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レバノン経済、燃料補助金の打ち切りで悪化が加速

去年8月、ベイルート港の大部分を破壊した壊滅的な爆発事故を受けてハッサン・ディアブ首相が辞任した。爆発事故で218名が亡くなり、7500名が負傷、30万人が住む家を失った。(ロイター)
去年8月、ベイルート港の大部分を破壊した壊滅的な爆発事故を受けてハッサン・ディアブ首相が辞任した。爆発事故で218名が亡くなり、7500名が負傷、30万人が住む家を失った。(ロイター)
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15 Aug 2021 07:08:38 GMT9
15 Aug 2021 07:08:38 GMT9
  • 燃料補助金の終了で他の商品の価格が上昇
  • 誰も国家を運営していない、と中央銀行総裁が発言

ジャナ・サルーム

リヤド:レバノン経済の悪化が中央銀行が今週、燃料補助金を打ち切ると発表したことで加速しようとしている。補助金のために銀行の準備金が吸い取られているのだ。補助金の打ち切りにより、食料や衣料品などの基本的な商品全てに影響が出る可能性が高い。

「燃料価格はレバノンの日用品全ての価格に影響します」レバノンの経済アナリスト、バセル・アル・ハティブ氏がアラブニュースに語った。「運送料や食料品が著しく値上がりするでしょう。ガソリン、ディーゼル、調理用ガスの価格は、それを超えるほどではないとしても、少なくとも3倍にはなるでしょう。全ての部門が影響を受け、国家が麻痺するでしょう」

世界銀行の最新のレバノン経済モニター(LEM)によれば、レバノンの経済危機は過去150年間のトップ3に入る。

レバノンは既に食料や医療やその他の基本的な商品、それに加えてディーゼル燃料の供給不足による電力供給不足にも苦しめられている。液化石油ガスの備蓄は通常、小型の缶で販売され、家庭用や業務用に幅広く利用されているが、これも底をついている。

火曜日、レバノンの人々は調理用ガスの不足が差し迫っているという警告を受け、備蓄を確保するために長い行列についた。経済危機で基本的な輸入品の供給が減少しているからである。

「我々の現在の備蓄は1週間しかもちません。その後は、解決策が見つからなければ、家庭用ガスは闇市場で売られることになります」石油ガス販売業シンジケートの代表を務めるファリッド・ゼイヌーン氏がFrance 24に語った。

ゼイヌーン氏は、レバノン中央銀行が輸入資金用の信用枠の開設を遅らせたことが危機の原因だとして非難している。

中央銀行総裁のリアド・サラメ氏は土曜日のラジオ・フリー・レバノンで放送されたインタビューで自身の対応について弁護し、政府が必要な法案を可決すれば問題が解決できていただろうと述べた。

サラメ氏は「これまでのところ、誰も国家を運営していないのです」と発言した。サラメ氏によると、レバノン・ポンドは「新政府樹立と改革のための人質」になっているという。

去年8月に壊滅的な爆発事故でベイルート港の大部分が破壊され、218名が死亡し、7500名が負傷、30万人が住む家を失った。それを受けてハッサン・ディアブ首相が辞任。それ以来、レバノンの政治家は新政府樹立の合意に到達できずにいる。それ以降、ディアブ氏が暫定首相の地位に立ち続けている。

中央銀行は現在140億ドルある必須外貨準備金を法律の制定なしに使用することはできないと述べている。

サラメ氏は本来は3ヶ月分だった8億ドル以上が先月中に燃料の輸入に使われてしまったと語り、貿易業者を非難し、市場で入手可能な商品がない状態でそれほどの金額を費やしてしまうのは「不合理」だと述べた。

レバノン・ポンドがその価値の90%を2年に満たないうちに失い、中央銀行は身動きが取れなくなった。準備金の浪費で通貨はさらに下落するだろう。レバノン国民を長期に渡って苦しめているインフレを加速させることになる。燃料価格の上昇により、この状態が続くとともに、物価の上昇を課すことになる。

燃料補助金政策を批判する声もあり、実質価格の何分の1という価格で石油製品を販売することで、密輸や買いだめの大きなインセンティンブが生まれてしまっていると言われている。

レバノン・ポンドの下落は既にレバノンの購買力を蝕んでいる。最低賃金は2019年10月以前は約450ドル相当だったが、現在は30ドル相当となっており、ガソリンタンク2本分と同等である。

6月、レバノン国会は配給カードを通して5億5600万ドルを給付することを承認した。レバノンの50万世帯の最貧困家庭を対象として1年間に渡って毎月平均93ドルの支援が行われる。燃料価格の上昇に対応するため、支給額の増額を求める声もある。

「補助金を出すのではなく、キャッシュカードによる市民サポートを承認した方が良かったのではないでしょうか。たとえば移動が可能となるよう、ガソリンタンク2本を追加するなどです」アル・ハティブ氏はそう述べた。

このような対策はレバノン経済に対する応急処置である。政権が樹立できて、国際通貨基金から支援が得られるようになれば、レバノン経済はやっと回復を始めることができるようになる。

国連によると、レバノンの半数以上の人々が貧困状態にある。3分の1のレバノン国民が食料不足に苦しんでおり、約400万人が安全な水を利用できない危険にさらされている。

「解決策は2つに1つしかありません。融資カードを承認するか、もしくは政権の樹立を急ぐかです。それにより救済計画や(国際通貨基金との)交渉再開を行い、崩壊に歯止めをかけることができるでしょう」アル・ハティブ氏はそう述べた。

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