新紙幣発行が来月3日に迫る中、飲食店などからは負担増に不満の声が出ている。さらなるキャッシュレス化をにらみ、「脱紙幣」を加速させる会社も。若年層には「電子決済での支払いも多い。新紙幣の発行すら知らなかった」と無関心な人も多い。
東京都千代田区のラーメン店「覆麺 智」では新紙幣対応のため、約30万円をかけて5月に券売機の部品を交換した。店主の及川智則さん(53)は「国の勝手で発行されるのに国からの助成金はない。全額自己負担では厳しい」と表情を曇らせる。物価高の影響もあり、値上げも検討するが「お客の数が減ってしまうかも」と悩む日々だ。
一部自治体では対応を後押しする動きも出ている。葛飾区は来月1日から、小規模店が新紙幣対応の券売機を購入する場合などに、30万円を上限として半額を補助する取り組みを始める。区の担当者は「スムーズな入れ替えを支援したい」と話す。
さらなる「脱紙幣」へかじを切る企業もある。コインランドリーの製造メーカー「TOSEI」(品川区)では新紙幣発行を受け、キャッシュレスのみに対応した機種を昨年秋に売り始めた。発行が近づくにつれ、導入店舗も増えているといい、担当者は「スマホ決済などの普及で今後ますますキャッシュレス化が進むのでは」と予想する。
街の声はさまざまだ。都内の大学に通う中本琉心さん(21)=横浜市戸塚区=は「周囲ではキャッシュレス決済を使う人が多い。新紙幣は話題にならず、20年ぶりの発行も知らなかった」と話す。
「現金派」という中野区の主婦(50)は「自販機が未対応だと新紙幣が使えなくて困るかも」と不安そうな様子。一方、台東区の会社員女性(27)は「偽造紙幣の流通を防ぐ効果も期待できるので、発行には意味があるのでは」と話した。
時事通信