov 2019 05:11:54 GMT9

ラワー・タラス、ドバイ

ドバイを拠点に活動しているセルビア人のニーナ&ネマニャ・ヴァルヤレヴィッチ夫妻は、長年日本の全てに魅了されている。2人は何度も日本に渡航し、富士山に登ったり、スキーを楽しんだり、フリーマーケットを訪れたり、日本各地の都市や村を旅して回った。その中で2人は日本に深く魅了されていった。

「私たちは世界中の美しい国々を旅してきましたが、日本には何か特別なものがあって、私たちは何度も日本に行っています」と、アートマネジメントを学んだニーナさんは『Arab News』に語った。

そのため、燃える情熱をさらに追求しようと、ドバイの文化ハブとなっているアルセルカル通りに、ヴァルヤレヴィッチ夫妻が3年前CHI-KAという日本を専門に扱うアートスペースと着物ショップをオープンしたのも頷ける。

「私たちは大変困難な時代に生きています」と、ベオグラードで映像演出を学んだネマニャさんは語る。「そこで、自分たちにできることをしようと、私たちは他者の良さを広める活動をしています。日本は私たちに本当にたくさんのものを与えてくれました。私たちが今こうして活動しているのは、1つにはお礼ができればと思ってやっていることです」

2人は「お礼をする」という発想をベースに、伝統的な着物とアバヤ衣装の要素を組み合わせた婦人服シリーズを制作するなど、日本とアラブの両方の世界の最高の要素を広める活動をしている。

ネマニャさんによると、このように芸術分野の融合を試みたのには、伝統的な着物を別の文化と組み合わせて中東で前衛的な衣装を制作することで、着物を「未来にも受け継がれるよう本格的に生まれ変わらせる」という、投資の一面もあったとのことだ。「長く使えるよう作られていて、何世代も受け渡していくことができます。それこそ着物の精神です」とネマニャさんは説明する。

[caption id="attachment_2745" align="alignnone" width="433"] 現在、日本領事館と「紙のソムリエ」杉原吉直氏とのコラボレーションで、「和紙」という長く愛されてきた日本の選りすぐりの紙が11月16日まで展示されている。[/caption]

オープン以来アートスペースでは、ネマニャさんによると「日本文化を典型的な形で提示」しないことを試みており、多くのテーマのもとで数多くの展覧会が開かれている。例えば、着物の色の象徴性をテーマとするものや、新進気鋭のアラブ首長国連邦のアーティストに日本の芸術が及ぼした影響をテーマとするものなどである。

現在、日本領事館と「紙のソムリエ」杉原吉直氏とのコラボレーションで、「和紙」という長く愛されてきた日本の選りすぐりの紙が11月16日まで展示されている。

日本とアラブ世界は地理的にも文化的にも遠い関係にあるが、ニーナさんとネマニャさんはこれら2つの世界の間にはある種の類似性があることを示したいと考えている。その類似性を2人は好んで「目には見えない繋がり」と呼んでいる。

「装束に関しては、どちらの世界でも慎ましさが重視されています」とニーナさんは指摘する。「特に着物文化では、女性は肌を見せず、優雅で繊細でかなり慎ましい装いをします。ここアラブ首長国連邦の女性とも似ています」

両地域間では古くから貿易が栄えており、貿易は今日でも両地域を結びつける存在であるが、それだけではなくネマニャさんによるとインテリアデザインの観点からも類似性が見出せるとのことだ。特に、両文化におけるプライベートな家族用スペースの取り扱われ方が似ているとのことだ。

また細部へのこだわりが何度も話題に上った。2人はこの2階に渡る空間をオーダーメイドで設計する際にも、その名前からインテリア用の木材まで、細部へのこだわりを忘れなかったという。

2人の建築コンセプトに息吹を吹き込むにあたり、2人はアラブ首長国連邦を拠点に活動する2人の日本人建築家とデザイナーを頼った。マルヤマタケシ氏とオザワマナブ氏だ。その結果完成したのは、日本らしさが万国共通のスタイルと融合し、優雅さとミニマリストの精神があふれる空間であり、その白い壁と高い天井のおかげで広々と感じさせるものとなった。また、日本から襖を輸入して居心地の良い畳の和室も作られ、そこでは着物風のアバヤが展示されている。

ニーナさんによると、CHI-KAという名前も考え抜いたものだという。「『Chi』と『Ka』はそれぞれ別の単語です。日本語では、『chi』は大地の要素を、そして『ka』は火の要素を表します。これらの2つの要素は、特に女性にとって、相性が良いと私たちは感じました。女性は『chi』に根ざして大地とのつながりを感じながらパワーを得られ、『ka』からはエネルギーと情熱が感じられます。つまり女性にはその両方が少しずつ備わっているということです」

[caption id="attachment_2746" align="alignnone" width="464"] ドバイを拠点に活動しているセルビア人のニーナ&ネマニャ・ヴァルヤレヴィッチ夫妻は、長年日本の全てに魅了されている。[/caption]

婦人服シリーズに関しては、アラブのカフタンに日本の「帯」をあしらったものやアラブ首長国連邦のアバヤに幅のある着物の袖をあしらった着物風アバヤがあり、どれもCHI-KAの工房で丁寧に手作りされている。どれもアースカラーで、シルク100%、リネン、およびその他の日本の生地から選べる。

また最後の仕上げとして、幸運を表す折り鶴のモチーフが表からは見えない位置にあしらわれており、ここからもデザイン段階で非常に細かい部分にまで注意が払われたことがわかる。これは日本人が古来からもつ意識であり、ニーナさんとネマニャさんはこの意識に魅了されている。

「日本人は何に対しても最後に1つ仕上げとして何かをします」とニーナさんは言う。「それが何であれ、非常に注意深く品のあるものになっているように私は感じます。そば作りにおいても何かを包装する際もそうです。これほどの細部へのこだわりは日本以外では見たことがなく、私は非常に感激しました。自分のことを細部にこだわる人だという人もいますが、それに対して私は『いいえ、日本人を見るまではそんなこと言えませんよ』と返しています」

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