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インタビュー:トラック輸送のウーバー、サウジアラビアで大きな夢を語る

ルイス・グラニェナによるイラスト
ルイス・グラニェナによるイラスト
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03 Aug 2020 01:08:02 GMT9
03 Aug 2020 01:08:02 GMT9
  • TruKKerのCEO兼創業者が、急成長中の会社がサウジアラビア、中東地域で起こっているパンデミックの混乱の中、どのように事業機会を逃さずにつかんでいるかを語る

フランク・ケイン

ドバイ:ズームコールの途中で、ガウラフ・ビスワス氏は大きな統計図を出してきた:「私が学んだ興味深い事実の1つは、サウジアラビアの1人あたりのトラック数が世界で最も高いという事だ」と彼は意気盛んに述べた。

ビスワス氏は、トラック輸送事業のウーバーであり、中東で最も急成長している物流会社の1つであるTruKKerの創業者兼CEOだ。トラック運送統計は彼の事業の拠り所であり、サウジアラビアは創業から4年が経った彼の会社が今後の成長を踏まえて重点を置いている市場である。

「サウジアラビアでイノベーションが急速なペースで加速している様子に、私はいつも驚かされ続けている。若いサウジアラビアの人々は非常に野心的で、テクノロジーを信じ、その実現に熱心に取り組んでいる」と彼は述べた。

最近、この地域で最大規模の初期資金調達を完了し、大手投資家数社から合わせて2,300万ドルの資金を調達したTruKKerのアイデアを、最初どのように思いついたのかを彼は次のように語った。

「私は肥料製造メーカで働いている友人と夕食を食べていた。彼は翌日配達を依頼していた運送会社に失望させられたところで、非常に興奮していた。おかげで夕食は台無しとなったが、我々はそこに事業機会を見出した」とのことだった。

ウーバーやその子会社カリームと同様に、TruKKerのユーザーは、「トラック運送、いつでも、どこでも」というスローガンの下で、アプリを介してトラック運送を依頼できる。

地域で最初のテクノロジー対応のトラックアグリゲーターとして2016年に創業以来、12,000人のドライバーとトラックの登録者を得て、パンデミックによるロックダウンや輸送制限の厳しい状況の中でも、中東の商業ライフライン維持に貢献している。

ビスワス氏は、中国と米国で既に営業している同様のテクノロジーを基盤とした運送事業に「刺激を受けた」が、湾岸地域こそ、トラックによる事業概念の展開に適していると語った。「トラック運送業はここでは特に細分化されているため、タクシー業界よりも事業展開に相応しいと考えた。 同業界では非常に細分化された事業への堅実な投資がそもそも多く実施されていた」と彼は述べた。

略歴

生年月日:1982年、インド、グジャラート州

学歴:

  • 工学士、CEPT大学、アーメダバード
  • 工学修士、ダンディー大学
  • MBAファイナンス、SP Jainグローバル・マネジメント・スクール

職歴:

  • Arup、シニア・プロジェクトマネージャー
  • AECOMディレクター

「たとえば、アラブ首長国連邦とサウジアラビア間の国境を越えたトラック運送業者の大半は、個人事業主または非常に小さな運送会社が行っている。サウジアラビア市場では、70%が中小規模の運送業者で、保有トラックの台数は最大50台である。上位10%または15%が、500台~最大2,000台のトラックを保有する大規模な運送業オーナーで構成される。非常に細分化されており、この現状が我々に大きな事業機会を与えてくれている」とビスワス氏は付言した。

今年初めにパンデミックが起こったとき、TruKKerのビジネスモデルにとっても、対処は難題だった。「私はスタッフに手紙を書いて、次のように伝えた『みんな、この状況への対処法を誰か知っているとは思うな』。パンデミックへの対処法についての本は無い。 そこで最初の数ヵ月間、私たちは学び、待ち、観察した。 しかしその後、業界がどのように反応しているかに気づいた」と彼は述べた。

影響は段階的に様々な形で現れた。最初に現れたのは大型コンテナベースの取引きが行われていた、中国との輸出入貿易への打撃である。

次に、地域的なロックダウンによる「大規模な影響」が起きたが、これはサウジアラビア、アラブ首長国連邦、オマーンおよびその他の輸入ハブがウイルスと戦うためにロックダウンと輸送制限を課したことで起きた。それでも「多くの顧客にとっての最大のリスクは、従業員が病気に罹り、製造と供給ラインが止まることであった」とビスワス氏は語る。

その後、産業と消費者の需要が打撃を受け、より広範な経済的影響が生じた。彼は、小売りのように消費者関連の業界だけでなく、不思議なことに、TruKKerにとって大きなビジネスであった水の供給の需要も落ち込むのを見た。

「我々は多くの消費者関連商品の流通を担っていた。たとえば、パッケージに入れた飲料水の最大のサプライヤーの1つでもあった。人々は自宅でも職場でも水は飲まざるを得ないので、通常、消費量は減らないと思うかも知れない。しかし、パッケージされた水の多くはレストランで消費されていたため、実際にはかなりの影響が出た」と彼は述べている。

この憂鬱な状況の中でも、ビスワス氏は事業機会を見付けていた。「規模が小さなブローカーや、運送業者は休業状態に陥るか、財政難に直面していた。そこで、今が市場シェアを拡大するチャンスと見極めた戦略的アプローチを採用した。

ガウラフ・ビスワス氏

「我々は単にこのチャンスに乗じたわけでは無く、そもそもこれが我々のビジネスモデルである。小さな運送業者を1つの大きなブローカーに統合したいと考えている。つまり、我々自身も、供給側の『大手ブローカー』になりたいと考えており、それを当初考えていたよりはるかに早く実現するのが今なのだと、そのように考えている」と彼は付言した。

これまでの実績は心強いものである。3月はTruKKerにとってこれまでで最も良い業績を残せたが、ビスワスは4月と5月は、「ブレーキをかけた」。7月の実績は3月を上回ったと彼は述べている。「ここ数ヵ月間は主要顧客を獲得するのに力を入れてきた。 したがって、消費の減少により、トラック輸送の全体的な需要は減少するであろうが、我々は成長する機会を得た」と彼は述べている。

では、彼はTruKKerがテクノロジー対応の運送業でどこまで発展できると考えているのであろうか?「我々がこの市場を今年または来年にはコントロールできるようになると言えば、それは言い過ぎであろう。運送業界は非常に大きな市場であり、1社でサウジアラビアの運送業界をコントロールできるようにはならない。我々は、そう遠くない先に、最大の業者にはなれると考えている。というのは、来年までには、この市場でどこよりも多くの取引きを行うようになるので、その意味では我々が最大になる」と彼は述べた。

TruKKerの車両は、石油化学製品、建設製品や設備、鉄鋼、アルミニウム、銅などの基本的な材料から、食品や日用品、紙、包装用品まで、事実上あらゆる種類の商品を運んでいる。

石油タンカー事業への参入を計画しているが、これまでのところ医薬品の取扱いはしていない。この点に関し、ビスワス氏は、医薬品セクターの特別な要件のために「意識的な決定」であると述べた。

爆発物などの危険物の輸送も避けているが、この分野はそもそも運送関連市場のほんの一部を占めるに過ぎない。

エジプト―アフリカでの市場拡大の要―では現在拡大に力を入れており、すべての主要なエジプトの港を含め、エジプト国内に8つのTruKKerのオフィスを置いている。彼はまた北方進出を図っており、湾岸協力会議と取引をしているヨルダンとレバントの他の国々(レバノン、シリア、イスラエル)で営業展開している。

今後数年内にサウジアラビ市場で新規株式公開(IPO)できれば、TruKKerにとっては非常に望ましいこととなる。

ガウラフ・ビスワス氏、TruKKer 最高経営責任者(CEO)

そして、イラクがそこにある。「我々はイラクの再建と復興に関わる機会をかなり真剣に検討している。それは短期的な、我々の野心であるとも言える」とビスワス氏は述べた。

この野心的な成長戦略は、国境を越えた貿易にかかわる官僚主義や安全保障にかかわる制限措置で悪名高いこの地域において、独特の問題に直面する。「陸、海、または空で国境を越えるものには、多くの官僚主義や文書の提出が付属してくる。複数の関係者が関与するため、特に貨物の移動には大量の書類が山のようにある」と彼は述べた。

「セキュリティリスクは高いが、それでもこの地域は世界の中で中程度ではないだろうか。西欧諸国の基準にはかなり劣るが、アジアや東南アジアよりもはるかに安全であろう。法と秩序はこの地域では大きな問題であり、人々は世界の他の地域よりも法を破る可能性が低い。しかし、まだそれでも起きるものは起きるのだが」と彼は付言している。

彼は、たとえば貨物の追跡などのテクノロジーを利用すれば、これらのリスクの一部を軽減できると考えているが、地域の保険業界がもっと役割を果たすことを望んでいる。 「他のいくつかの経済圏ほど、保険業界が成熟しているとは思えない」と彼は述べている。

企業としてのTruKKerの次のステップに関しては、ビスワス氏と彼のチームはシリーズBの資金調達に取り組んでおり、年末迄には実現が見込まれている。サウジテレコムの投資部門であるSTVは、最初の資金調達では最大クラスの貢献をしている。ビスワス氏は彼のビジネスと電気通信技術の相乗効果を強調した。

「今後数ヵ月内に、非常に面白い時期を迎えるであろう。我々の株主リストに何社か非常に著名な名前が加わることとなる」と彼は述べている。

このテクノロジーベースの新興企業の行き先には、2つのリアル・オプションが控えている。カリームがウーバーとの30億ドルの取引きを行ったように、出資先に大半の自社株式を売却することも考えられるが、一方で、新規株式公開(IPO)を行って、株式市場に上場することも考えられる

ビスワス氏は、現在の彼の優先事項は次回の資金調達であり、それによって更に事業拡大を図ることであると述べた。「現状我々は出口戦略について考えることに多くの時間を費やしてはいない。我々にとって今大切なのは、明日、来月、または次の四半期に何が起こるのかに焦点を当てていくことである」と彼は述べた。

しかし、少し落ち着いたところで、彼は地域の株式市場に上場することには魅力があることを認めた。

「トラック輸送は非常にローカルな事業だと考えている。外国企業が進出してきて、自国の運送業界を牛耳るのをみたいと思う国民は少数派であろう。したがって、安全保障、雇用創出など、さまざまな観点から、地域経済は過去数十年に達成してきたことを本当に誇りに思っていいのだと思っている」

「今後数年内にサウジアラビア市場で新規株式公開(IPO)できれば、TruKKerのような事業にとって素晴らしい成果となるに違いない」と彼は付言した。

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