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ディルイーヤ・サーキット準備快調、光の下に歴史的なイベントを目指す

2018年にムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下から任命を受けたジェリー・インゼリロ氏は、自ら3度目となるリヤド・フォーミュラEイベントの監督役に取り掛かろうとしているところだ。(提供/ファイル写真)
2018年にムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下から任命を受けたジェリー・インゼリロ氏は、自ら3度目となるリヤド・フォーミュラEイベントの監督役に取り掛かろうとしているところだ。(提供/ファイル写真)
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25 Feb 2021 11:02:54 GMT9
25 Feb 2021 11:02:54 GMT9
  • フォーミュラEの2020-21シーズンは、2月26~27日にePrixダブルヘッダーで幕を開ける

アリ・ハーリド

リヤド:ほんの一瞬だったが、今週末のディルイーヤePrixダブルヘッダーを予定通り無事に開催させようと1年以上休まず努力を続けてきた男性は、くつろいで、満足げな笑みを浮かべてみせた。

「ご想像いただけると思いますが、皆んな信じられないほど興奮しています」と、ディルイーヤ門開発局(DGDA)の最高経営責任者(CEO)であるジェラルド・インゼリロ氏は語った。氏は友人からは親しみを込めてジェリーと呼ばれる。

2018年にムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下から任命を受けたインゼリロ氏は、この電気自動車によるシングルシーターシリーズが運営組織であるFIAから2020-21シーズンの世界選手権ステータスを与えられた今、自ら3度目となるリヤド・フォーミュラEイベントの監督役に取り掛かろうとしているところだ。

インゼリロ氏は、2018-19年キャンペーンの開幕戦を開催するために、ほぼ超人的ともいえる努力を行ったことを思い出す。

「やるべきことはたくさんありましたが、アブドルアジズ・ビン・ツルキ・ファイサル・アル・サウード王子の驚くべき指導力とフォーミュラEの素晴らしい同僚たちのおかげで、あのレースを87日間で成功させることができました」

3日間のイベント中にはコンサートも行われ、ジェイソン・デルーロ、エンリケ・イグレシアス、ブラック・アイド・ピーズ、アムル・ディアブ、ワンリパブリック、デヴィッド・ゲッタといったスターがレース後の舞台に花を添えた。サウジアラビアの人たちにとっては、かって見たことのないイベントだった。

「10万人の観客が訪れ、ディルイーヤの住民の皆さんにも喜んでいただきました」とインゼリロ氏は語った。「ですが、簡単なことではありませんでした。いろいろなことで仕事が中断されましたし、こなさなければならない仕事がどっさりありました。当時、サウジアラビアで開催された国際スポーツイベントとしては、それまでで最大のイベントだったんです」

その後、2019-20シーズン開幕レースとして、ディルイーヤはePrixレースのダブルヘッダーを開催する初のサーキットとなった。この金曜日、ディルイーヤ・サーキットではもうひとつの「初めて」が見られることになる。フォーミュラE史上初めてのナイトレースとなるのだ。そしてこれには、新型の持続可能なLED技術が使用される。

コロナのパンデミックによって混乱がもたらされたのは言うまでもないが、課題は他にもあった。2019年後半の最終レースから今週末のイベントまでに、ある大きな混乱要素が最も厄介であることが分かった。

「トラック全体を取り壊さなければならなかったんです」とインゼリロ氏は語った。「ディルイーヤのインフラを何億ドル分と注ぎ込みました。水道、電力、下水設備といったことすべてを、この巨大なマスタープランのために行わなければならなかったのです。ただ、時間が限られていました。すべてを完成させるのに1年しかなかったのです。素晴らしい開発局チームと運営チーム、そしてフォーミュラEの同僚たちの素晴らしい仕事ぶりのおかげで、11か月ですべてをやり遂げることができました」

サーキットの完成を目指し、あらゆるレベルの何千人という作業員が懸命に働いた。しかも、建設にあたっては最高に厳しい規制を遵守しなければならなかった。

「お世辞で言ってくれたのかもしれませんが、ドライバーのほとんどが、一番気に入っているコースはディルイーヤだと言ってくれました」とインゼリロ氏は語った。「ユネスコ世界遺産の登録地でもありますのでここは神経を使うところなのですが、コースを構成する際に振動を最小限に抑えるようにする必要がありました。そして、フォーミュラEはそれを実現しました。実際の話、このコースとその設計方法のおかげで、まったく新しい歩道を設置することができたんです。ですから、レースが終わったら、地域の方々には何キロという縁石と街灯付きの歩道をご利用いただけることになりました」

インゼリロ氏にとって、これはF1を締めくくり、翌年に繋げるために大切なことだ。ディルイーヤのメンテナンスは、インゼリロ氏にとって1年中休みなしの仕事なのだ。

「今では、ジョギングする人、サイクリングする人、ベビーカーを押して散歩する家族の姿などを見かけることができますし、新しく植樹された2万2千本の木も目に入ります」、とインゼリロ氏は言う。「ユネスコ世界遺産にこうした美しい背景が加わってインスタ映えするようになったのは嬉しいですし、それだけでなく、地域社会に貢献することもできましたし、環境的に持続可能なテクノロジーや植栽という手法を使うという皇太子殿下のビジョンも実現することができました。つまり、ウィンウィンならぬウィンウィンウィンとなったのです」

ディルイーヤ・サーキットの建設にあたっては、フォーミュラEと「サウジ・ビジョン2030」の持続可能性目標をあらゆる面で満たす必要があった。

「選択の余地などありませんでした」とインゼリロ氏は笑顔で語った。「皇太子殿下は、環境保護、持続可能性、最新テクノロジー、生活の質といった問題について大変厳しいお方です。そして、殿下のコミットメントと厳しさは、サウジアラビア王国の誕生の地の保全においても、紅海で現在進行中のさまざまなプロジェクトにおいても、未来都市NEOMにおいても変わりません。NEOMは未来都市になると言う声もありますが、殿下はNEOMに適用されるのと同じビジョン、同じコミットメントを400年前の都市にも適用しておられるのです」

ディルイーヤePrixのプロモーターであるCBXのマネージング・パートナーであるSamer Issa-El-Khoury氏によると、フォーミュラEがディルイーヤに決定したのは偶然からではないという。サウジの指導者たちが電気自動車の未来とディルイーヤの歴史との組み合わせを望んだからである、と。

「2018年にスタートした時に、スポーツ省からサウジアラビア・モータースポーツ連盟、FIA、ユネスコに至るまで、このプロジェクトに関わるすべてのステークホルダーと幅広く会議を行ったのです」とIssa-El-Khoury氏は語った。

会議で検討されたのは、ディルイーヤのユネスコ遺産の地位、FIAのドライバー保護規定、時間的制約、そしてディルイーヤの映像を可能な限り壮大にメディアで伝えることだった。

ディルイーヤ・サーキットの設計にあたっては重要な役割を果たしたIssa-El-Khoury氏だが、氏によると、ドライバーの安全性を守り放送ニーズを満たすという2つの課題に対応するにはコース全体にわたってすべて一定の照明レベルを維持することが必要として、そのために大規模な措置が講じられたという。

そんななか、レバノン出身のカナダ人エンジニアであるIssa-El-Khoury氏を友人のように思っているドライバーの多くが、ライトアップされたコースを走りたくてうずうずしているようだ。

「ドライバーたちはとてもワクワクしています」とIssa-El-Khoury氏は言う。「皆んなこのコースは日中に試したことがありますから、夜に試すことができるのをとても楽しみにしているのです。アンドレ・ロッテラー(タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム)も昨日、インスタグラムへの投稿で「ディルイーヤは、セッティングが素晴らしいことからお気に入りのコースのひとつです。下り坂になってから直線で上り坂に戻ってくるというチャレンジングなコースですからね。すべてのドライバーにとって、LEDライトで夜のストリートサーキットを走るなんて初めての経験になるでしょう」と述べている。

LEDはメタルハライドランプに比べて消費電力が50パーセントも少ない。Issa-El-Khoury氏は、このような小さなステップを一つ一つ踏みながらエネルギーを節約していくことが、将来的にはより大きな変化につながると考えており、しかもその変化はサウジアラビアにとどまらないという。

「コースを照明で照らすのだから、節約してもエネルギーを使うことに変わりはない、と言われるかもしれませんが、R&DとフォーミュラEは現在、ひとつのレース、ひとつの都市ごとに変化を起こし、それをきっかけにこれらの都市に変化を持ち込むことを目指しているのです」とIssa-El-Khoury氏は言う。「変化はレースコースから家庭へと移行していくでしょう」

こうしてコースはすべて整えられ、あとはアクションを楽しむだけだから、一晩か二晩休暇を取ってでもアクションを楽しみたいという人がいても責められはしないだろう。だがそんな人たちも、今年はおそらく普段通りにそれぞれの日常に追われていることだろう。

「コースは美しいですし、ユネスコ遺跡を引き立てていると思います」とインゼリロ氏は語った。「そして何よりも大事なことに、自分にとってのコミュニティであるディルイーヤの住民の方々から、レースは非常にポジティブなことだと思っていただいています。レースは経済的利益を多くもたらしてくれるから、と。これまでレースが開催されると、そのたびにコミュニティや生活の質が向上してきたのです」

今年は、スタンドに観客はいないし、レース後のコンサートもないかもしれない。だがそれでも、ディルイーヤの住民にとっては、いつものように騒音を味わうことはできるし、そしてもちろん、明るく灯された照明も楽しめることだろう。

Issa-El-Khoury氏にとっては、この金曜日と土曜日、ディルイーヤのコースと夜間のコンディションが「素晴らしい組み合わせ」となり、ドライバーの真価が発揮されるだろうという。

「マシンはほとんどどれも同じですから」とIssa-El-Khoury氏は言う。「ヒーローはディルイーヤで作られることになるでしょう」

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