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サウジアラビアはOPECプラスでの中心的役割を通じ、世界的な力強い回復に貢献

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21 Jun 2021 12:06:27 GMT9
21 Jun 2021 12:06:27 GMT9

フランク・ケイン

ドバイ:サウジアラビアは、石油輸出国機構(を加えた「OPECプラス」において中心的な役割を果たすことを通じて、世界市場のバランスに貢献してきたという見方を世界有数のエネルギー問題専門家、ダニエル・ヤーギン氏が示している。

ピュリッツァー賞受賞歴を持ち、石油業界の歴史に精通するヤーギン氏は、「OPECプラスによって、市場にある種の予測可能性、安定性、注意深さがもたらされました。この成功には、サウジアラビアが明らかに大きな役割を果たしました。その影響もあって、私たちは今信じられないほど強力な世界経済の回復を目の当たりにしているのです」とアラブニュースに対して語っている。

コンサルタント企業・IHSマークイットの副会長でもあるヤーギン氏は、政策立案者やビジネスリーダーへのインタビュー番組「フランクリー・スピーキング」(Frankly Speaking)に出演し、自身の見解を述べた。

ヤーギン氏は同番組で、米国のシェール産業の復活の見通し、気候変動の中でのエネルギー産業の課題、さらに最近発表されて物議を醸している、炭化水素燃料へのすべての新規投資の終了を示唆した国際エネルギー機関(IEA)の「シナリオ」等について語った。

石油市場の回復については、多くの専門家がOPECプラスの最大の石油輸出国としてサウジアラビアが果たしている役割の大きさを指摘している。この点についてヤーギン氏は、次のように述べている。「あの恐るべき価格崩壊が起きたのは今からほんの1年少し前なのです。あの暴落は産油国や輸出国だけにとって衝撃的だったわけではありません。インドや日本等の国々も、自国が経済的に大きく依存している石油・ガスの産業が世界的に崩壊、または大きな損害を受けるのではないかと恐れて、深い懸念を抱いていました。

現在ブレント原油の価格は新型コロナ流行前の水準にまで回復しているが、多くのアナリストは、新型コロナ後の回復がエネルギー需要を加速させるため、今年末までに100ドルに達する可能性があると予測している。

「OPECプラスは市場の動きを緩和・安定させる役目を果たし、また恐ろしい経済破綻からの回復をナビゲートする実際のメカニズムとして機能してきました」とヤーギン氏は指摘している。

同氏によると、 IHSマークイットのアナリスト達は、2021年の世界経済の成長率は6%であり、中でも影響力の大きい米国経済の成長は7.4%を予測しているとのことである。

OPECプラスの2大生産国であるサウジアラビアとロシアの関係は、需要のリバランスと回復に大きな意味を持っているとヤーギン氏は述べ、一方米国の石油産業は世界市場のダイナミクスにとってそれほど重要ではなくなっていると付け加えた。

「米国は2020年4月にはビッグスリーの一角を占めていました。しかし現在は、米国は政府レベルのプレーヤーとしてはそうした役割から身を引いていると思います。つまり、サウジアラビアとロシアのこの関係が非常に大きな意味を持ち、OPECプラスを機能させるための基盤になっているのです。今のような関係を継続していくことは両国の利益になるでしょう」とヤーギン氏は語った。

ヤーギン氏は最近、米国の石油産業の中心地、テキサス州ヒューストンを訪れ、米国のシェール産業が間もなく復活する可能性があることを確信したという。「シェール産業は第二の革命の最中にあります。必要とされていた変化、つまり投資家との関係を変えて投資家により還元していくことが今起きているのです。欠けていた投資規律への強い意思も生まれています」とのことである。

「米国のシェール産業は安定してきており、価格が妥当な範囲内にある限り穏やかな成長を実現していくと思います。ただ、以前に石油市場の突然の供給過剰の一因となった 前例がないほどの爆発的な成長はもう起きることはありません。ですのでシェール産業を巡る状況はより成熟した形に落ち着いてきたと言えると思います。」

米国の石油業界はまた、規制監督と投資家のアクティビズムという新たな状況に直面しており、長期的な見通しに疑問を投げかけられている。ヤーギン氏は、バイデン政権の態度は、トランプ大統領のアプローチとは対照的に、炭化水素産業に対する敵意の再燃につながるもので、より多くの環境制限が課される可能性がある、という見方に同意した。「規制機構を使って業界を制約しようとする取り組みが出てくることでしょう。規制に関する課題はまだこれから現実化してくると思います」とヤーギン氏は見ている。

しかし、バイデン政権はまた、シェール革命に伴ってもたらされた、米国のエネルギー自給の可能性も検討しているはずだ。「米国は2008年に4000億ドルを石油の輸入に費やしていましたが、現在ほぼその支出は無くなっています。ですから、バイデンと彼のブレーンの一部は、エネルギーの対外依存を望んでいない可能性が高いと私は思います」とヤーギン氏は語っている。

石油産業において環境アクティビズムと金融アクティビズムが合体するという新傾向は、石油企業が取り組むべき課題を急増させている。この新傾向は、先日IEAが化石燃料へのすべての新規投資を直ちに停止するという、論議を呼んでいるシナリオを発表した際にも注目されることとなった。

「IEAはシナリオ発表のほんの数ヶ月前に、石油とガスへの十分な投資が行われておらず、それが供給の逼迫、高価格、混乱につながるだろうと警告していたのですから、シナリオの内容は非常に不可解なものでした」と彼は言いました。

「石油・ガス業界は、IEAが一種の独立した客観的な情報源であると考えていたと思います。それが今、彼らはIEAを違う目で見るようになって、何が起きたのですか?なぜこうなったのですか?と疑問を持っている状態になっています。一方から他方への、何らかの立場のシフトがあったように思われるのです。」

それでもヤーギン氏は、いわゆる化石燃料が世界のエネルギーにおいて長い間重要な役割を果たし続けるだろうと固く信じている。「私たちが用いるエネルギーミックスは変化するものです。石油と天然ガスは、再生可能エネルギーや代替エネルギーとますます多くのスペースを共有するようになるでしょう。ですから、私たちは各種のエネルギーの混合によるシステムを持つことになります。しかし、2050年には、世界はまだかなりの量の石油やガスを、その他多くのエネルギーと共に使用していると思います。」

昨年出版されたヤーギン氏の最新の著作「ザ・ニューマップ」は、エネルギー、気候、地政学の間の相互関係の分析したものだ。気候変動問題担当のジョン・ケリー大統領特使は最近、サウジアラビアの気候変動の影響への対策を講じる世界的な活動への貢献と、パリ協定の目標達成に向けた努力により、サウジアラビアを称賛している。

サウジアラビアは、CO2排出量軽減のための大規模な植林プログラムとともに、国内のエネルギーミックスにおける石油の比重を段階的に減少させて2030年までに完全に排除する計画を発表している。

「サウジアラビアが行っていることは、世界各国の方向性と一致したものです ― すなわち、再生可能エネルギーの役割ををこれまでよりもはるかに大きなものにしていくということです。言うまでもなく、太陽光エネルギーはサウジアラビアで大きな役割を果たしています。ガスを使って輸出用の液体を解放する考えおよび植樹の計画は、もちろん大気からの炭素除去を目指したステップです」とヤーギン氏は説明する。

「ですから、サウジアラビアが進んでいる方向は、他の国々がしていることと一致しており、特に電力分野においてそうだと思います。」

温室効果ガスを削減し、最終的に大気から排除するというサウジアラビアの炭素循環型経済戦略は、気候変動問題に対する実現性あるアプローチだが、ヤーギン氏は「ヨーロッパの一部には、炭化水素産業が好きではないという理由で、炭素捕捉を嫌う向きもあります」と注意を与えている。

ヤーギン氏はまた、風力や太陽光などの再生可能エネルギー源の価格が下がって炭化水素に比肩する現実的な選択肢になりつつあり、また水素などの新しいエネルギー源も今後15年間の間にエネルギーミックスの一部になる可能性があるとの見通しを述べた。

新著「ニューマップ」の中で、ヤーギン氏は、主に米国と中国の関係の緊張回避に役立った「WTOコンセンサス」に取って代わり、エネルギーと気候変動に関する課題が、同氏が「国家の衝突」と呼ぶ状況を生む大きな要因になり得ることを説明している。

「今は、5年前には聞かれなかったようなレトリックが使われるようになっており、心配しています。そうは言っても、私は生まれつき楽観的な人間で、悲観はしていません」とヤーギン氏は言う。

「私は今回の新刊本をなるべく現実的な内容で締めくくったつもりですが、同時に楽観的な見方も保っています。解決策が必ずあると信じているからです。」

ツイッター:@frankkanedubai

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