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石油の「スーパーサイクル」 はあり得ない:エネルギー専門家

原油価格が昨年のパンデミックによる値崩れでの歴史的な低水準から回復したことで、原油の「スーパーサイクル」が到来するという予想がここ数カ月で人々の支持を集めている。(AP通信)
原油価格が昨年のパンデミックによる値崩れでの歴史的な低水準から回復したことで、原油の「スーパーサイクル」が到来するという予想がここ数カ月で人々の支持を集めている。(AP通信)
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13 Apr 2021 09:04:22 GMT9
13 Apr 2021 09:04:22 GMT9
  • 100ドルを超える原油価格を押し上げるのに必要な要因が依然として見つかっていない:報告書

フランク・ケイン

ドバイ:英国の著名なシンクタンクであるオックスフォードエネルギー研究所 (OIES) の専門家によると、近い将来、石油価格が持続可能なベースで1バレルあたり100ドルに達する可能性は低いという。

OIESのバッサム・ファトゥ氏とアンドレアス・エコノモ氏が作成した報告書では、一部の商品アナリストが示唆している石油の 「スーパーサイクル(長期にわたる価格上昇)」 が近いうちに到来する可能性は、原油価格の急騰を引き起こす重要な要因が見つからないことから、重視されなかった。

「石油のスーパーサイクルを引き起こす上で重要な要因となるものは、需要が急増しているにもかかわらず供給が非弾力的であることや、余剰生産能力の不足、精製上の制約などです。これらが原油価格を1バレルあたり100ドルに押し上げ、高水準を維持させます。しかし、この要因となるものは、依然として見つかっていません」と彼らは主張している。

むしろ、2022年末までに石油は1バレルあたり59ドルから69ドルの範囲で取引されるだろう、と著者たちは述べた。「市場心理がこれらの境界を越えて価格を押し上げるかもしれませんが、持続しそうにはありません。価格が1バレルあたり100ドルに近づくには、他のショックも考慮する必要があります」 と彼らは付け加えた。

原油価格が昨年のパンデミックによる値崩れでの歴史的な低水準から回復し、一部の石油会社が新規分野への投資を大幅に削減したため、石油やその他の商品の 「スーパーサイクル」が到来するという予想がここ数カ月で人々の支持を集めている。

世界最大の銀行であるJPモルガンとゴールドマン・サックスのアナリストたちは、世界市場で原油価格が1バレルあたり100ドルを今すぐにでも超える可能性があるとの見方を示している。

しかし、オックスフォードの専門家らは、最新のオイル・マンスリー報告の中で、そのような事態は起こりそうもないと結論づけている。「石油市場のダイナミクスと価格は著しく改善しましたが、市場の見通しを取り巻く不確定度は依然として高いままです。厳しい1年を経て、OPECプラスの政策選択が市場の結果を左右し続けるでしょう。しかし、最近の原油価格の回復は、まだ次の石油のスーパーサイクルの始まりを示すものではありません」 と彼らは述べた。

2020年4月の原油価格は平均23ドルで 「石油市場の歴史上最も暗い月」 だったが、需要が回復して在庫が減少し、サウジアラビアとロシアが主導する生産者連合のOPECプラスが供給を厳しく制限したことで、60ドルを超えるまでに持ち直したと専門家たちは付け加えた。

「石油需要を取り巻く状況には大きな不確実性があり、パンデミック前の水準には完全に戻っていないにもかかわらず、このような目覚ましい回復を遂げました。2021年後半には、各国が規制を解除し、世界経済の回復が加速することで、石油需要は大きく回復すると予想されます。しかし、回復の時期やペースについては、依然として不確実性が高いです」 と著者たちは付け加えた。

このオックスフォードの分析は、サウジアラビアのアブドル・アジズ・ビン・サルマンエネルギー大臣が表明し続けている警告を裏付けている。同大臣は、石油需要が回復しているという証拠は、「私がそれを目にするまでは」信じないと最近述べている。

OPECプラスによる政策が原油価格回復の主な要因の一つとして指摘されている、とオックスフォードの専門家は述べ、「COVID-19による悪影響に対処し、市場の期待に影響を与えて市場心理を形成する上で、OPECプラスの政策はより柔軟でより効果的です」 と指摘した。

また、「OPECプラスの次の動きを予測することはますます難しくなってきています。しかし、この予測不可能性は意図的な政策の一部であり、OPECプラスの決定が市場に与える影響を増大させる効果があります。より根本的なレベルでは、OPECプラスは市場のリバランスのペースを決定する上で、より積極的な役割を果たしていることを示していいます」と彼らは付け加えた。

一部のアナリストは、原油価格の上昇が、パンデミックによるロックダウンで打撃を受けていた米国のシェール供給の回復につながると予測している。しかし、オックスフォードの分析では、すぐにはそうはならないと見られている。「米国のシェール産業の成長は、2021年にはむしろ限定的になる、あるいはむしろ衰退するだろうというコンセンサスが形成されつつあります」 と著者たちは述べた。

イランと米国の間で核政策に関する合意が成立した場合に、イランの石油が市場にあふれる危険性についても大げさに言われ過ぎている、と著者らは付け加えた。「イランの核合意が復活しても、現在の水準からの輸出の増加は緩やかなものになるでしょう」と彼らは述べた。

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