• 今年のG20サミット議長国であるサウジアラビアは、COVID-19の危機が世界経済を脅かしていることから、急遽会合を呼びかけた。

フランク・ケーン

ドバイ：20カ国・地域（G20）の首脳サミットが正式に閉幕した直後、従来どおりに声明が出されたのは良い兆しである。

議題に上った問題について真正かつ広範な合意がなされたこと、そして、結束と総意を表明する文章には、土壇場の策略的な「便宜」はなかったことを意味するからだ。

声明が出されたのは、木曜日、議長国サウジアラビアの呼びかけで開かれた臨時のG20バーチャル会合でのことだ。サルマン国王が90分間の会合を正式に閉会して数分のうちに、声明がととのっていた。世界の強国の首脳たちがコロナウイルス感染対策に取り組み、世界経済への影響を軽減するべく決意を固め、団結していることを世界に示す内容だった。

このサミットはさまざまな面で異例づくしだった。サウジアラビアの呼びかけにより、11月にリヤドでの開幕が予定されている会談に何か月も先立って、急遽開催された。1年間に2回以上のG20サミットが行われたのは、過去に2度、世界的な金融危機の真っ只中の2年だけである。

また、物理的な大舞台のイベントだった過去すべてのG20とは違い、デジタル技術経由で開催されたのも異例だった。今の時代の特徴として、世界の首脳20人をオンラインでつなぐ技術を準備するほうが、体をひとつの場所に集めるよりも容易であることが明らかになった。ウイルスはデジタル時代の価値を証明している。

しかし、より根本的な意味で稀有だったのは、数週間前には考えられなかったような状況に対処しようとしたことだ。数万人の死者が出た事実と、近代史上最速の経済的衰退は、かつてない形で意思をひとつにさせた。

今回のサミットに公式の議題はなかったが、世界中が医療、経済の喫緊の課題に直面する中、その必要はなかった。首脳は次の2つの事案だけに集中した。

保健上の緊急事態については、ウイルスに対抗するために「必要とあれば何でも」実行することについて当然のように合意がなされ、G20はそれを「絶対的な優先事項」であると述べた。

また、国際的な協力なくしては実現できないという熱心な合意のもと、ウイルス対策の最前線の機関として世界保健機関（WHO）、疫病対策・改革連合（Coalition for Epidemic Preparedness and Innovation）、GAVIアライアンス（Gavi, the Vaccine Alliance）を全面的に支援することが約束された。G20は「ウイルスは国境にとらわれない」と述べ、近年、危機にさらされているグローバリストの倫理を再確認した。

経済の影響については、5兆ドルという数字が衝撃をもって報じられた。世界中が陥っている不況を打開するため、財政・経済・与信のイニシアチブを通じて世界経済に注入するとして、現在までにG20のメンバーが約束した金額である。

この注入や将来の追加注入などによって、現在の不況が1930年代のような恐慌に陥るのを、それがもたらし得る深刻な人間的、社会的、地政学的な影響も含めて防ぐことが望まれる。今回の対策の妥当性は時間と金融市場が証明するだろう。

バーチャル・サミットを計画したのがサウジアラビアだったため、地政学を考慮する一部の人々は、石油・ガス市場に急激な負荷がかかっているこの時期、首脳陣が世界を対象にしたエネルギー政策に合意することもできるだろうと期待していた。会合前から米国は最終的な声明ではエネルギー資源に関する何らかの決議が必要だとの圧力をかけていた。

首脳陣はこの圧力に抵抗した。結局、1,500語の文書に「石油」と「エネルギー資源」の文字はなかった。 懸念を持つ一部のエネルギー専門家は、G20が「グローバルなサプライチェーンの混乱を解決するために努力する」との一般的な約束に安堵したが、それはあくまで期待された中でも最低限の結果であった。

スクリーン上の「会議を退室」ボタンを押した首脳たちは、首尾よく遂行された仕事を振り返ることができた。世界はG20の首脳陣に誓約と一致を求めていたのだ。それはこの会合で実現した。