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サウジアラビアの水産養殖の進歩をリードするKAUST

キング・アブドゥラー科学技術大学(KAUST)は「サウジアラビアと世界のイノベーション、経済発展と社会的繁栄の触媒になる」というミッションの期待に応えている。(シャッターストック)
キング・アブドゥラー科学技術大学(KAUST)は「サウジアラビアと世界のイノベーション、経済発展と社会的繁栄の触媒になる」というミッションの期待に応えている。(シャッターストック)
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31 Jan 2022 02:01:20 GMT9
31 Jan 2022 02:01:20 GMT9
  • 政府は2030年までに海産物の生産量を7万7,000メートルトンから60万メートルトンへ増産することを目標としている

ジョージ・チャールズ・ダーレイ

リヤド:海産物の養殖、収穫、加工といった水産養殖は、サウジアラビアを石油から脱却させ、より多様性のある起業家精神あふれた経済へと変えることを模索する同王国のビジョン2030の焦点である。

サウジアラビア政府は2030年までに海産物の生産量を7万7,000メートルトンから60万メートルトンへと増産することを目標にしている。この取り組みには35億ドルの投資が計画されており、政府省庁、民間および機関投資家、起業家を関与させ、主要な学術機関とともに行われる。

こうした学術団体のトップが「キング・アブドゥラー科学技術大学(KAUST)」である。サウジアラビアの紅海沿岸、ジェッダの北100キロの位置にある巨大な大学院研究・教育機関である。

サウジ王国の水産養殖の開発と促進にこれほど積極的に取り組んできた学術組織は他にはない。少なくとも20年前から行われている取り組みである。

この分野におけるKAUSTの初期の業績の1つは、2012年の国立水産養殖グループ(Naqua:ナクア)との共同ベンチャーだ。水産養殖に関する幅広い研究のイニシアティブを実施するというもので、エビのゲノム、海洋生物に影響を与えている病気や水質管理などをテーマとしている。国内外の市場を対象とした商業プロジェクトの実行を管理するための事業開発部門も創設された。

このベンチャーの目的は、2008年から2013年までKAUSTの学長を務めた施春风(Shih Choon Fong)氏が述べたように、「サウジ王国の持続可能な食料生産に寄与することであり、水産養殖と農業の全体的なサイクルを結合させる」というものだった。

同年、KAUSTは「食料、清潔な水、エネルギーという3つの基本的需要を満たすという課題が増加する中で、持続可能な養殖に取り組む」ための研究を進めるため、アリゾナ大学の農学生命科学部(UA CALS)との共同研究に乗り出した。

米アリゾナ大学のケビン・フィッツシモンズ理事はKAUSTと共同で、サウジアラビアの紅海沿岸に持続可能なエビと魚の養殖を構築する取り組みを行った。フィッツシモンズ氏は「最先端の設備を持ち、最先端の科学を進めている機関と共に活動できた」ことへの謝意を表明した。

ケビン・フィッツシモンズ氏

2019年2月、KAUSTは海洋空間計画のプロジェクトで紅海開発会社(TRSDC)と提携した。約1,300平方キロにおよぶ紅海の天然自然の珊瑚礁の生物多様性を保護・強化しようという意欲的な取り組みである。

同プロジェクトは海洋保護と並んで、サウジ王国における環境にやさしい炭素ゼロの水産養殖を推進しつつ、持続可能なエネルギー、観光、物流のチャンスを広げることを模索。

このプロジェクトには「慎重に計画された開発が行われる中で純保護利益を達成する」ために国内外の生物学者、環境学者、海洋学者の集団が関与し、TRSDCの建築家、技術者、計画立案者のチームとの共同活動が行われている。

一方、KAUSTの教授陣は世界各国の他の名門機関と頻繁に協力して、水産養殖に関する学術論文を何十本も発表しており、同時に水産養殖に関する生命工学分野で自分たち独自の解決方法の開発も行っている。

アフタブ・アラム氏はそうしたスタッフの1人である。氏は海産養殖とアクアポニックスを専門とする研究員だ。アクアポニックスとは養魚方法の一種で、魚の排出物を利用して植物に栄養を供給し、人間や動物の消費用に収穫・販売できるようにするというものである。

アクアポニックスはアリゾナ大学CALSの土壌・水質・環境学者であるエドワード・グレン氏によって現実に実行に移された。氏はKAUSTと共同で、エビの養殖の排出物を活用して、人間が直接消費したり、動物飼料や植物油脂として利用することのできる作物を育てる取り組みを行った。理論研究を実用化した一例であり、画期的な成果を上げた。

2020年2月、KAUSTの電気技術者ムハマド・フセイン氏とそのチームは、水質をモニタリングしてBluetoothでデータを送信することのできる自己発電式小型センサーの発売を発表した。立方体の形をした浮遊式の器具となっており、pH、温度、塩分、アンモニア濃度に関する情報を収集する。海洋生物に対する危機を警告して不必要な死滅を防ぐためにインターネット・オブ・シングス(IoT)が活用できる可能性を示すものとなった。

こうした様々なKAUSTのイニシアティブは、ビジョン2030の幅広い目的に寄与している。「スマート」な農業を促進すること。サウジ国民のための食料安全保障のさらなる実現。民間部門の奨励。外資の呼び込み。同時に、サウジ国民の将来世代のための環境にやさしい持続可能な経済を構築すること。この全てが、1月30日から2月1日にリヤドで開催される今度のサウジ国際海洋展示会議(SIMEC)で脚光を浴びることになるのは間違いない。

そしてサウジアラビアの急成長中の水産養殖部門への先見的で精力的な貢献者として、KAUSTは「サウジアラビアと世界のイノベーション、経済発展、社会的繁栄の触媒となり(中略)食料、水、エネルギー、環境という4つの世界的に重要な分野に特別な焦点を当てた社会福祉の強化に取り組む」というミッションの期待に応えている。

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