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サウジアラビア、エマージング・マーケットで530億ドルの配当を獲得

サウジアラビアと湾岸地域の国々は、さまざまな方法でエマージング・マーケットに進出している。(シャッターストック)
サウジアラビアと湾岸地域の国々は、さまざまな方法でエマージング・マーケットに進出している。(シャッターストック)
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22 Feb 2020 02:02:57 GMT9
22 Feb 2020 02:02:57 GMT9

William Tohmé

2019年9月、サウジアラビアは石油化学部門から脱却し、経済の多角化を目指す「サウジビジョン2030」の改革計画において重要な節目を迎えた。

サウジアラビアはJPモルガンのエマージング・マーケットへの参入を果たした。MSCI、S&P、FTSEなどの主要インデックスによる一連の発表の最終段階で、サウジアラビアが参加基準を満たしたことが確認されたということだ。

サウジアラビア資本市場庁とサウジアラビアの証券取引所であるTadawulによる働きが実った形である。両機関は同国の資本市場インフラを近代化し、投資家がより活動しやすい環境を作ることに尽力してきた。

サウジアラビアはエマージング・マーケットに参加することで上場投資信託に乗り出すことも可能となり、数十億ドル相当の外部投資の扉が開かれる。これはエマージング・マーケット参入がなければかなわなかったことだ。

たとえば、MSCIのエマージング・マーケット・インデックスだけを見ても$1兆9000億が動いており、その80%はアクティブ、20%はパッシブとなっている。これを考慮すると、サウジアラビアは2.8%の割合を占め、同国への外国資本の流入が530億ドル増加したことを意味する。

2020年に目を向けると、投資家にとっては留意しておくべき点がある。その中でもまずに挙げられるのが、原油価格とそれに伴う成長の鈍化、地域の地政学的緊張、そして投資家に恩恵をもたらす可能性のあるフィンテックの台頭である。

原油価格は今年、世界経済の減速や貿易摩擦、そして地政学的リスクなどを背景に、1バレル=55ドルから75ドルの間で変動した。原油価格を押し上げを目的にして行われ亜t急激な減産は、外需の低迷に加え、成長のさらなる阻害要因となった。

その結果、サウジアラビアの国内総生産(GDP)成長率は、2018年の2.4%から今年は0.2%に鈍化すると予想される。湾岸協力会議全体では、GDPが2018年の2%から0.7%に減速すると予想される。

9月にサウジアラビアの石油工場が無人機による攻撃の標的となったことで、湾岸岸地域における地政学上の不安定さが明らかとなった。実際にUBSによる最新の「Future of Wealth」レポートでは、世界各国の投資家を対象にした調査で、湾岸協力会議の加盟国6国の1つであるUAEの投資家の83%は、ビジネスのファンダメンタルズよりも地政学の方が市場を動かしていると考えていることが分かっている。

地政学的な背景としては困難な状況にあるのにもかかわらず、世界的に見るとUAEの投資家は今後十年間のリターンについてかなり楽観的な考え方を持っている。楽観的に見ているUAEの投資家が85%であるのに対し、アメリカが69%、アジアが65%、EMEAが72%という結果になっている。

2020年という年が進んでいく中で、湾岸協力会議の投資家にとっての明るい材料となりうるものは、テクノロジー部門の台頭である。湾岸地域では初となるデータ・ハブにバーレーンを選んだAmazonをはじめとするグローバル企業が、この地域のテクノロジーに通じている若い人々にサービスを提供しようと集まるようになっている。

フィンテック・エコシステムの発展は、サウジアラビアのビジョン2030における経済多様化戦略の重要な要素にもなっている。サウジアラビアの投資基盤を拡大し、キャッシュレスのデジタル経済への移行には欠かせないものだと考えられている。この目的のために、サウジアラビア通貨庁は産業の発展を推し進めるため、2018年4月にFintech Saudiを創設した。

また、湾岸協力会議はデジタル・アセット分野でもイノベーションの最前線に立っている。今年の初め、アブダビ証券取引所はデジタル通貨取引プラットフォームを承認し、国の政府系ファンドがデジタル通貨関連のベンチャー企業に投資した。

サウジアラビアと湾岸地域の国々は、さまざまな方法でエマージング・マーケットに進出している。サウジアラビアは古い歴史を持ち、世界でかなり初期になる人類の生活を示す先史時代の遺跡が何か所も残っているが、今やその社会や産業基盤は急速に変化している。国外からの資本の受け入れや、デジタル・アセットやフィンテック分野の積極的な導入など、サウジアラビアや湾岸地域が2020年以降にどのような状況を迎えるにしても、革新的で、急速な、そして創造的な未来が待っていることは間違いない。しかし、長期的に専門職の健全性が保たれることは重要な問題である。

革新と変革の原動力がはっきりと発揮されるには、専門職のレベルが良い状態にあることが欠かせない。

私たちは、そうした専門職の水準やきわめて重要な教育を通じて、湾岸域内の資本市場の発展のために果たすべき大きな役割を担っている。サウジアラビアはMENAの中でも特に急成長を見せている市場であり、透明性の向上や投資家の利益を最優先するというこの国の姿勢に強く賛同する。また、今より多くの湾岸地域の国々に対し、投資業界における公平性や透明性や倫理を促進してもらいたいと思う。

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