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インタビュー—- ロールス・ロイスと中東—- 愛の物語

イラストはルイス・グラネナ
イラストはルイス・グラネナ
09 Dec 2019 03:12:03 GMT9

フラクンク・ケイン

  • ロールス・ロイスCEOのトルステン・ミュラー・エトヴェシュはアラブ・ニュースの独占インタビューで「中東ではこれらの車は代々継承され、決して売りに出されることはありません」と話す

中東に「舞い戻った」時に、高級車メーカー、ロールス・ロイスの最高執行責任者であるトルステン・ミュラー・エトヴェシュは、彼にとっての「完璧な運転」をどのように認識しているかを質問された。

この59歳のドイツ人は、新しいブラックバッジ・カリナン(「夜の王」を意味するロールス・ロイスのブランディングジャーゴン)に乗って、ロンドンの夜を飲み歩きする都市ツアーとフランスの南、英国のコーンウォールの海岸のドライブを挙げた。

しかし、彼の助手は、そのリストの優先順位の上位には別のドライブがあり、現在交渉中であることを明らかにした。ロールス・ロイスはブラックバッジをサウジアラビア北西のアル・ウラー周辺の壮大な景色の中で走らせたいと思っている。

それは夢の写真撮影となるだろう。ジェットブラックの車が赤い渓谷と古代ナバテア王国の建造物の中にあるのは見た目に壮観で、長きにわたる結びつきについての、さらにはロールス・ロイスが中東で謳歌してきた長い情事についての、潜在意識に訴えるメッセージを送ることになるだろう。

ミュラー・エトヴェシュは説明した——「この地域は当社にとって非常に重要です。米国、中国に続いて販売実績三位であり、これ自体が非常に大きなことですが、今やカリナンがあります。ここでは大きな目玉です。」

カリナンは、同社のSUV市場進出第一号であり、その計画には長い時間がかかっている。また、カリナンは中東に多少の借りがある。ミュラー・エトヴェシュが明らかにしたように、コンセプトの背景には、T.E. ロレンス大尉(「アラビアのロレンス」)が第一次世界大戦のオットマン帝国との戦争で配置したロールス・ロイスの武装車両隊がある。

中東が気に入って購入し、運転する豪華な車とあのロレンスの極端な殺人機にはそれほど共通点はない。この地域はロールス・ロイスの品揃えでは「お誂え」車両の最大の消費者で、自動車は細かくカスタマイズされている。「当社が中東に輸出しているものはすべて、大きくカスタマイズされています。色彩豊かで刺繍が施され、現地の文化に合わせてあり、そして、この地で明るい日差しの下で目にするのはすばらしいことです」と彼は話した。

ミュラー・エトヴェシュは、BMWで執行役としてブランド・マネジメントとマーケティングを担当し、その後、ロールス・ロイスに来て10年になる。ロールス・ロイスは1998年にBMWの傘下に入った。彼はロールス・ロイスを一新することで信用を得てきた。新しいモデルや設計を導入しつつ、世界最高の高級車メーカーとしての名声も維持している。彼が就任してからの10年間で、売り上げは4倍になり、年間4,000台になった。そしてその大規模な売り上げの拡大はアラビア湾へ伸びている。

「私は常に2つの窓を開けていたいのです —— 伝統と革新」とミュラー・エトヴェシュは話した。

カリナンは世界中のメディアの一部で、ロールス・ロイスの輝かしい伝統との決別と目され、非常に批判的に受け止められた。「当社は決して当社の伝統を無視することはありません」と彼は主張した。

中東での拡大は、このブランド拡大戦略の一部としての意味合いが非常に濃い。10年前は、製品の種類は基本的に8月のファントムのバリエーションで構成されていた。運転手付きの王族や大統領向けの選り抜きの車である。

それ以来、彼は、富裕層の個人の若くて高級志向の市場と(徐々に増えてきている)自分で運転したい女性や自分の車を大きくカスタマイズしたい女性を狙って、ダーウィンやレイス、ゴースト、そして今やカリナンなどの新しく、新鮮なモデルを紹介してきた。

カリナンは、去年、カスタマイズの程度次第ではあるが、基本価格50万ドルでこの地域で販売された。彼の言葉によれば、「当初は大きな賭けだったが、現実は予想をはるかに上回るものだった」。

サウジアラビアで自動車は、アル・ウラーの峡谷や涸谷を楽に運転できる最高レベルのオフロード性能を備えて大成功を収めた。しかし、英国で彼が頻繁に受ける質問は、ロールス・ロイスは特別に女性向けに車を設計するかどうかというものだ。

 「私は絶対にそれはやりません。女性が最も見たくない車は女性だけに向けられた車でしょう。ブラックバッジは、おそらくロールスロイスがこれまで製造したものの中でも最も男性的な車で、英国女性の間で特別仕様をする必要もなく、よく売れました。例えば、仕事を持つ女性から妊婦までです。」

「当社では、車を設計する際に、男女の両方に目を向けています。ハンドル位置が自在に変えられることや座席位置の自動調整は標準装備です。けれど、私は決してハンドバッグのハンガーの付いた車は設計しません。それは非常に馬鹿げたものになるでしょう」と彼は話した。

「しかし、当社の女性の顧客は、極めて精力的です。彼女たちは事業の指導者であり、会社を所有しており、たくましい人々です。特別に設計する時の当社の座右の銘は、〈あなたの望みが当社の社命です〉というものです」と彼は言い添えた。ハンドバッグ用フック付きのロールス・ロイスを望んでいるすべての人に希望を差し出して。

「私はこれまで、顧客の要求にノーと言ったことはありません---- 法に反しない限りは。」

ミュラー・エトヴェシュは、ロールス・ロイスのオーナーをがっかりさせた時のことを話した。彼は、ダッシュボード内に機密性タバコ貯蔵庫の取り付けを望んでいた。「それは、エアバッグや他の安全上の条件に合わないものです」と彼は説明した。

彼の熱意をとらえた革新は、電気自動車への移行です。彼の話によれば、「私は顧客がそれを受け入れると思っています。当社には既に電気自動車を所有している顧客が大勢いますから、本物のロールス・ロイスである限り、抵抗はほとんどないでしょう。力強い反面、静かであるため、電気自動車の概念は、既にブランドとよく合致しています。すぐに取り扱いをする日がくるでしょう」。

世界中のロールス・ロイスの市場で、もう一つ別の意味でも中東は独特だ。石油に依存している状況から脱却して多様性に向かうために様々な戦略がとられているにもかかわらず、世界市場における原油価格が原因で、経済活動は依然として不安定なままである。 石油価格とロールス・ロイスの売り上げの間に直接的な関係はあるのだろうか。

「当社は世界のどこにおいても景気後退の傾向と無縁ではありません。当社製品のオーナーの80%は、産業に依存しているか、自分で事業を営んでいる人たちですから、事業が圧迫されている時には新しいロールス・ロイスは買えないでしょう。石油価格と経済、当社の売り上げの間には間接的な関連があると言えます。今から2年前には、一時的に状況が悪化しました」と彼は言い足した。

彼が中東視察でサウジサラビアに立ち寄った時、現地提携先のモハメド・ユスフ・ナヒイ・モーターズについての質問の一つは、サウジアラビアのサウジ・アラムコ新規株式公開(IPO)が高級車市場の財源を枯渇させるのではないかというものだった。「それが当社の事業に影響するとは誰も思っていません。IPOが当社事業の資金を枯渇させるというのはあまりにも単純すぎます」と彼は述べた。

サウジアラビアの建国者であるアブドゥラズィーズ・ビン・サウジが英国首相ウィンストン・チャーチルからロールス・ロイスを贈られ、所有していたことは有名だ。それ以来、この地域ではロールス・ロイスは王族を指す。王族以外の富豪がこの車を買うことに反対する国もあるが、これは最近では変わってきている。ロールス・ロイスは、購入できる人なら誰にでもいつでも販売する。

しかし、ミュラー・エトヴェシュは、大衆マーケティングキャンペーンは決して行わないと主張する。「価格帯では決して妥協しません。ロールス・ロイスの価格を下げることは当社がすることではありません」と彼は話した。この地域の他の高級車メーカーが独占を犠牲にして積極的に市場シェアを取りに行くようになったこととは対照的だ。

究極の高級車の支配者と言っていいミュラー・エトヴェシュは国際的な高級ブランド市場および中東独自の需要、また、ロールス・ロイスの伝統を強く意識している。

「この地域の大富豪たちはたくさんの車を所有しています。彼らにとっての車庫は、私たちにとっての洋服ダンスと同じで、ランボルギーニやフェラーリを入れています。高級品を扱う事業というのはそういうものです」と彼は述べた。

しかし、どのような車がそこに停まっていたとしても、ロールス・ロイスは常に特別だろうと彼は信じている。見積もりによれば、115年前に創業して以来、有名な「スピリット・オブ・エクスタシー」のマークの下に製造されてきた車両の約75%が現在でも走行しており、車を手放さない伝統が特にアラブ世界では根強い。

彼の話によれば、「中東ではこのような車は代々継承されます。そのような車には家紋がついており、決して売りに出されることはないでしょう」。

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