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ネフド砂漠の古代遺跡からサウジアラビアの初期人類の活動を垣間見る

本論文は、今までこの地域のアシュール人に関する詳細な情報は、良く文書化されてはいるものの、ただ1つの遺跡 ― サウジアラビア中央部のサファカ遺跡に限られていたと述べている。 (SPA)
本論文は、今までこの地域のアシュール人に関する詳細な情報は、良く文書化されてはいるものの、ただ1つの遺跡 ― サウジアラビア中央部のサファカ遺跡に限られていたと述べている。 (SPA)
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14 May 2021 02:05:46 GMT9
14 May 2021 02:05:46 GMT9
  • 研究者によれば、アン・ナシム遺跡はネフド砂漠で年代測定された最初のアシュール文化の遺跡とのことだ
  • 小型から大型までいろいろな種類の哺乳類がいた痕跡をネフド砂漠にある湖の跡地で確認できる

ヘブシ・アル・シャマリ

リヤド:サウジアラビア北部のハーイル地方で、35万年前の古代人類の活動を示す重要な考古学的遺跡が発見された。

ネイチャー誌に掲載された論文によると、アン・ナシム遺跡はネフド砂漠で初めて年代測定が行われたアシュール文化の遺跡だ。アシュールの技術とは約170万年前に現代のホモ・サピエンスの前身である古代人類が開発したと考えられている楕円形や洋ナシ形の石器の特徴的なスタイルを指す。この「手斧」は約13万年前まで使われていたと考えられている。

「アラビアのネフド砂漠へのアシュール人の進出」という題名の本論文は、今までこの地域のアシュール人に関する詳細な情報は、良く文書化されてはいるものの、ただ1つの遺跡 ― サウジアラビア中央部のサファカ遺跡に限られていたと述べている。

しかし、ネフド砂漠でも石器が発見された。アン・ナシム遺跡の研究者たちはかつて深い湖(おそらく淡水湖)であったものの痕跡、そして約78万年前から13万年前までの中期更新世に関連する特徴を発見した。

王国の文化遺産委員会のCEOであるジェシア・アル・ハーバッシュ氏はアラブニュースに次のように述べている。「多くの遺跡が発見され、調査中です。」

しかし、今回のネフド砂漠での発見は「サウジアラビア内のアシュール時代の遺跡で最も年代が古い」ため、特に重要性が高いとしている。

グリーン・アラビアン・プロジェクト(GAP)による過去10年間の調査で、更新世にアラビア半島が気候変動を経験して湿潤な環境になり、それが大陸内や大陸間の人類の移動や分布に影響を与えたことがわかっている。これは特にアシュールのコミュニティに当てはまり、彼らは他のコミュニティよりも水源に縛られていたようだ。

アン・ナシム遺跡では、この地域の中期更新世の人類が使用した多様な石器群についての洞察を得ることができる。これはおそらく、より湿潤な「緑のアラビア」気候の時期に人類が半島に繰り返し戻ってきたことを示している。

遺跡には深くて狭い盆地があり、その中央部には地面から岩が露出しており場所があり、そこで旧石器時代初期の遺物がいくつか発見されている。主に手斧や岩芯から切り出した石の「薄片」など、約354点が採取されている。調査の結果、考古学的資料は湖と密接に関連していることがわかった。この論文では、発見された道具類はネフド砂漠の他の場所で発見されたものと似ていると述べている。薄片状のものがいくつもあることから、材料が遺跡に持ち込まれ、一部はテスト後に廃棄されたと考えられる。他には部分的に加工されただけで放置されているものもあった。

ネフド砂漠での広範な調査により初期のアシュール文化の石器に地元の石英岩が頻繁に使用されていたことが判明しており、その中には様々なサイズや形状の手斧もある。

アン・ナシム遺跡のアシュール石器は、ネフド砂漠で湖の形成が広く行われていたと思われる、約35万年前から25万年前の中期更新世後期のものとされている。それに比べ、サファカの遺跡で発見された石器はより新しく、約24万年から19万年前のものである。

アン・ナシム遺跡で発見されたアシュールの史料と、ネフド砂漠にある他の年代不明のアシュールの遺跡との類似性は、この地域にかつて存在した湖がこの地域で人類が生活圏を広げるための重要な資源であり、人類や他の哺乳類が生存するのに適した環境であったことを示している。

ネフド砂漠のこれらの湖の跡には小型から大型まで様々な種類の哺乳類がいた痕跡が見られ、このことは湿潤期に動物がこの地域に移動してきたことを示しており、水飲み場で食物連鎖が形成されていたことを示唆している。

サウジアラビアの文化遺産委員会はベルリンのマックス・プランク人間発達研究所と協力してGAP科学プログラムに取り組んでおり、この活動にはサウジアラビア国内の専門家も参加している。時代経過に伴うアラビア半島の気候変動、そして古代人類のアラビアへの移住と定住について研究している。

これまでのGAP調査では何百もの湖の跡、河川、森林、それらに支えられた動物たちがいたことが発見されており、当時の温暖な気候のおかげでその周辺には次々と文明が誕生することになった。

昨年末、文化遺産委員会は、タブークにある12万年以上前に湖だった場所で人間や象、ラクダ、捕食動物の足跡が見つかったと発表した。これらはアラビア半島で発見された人や動物の最古の足跡であると考えられている。

GAPを通じて文化遺産委員会は、アラビアの古代の気候条件や過去の環境の性質、人間の動きなどを明らかにし、洞察を深めるために集中的な調査と体系立てた発掘を行っている。これは「サウジ・ビジョン2030」の一環で同委員会が取り組んでいる王国内の遺跡の発掘、保存、普及の活動の一部だ。

アル・ハーバッシュ氏は、アラビア半島での古代遺跡の発掘・調査において、国内のチームと国際的なチームが協力することが重要だと強調する。また、考古学の研究や発掘に携わっている20以上の国際的に権威のある研究機関や大学との共同プロジェクトが進行中であるとも述べた。

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