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コロナウイルス、中東経済の多方面に損害

中東・コーカサス・中央アジア地域における COVID-19 と原油価格の暴落の影響は多大であり、より深刻になる可能性がある。 (AFP)
中東・コーカサス・中央アジア地域における COVID-19 と原油価格の暴落の影響は多大であり、より深刻になる可能性がある。 (AFP)
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04 Apr 2020 08:04:23 GMT9
04 Apr 2020 08:04:23 GMT9

アンソニー・ロウリー

アラブニュース特別寄稿

世界の一部地域の政治エリートたちはコロナウイルスの脅威を認識し対策を取るのを渋っているが、国際通貨基金 (IMF) はこの脅威の経済的影響の診断と治療を速やかに行っており、これは中東地域においても例外ではない。

今週、 IMF のジハド・アズール中東中央アジア局長は「中東・コーカサス・中央アジア地域における COVID-19 と原油価格の暴落の影響は多大であり、より深刻になる可能性がある」との認識を示した。

片方の局面では救済が近いようである。原油価格は、サウジアラビアとロシアを筆頭とする主要産油国間の、コロナウイルス感染拡大によって起きた価格破壊を和らげることを目的とする減産合意への期待感から、木曜日に高騰した。

しかしアズール氏が IMF 特別ブログで記したように、「公共衛生に対する脅威に基づく渡航規制によって、石油の需要は世界規模で減少しており」、原油価格の回復は産油国の収入の回復を意味するものではない。

コロナウイルスという脅威は「この地域のイラクやスーダンといった紛争にあえぐ脆弱な国家にとっては特に厄介である」と、以前はレバノンの財務大臣を務め、現在は IMF の中東・北アフリカ・中央アジア・コーカサス地域における活動を監督するアズール氏は述べている。

紛争にあえぐ国家では「脆弱な医療体制で感染拡大に対処する難しさは、グローバルトレードにおける混乱による輸入の減少と組み合わさって複雑化する可能性がある。医療用品や生活用品の不足を引き起こし、価格の高騰が起こるかもしれない」とアズール氏は推測する。

「このパンデミックは人々の健康に対する甚大な影響のみならず、国内および国外における需要の落ち込み、貿易量の減少、生産の途絶、消費意欲の鈍化、金融環境の引き締めといった同発的ショックによって経済的な悪影響を巻き起こしている」とする。

公共衛生に対する脅威に基づく渡航規制によって、石油の需要は世界規模で減少しており、 OPEC 参加国間の減産合意がなされないために石油の供給過剰が起きている、とアズール氏は述べる。

「結果として今回の公共衛生の脅威が始まって以来、原油価格は 50% 以上下落した。入り組みあったショックによって地域経済は、最低でも今上半期中は甚大な損害を被ることが想定され、その影響は永続的に続く可能性がある」という。

パンデミックの拡大を防ぐ対策は雇用が豊富な業種を直撃している、とアズール氏は述べる。「エジプトにおける観光客の訪問キャンセルは 80% に達する。またアラブ首長国連邦やその他の国々ではホスピタリティとリテールが影響を受けている」としている。

「サービス業の雇用者数の多さを考えると、失業数が増加し賃金や仕送りが減少すれば、広範囲にわたる反響が出ることになる」

また生産と製造も分断されており、投資計画が保留されていることを局長は付け加えた。彼は「これらのショックは、世界中の経済において見受けられるように、商機と消費意欲の急減と組み合わさって、より不利な状況をもたらしている」とみている。

「 COVID-19 による経済的混乱に加えて、地域の石油輸出国は商品価格の下落に影響されている。輸出収入の減少は対外収支の悪化と収益の減少を伴い、政府予算を圧迫しその他の経済にも影響を及ぼす」という。

世界規模でのリスク回避傾向の急増と資本の安全資産への逃避は、およそ 20 億ドルにものぼる中東および中央アジア地域に対する資産ポートフォリオの減少を招いている、とアズール氏の報告は述べる。

株式価格は下落し、債券利回りは高騰している。このような金融環境の引き締めは、 2020 年度に満期を迎える対外公的債務が 350 億ドルにも達すると予想されるこの地域にとっては大きな困難となる可能性がある。

「地域における直近の優先政策は民衆をコロナウイルスから守ることにある」とアズール氏は強調する。「対策は公共衛生を保護するための感染の沈静化と抑制に重点をあてるべきだ」とする。

イランでは「ウイルスの感染拡大が特に深刻であり、政府は医療支出を増大し、保健省に追加予算を提供している」とアズール氏は述べる。

現時点における財政上の措置は、全般的な経済刺激策ではなく、最も損害が大きい業種の痛みを和らげることに目標を定めるべきである、と以前は財務大臣であった同氏は提言する。

「多くの国ではピンポイントの対策を導入している。例えばカザフスタン・サウジアラビア・アラブ首長国連邦などのいくつかの国は、民間企業を援助する大規模金融支援策を発表した」

「これらの支援策には税金と政府関連手数料の繰り延べやローン支払いの延期、中小企業に対する譲許的融資の増加といったピンポイント対策が含まれている」という。

IMF には参加国がコロナウイルスの脅威に打ち勝ち、人的ならびに経済的損害を限定することを補助するためにできることがいくつかある、とアズール氏は述べる。「地域からすでに 12 カ国が財政支援に向けて基金と接触をとっている」という。

アンソニー・ロウリーは東京を本拠とする東アジア問題専門のベテランジャーナリストである

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