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エジプト政府は人気のトゥクトゥクの廃止に乗り出す

国は、トゥクトゥクがカイロの広大で雑然とした街並みにおける生活の一部となっていたため、長い間目をつぶってきた。(AP)
国は、トゥクトゥクがカイロの広大で雑然とした街並みにおける生活の一部となっていたため、長い間目をつぶってきた。(AP)
05 Dec 2019 03:12:53 GMT9

AP、カイロ

  • カイロはトゥクトゥクを汚染の少ないミニバンに置き換える計画
  • 「もしこれを持っていかれたら…家族はどうやって食べていけばいいんですか」

トゥクトゥクとして知られる三輪自動車は、過去20年間カイロのスラム街を席巻してきた。ほこりっぽい路地を通り抜け、ゴミ箱やフルーツスタンドを避けながら、リズミカルなエレクトロポップを鳴り響かせ、毎日、市街の雑踏をくぐり抜けながら何百万人ものエジプト人の家をけん引してきた。

今、政府は、汚染をまき散らす三輪自動車に対してこれまでで最も野心的な立場を取ろうとしている。これまで無視されてきた国の輸送システムの近代化を推進するため、トゥクトゥクを汚染の少ないミニバンに置き換える計画である。

「これはすべてのエジプト人の健康と安全のためです」と、イニシアチブの先頭に立つエジプト地方開発省のスポークスマン、Khaled El-Qassimは言う。「私たちは、より美しい国のイメージを作り上げようとしているところです。」

国は、トゥクトゥクがカイロの広大で雑然とした街並みにおける生活の一部となっていたため、長い間目をつぶってきた。

新しい計画は、運転手がトゥクトゥクを売却してスクラップとし、新しいミニバンを購入するためのローンを組むことを要求している。これに従わない場合、罰金または起訴されることさえある。すでに経済緊縮策で圧迫されている最も貧しいエジプト人が、大きな負担を背負わされることになるのではないかという懸念が高まっている。

「 このミニバンにお金を払うよりは泥棒にでもなったほうがいい」と47歳のEhab Sobhyは言う。彼は、ライセンスの代わりに装飾的なイスラムのステッカーを貼り付けた黒と黄色のトゥクトゥクで人や建物が密集したショブラ地区を走り回り、1日130ポンド、約8ドルを稼いでいる。

「もしこれを持っていかれたら…家族はどうやって食べていけばいいんですか」とSobhyは言う。政府からの融資があったとしても、彼の見積もりによれば新しいミニバンを購入するには90,000ポンド必要で、そんな余裕はないと彼は語った。

「銀行にはお金が集まるでしょうが、それはすべて庶民の犠牲の上でのことです」と、塗装工としての仕事を見つけるのに苦労しトゥクトゥクの運転を始めた5人の子供の父親、52歳のMohammed Zaydanは言い切る。

ホスニー・ムバーラク元大統領は、カイロの裕福な地域のほとんどでトゥクトゥクを禁止し、トゥクトゥクの潮流を食い止めようとした。しかし、一方ではトゥクトゥクの部品が南アジアからエジプトに流れることを許したため、自動車の製造業者は合法的に無免許の車両を組み立てて販売した。

これは、非公式経済に対する国の矛盾したアプローチの典型例である。国際労働機関によると、非公式経済部門はエジプトのGDPの50%から60%を占めている。

「能力が限られているため、国は深く根付いた非公式性を頼りにしており」、または無許可住宅の建設などDIYインフラに頼ることにより、政府が貧困層に大規模なサービスを提供するのを避けていると、カイロを拠点とする政治経済専門家のAmr Adlyは語った。

ビジネスは急速に拡大し、三輪自動車は障害者、高齢者、混雑するバス停での嫌がらせを避けたい女性に特に人気を博した。

しかし、それはすぐに変わる可能性がある。

アブドルファッターフ・アッ=シーシー大統領の政府は、ここ5年に渡ってエジプトのイメージの刷新に努めてきたが、今、この規制のなかった車両に狙いを定めている。

昨年、政府は、すべての新しいバイヤーがトゥクトゥクのライセンスを取得することを要求する交通法を可決した。国内最大の自動車メーカーであるGhabbour Groupは大きな打撃を受け、トゥクトゥクの販売は60%減少した。

9月、ムスタファ・マドブーリー首相は、20の県でトゥクトゥクを段階的に廃止し、7人乗りのガス式ミニバンに交換するという抜本的な計画を発表した。この提案は、ドライバーに最大5年間のペイオフ期間を提供し、都市および主要道路からすべてのトゥクトゥクを禁止しているが、新規の認可を受けたトゥクトゥクは狭い路地や農村部での運転を継続できるものとしている。

エジプトの財務省と軍需省は、主要な自動車メーカー3社とともに、詳細を検討するための経済レビューを開始しており、マイクロバスが1年以内に街頭に出ると期待している。

開発省のスポークスマンであるEl-Qassimは、トゥクトゥクは交通渋滞、大気汚染、致命的な自動車事故を引き起こしているほか、さらに政府が無免許の車両を追跡できないことからテロの原因にもなっていると言う。彼はそれらがエジプトの経済的生産性の足かせとなり、10代の若者を学校から遠ざけ、登録料と税金から得られる国の収入を奪っていると説明した。

しかし、懐疑論者は、サイズが小さくて、操縦性が高く、運賃も安いと高く評価されているトゥクトゥクを、メーカーがサイズも価格も4倍になると予想しているマイクロバスに切り替えるという論理に疑問を投げかけている。

「それは、人々が実際に暮らすインフラストラクチャに投資するよりも、国がいかに外見に取りつかれているかを反映しています」と、カイロ・アメリカン大学の政治学者Rabab El-Mahdiは語る。

2014年に権力を掌握して以来、アッ=シーシー大統領は、野心的なメガプロジェクト、最高級の住宅団地、およびカイロ郊外の砂漠に広がる450億ドルの新しい行政首都の建設といった事業に注力してきた。より大きな目標は、ムバラーク政権を打倒した2011年のアラブの春の混乱から回復し、観光業を復活させ、外国からの投資を誘致することにある。

その間、カイロの大部分は荒廃と衰退の悪循環に陥って行った。国の統計機関は最近、エジプト人の3分の1が貧困に苦しんでいると報告した。経済的な崩壊を食い止めるために課された厳しい緊縮措置により、補助金が削減され、地下鉄料金から飲料水に至るまでのすべての価格が劇的に高騰し、労働者階級のエジプト人は多大な犠牲を強いられてきた。

9月には、急激な経済的不満と政府による腐敗の疑惑から、大統領に対する小規模ではあるがまれな抗議行動が行われた。治安部隊は数千人を逮捕し、長期にわたる取締りへと拡大した。

「国は、強権を発動することにやぶさかではありません」とEl-Mahdiは語り、軍事的な意識が政府全体の変化を生み出していると付け加えた。

それでもなお、新しい計画の実施には課題があると指摘する声もある。交通法に従うよりも警察に賄賂を送ることに慣れている人々の間で、政府が登録をどのように確保するかなど、多くは不確実なままである。

「人々は抵抗し、こうした展開を回避し、生き延びようとするでしょう、」と、コロンビア大学のYasser Elsheshtawy建築学教授は言う。「これは非常にエジプト的なものです。」

終わり

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