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サウジ・アラムコの海洋保護の取り組み

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17 Oct 2021 11:10:23 GMT9
17 Oct 2021 11:10:23 GMT9

カレド・アスファハニ博士/ロナルド・ラフランド博士

今日ほど私たちの未来にとっての海洋の重要性が明確になったことはない。国連は2021年を「持続可能な開発のための海洋科学の10年」の最初の年にすると宣言した。その目的は、これからの世代のために、このかけがえのない自然資源を守り育むための知識を共有することである。サウジ・アラムコは、海洋は皆の遺産だと考えている。地表の71パーセントを占め、複雑かつ修復不可能な地球のエコシステムの中において、すべての大陸を結びつけている。

長期的視野

アラムコは国連が海洋環境の重要性を訴えていることを歓迎し、生命と生活を守るために様々な面からアクションを取る必要があることも認識している。そのため、科学者、研究者、その他専門家の方々と長期にわたる協力関係を持ち、多種多様なイニシャティブを手掛けている。たとえば、豊富なデータ、特に紅海とアラビア湾の海域に関するデータを収集することが挙げられる。

アラムコの海洋エコシステム保護のための諸プロジェクトは、地球規模の視点に立っている。特に重要視するのは、サンゴ礁の再生とマングローブ林の修復だ。その他のプロジェクトとしては、絶滅危惧種のウミガメの保護、大気中のCO2を吸収して気候変動の影響を軽減する海藻の栽培などがある。当社はコミュニティの啓蒙・教育プログラムも立ち上げ、学生や子供たちが海洋の重要性を理解しながら育つよう、知識を広める活動も開始した。

データの収集

アラムコの環境活動を背後で支えるのは、私たちが世界中と共有したいと願っている重要なリソースだ。それは科学情報である。海洋環境を守るには、そこに何があるのかをまず知らねばならない。そこで当社は紅海とアラビア湾各所の海域を何十年にもわたって観察しており、同じサンゴ礁を何度も訪問している。

科学者たちは、波高、海流、酸素溶解量、水温、透明度、塩分濃度、光合成に必要なエネルギーを供給する色素であるクロロフィルの集中度といった貴重な情報を収集してきた。アラムコは世界中の科学者集団がこのデータに無償でアクセスできるようにして、環境プロジェクトを支援したいと考えている。この目的のために、すでにいくつかの国際組織との協力を進めており、C4IR Oceanと同団体の海洋データ・プラットフォームはその一例である。

サンゴ礁の再生

当社プロジェクトでは、絶滅の危機に瀕するサンゴ礁の再生を支援している。この貴重かつ脆弱なエコシステムは、何百もの海洋生物の住み家となっている上に、海岸の浸食を防ぐ自然の防壁となっているが、世界中で劣化が進んでいる。その原因は一つではない。海岸や沖合の開発、違法な漁業活動、汚染、気候変動による海水温の上昇などである。

問題の深刻さに鑑み、アラムコは、アラビア湾、フロリダ、ハワイ、アメリカ領サモア、カリブ海において、一連のイニシアティブで行動を開始した。たとえばアラビア湾での例だが、サンゴの集合体はほとんどが沖合の島々の近くにあり、傷んだサンゴ礁が再生しない原因の一つが、サンゴが再生するのに必要な固い地盤が無いことだということが分かった。そこで、当社は頑丈で安定性の高い人工の岩礁を設計し、海底にいくつも設置した。サンゴはそこに集合体を作り、多種多様な海洋生命体の住み家となった。科学者たちが再生されたサンゴ礁を詳細に観察しているが、大成功を収めている。魚たちが繁殖し、様々な海洋生物が増え、サンゴ礁の回復力も高まっている。

マングローブの植林

もう一つアラムコが顕著な役割を果たしている分野は、海岸地域での数百万本のマングローブの植林である。劣化したマングローブ林をこのようにして修復することは、生物多様性の面でも炭素吸収の面でも大きな利点がある。木々などの植物は大気中のCO2を吸収し蓄えるからだ。研究によると、マングローブの木は陸上の熱帯樹種に比べ、約5倍CO2を取り込む能力があり、気候変動に対して効果的な、自然に依拠した対策となる。このプロジェクトは大きな効果を挙げており、その成功に鑑み、アラムコでは、世界中のリーダーたちと協力して、サウジアラビアだけでなく世界中により多くのマングローブを植えようとしている。プロジェクト対象は東南アジア、オーストラリア、南米、カリブ海、東アフリカ、南アジアに及ぶ。まさに地球規模の取り組みである。

環境への約束

アラムコでは最近新たに、生物多様性保護に関する会社ポリシーを策定した。アラムコの新規プロジェクトはすべて、生物多様性と自然エコシステムに正味でプラスの影響を及ぼさねばならないというものだ。このアプローチの大きな利点は、内陸、海岸部、海洋を問わず、アラムコが活動する地域の生命体の多様性を検討せずに新規プロジェクトを開始することができないことにある。生物多様性へのマイナスの影響が見つかった場合は、回避、抑制、あるいは最悪でもトレードオフしなければならない。この環境アプローチは当社のすべてのプロジェクトや活動で必須条件となる。

当社の最初の環境保護ポリシーが制定されたのは1964年にさかのぼる。当社では「アラビア湾のエコシステムと生物多様性」について記した書籍を最近出版し、そこではアラムコとファハド国王石油鉱物大学との50年に及ぶ研究の概要を知ることができる。同じく最近出版の「アラビア湾西部マリン・アトラス」では、海洋エコシステムの基準線と場所を見ることができる。両書とも、アラビア湾海洋エコシステムの生物多様性の美しさ、繊細さ、弱さを説明している。当社の環境パートナーには世界的組織、地域のワーキンググループ、地方大学などがあり、たとえばKFUPMやアブドゥラー国王科学技術大学はその一例である。

世界の海に対する当社の約束は明らかなものだ。配慮と投資と専門性を用いて海を大切にし、当社の事業が絶対に海洋環境に悪い影響を与えないようにし、そのためにできることはすべてするということである。

  • カレド・アスファハニ博士はアラムコの海洋環境保護部門長で、ラフランド博士はアラムコの環境顧問である。
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