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レバノンの平和的な蜂起でアーティストたちが立場を明確にする

ベイルートのMariana WehbeとSara Beydounが率いるろうそくの明かりのデモ、Nour Al-Thawra(提供)
ベイルートのMariana WehbeとSara Beydounが率いるろうそくの明かりのデモ、Nour Al-Thawra(提供)
アーティストAbdul Rahman KatananiによるベイルートのSaleh Barakatギャラリーでのインスタレーション。(提供)
アーティストAbdul Rahman KatananiによるベイルートのSaleh Barakatギャラリーでのインスタレーション。(提供)
17 Nov 2019 05:11:50 GMT9
  • ベイルートや他の都市で起きている「革命」の壁を覆っているのはアートだ
  • 抗議者たちにとって、パブリックアートは彼らの政治的なメッセージを伝える手段だ

レベッカ・アン・プロクター

ベイルート: 11月12日の夜、ベイルートの南の町カルデで叫び声が聞こえた。この叫び声は、レバノン革命の背景雑音になったものとは違っていた。

1人の兵士が、レバノンのドルーズ派コミュニティの政治指導者ワリド・ジュンブラッド氏率いる進歩社会党の地方役員Alaa Abou Fakherを殺害し、彼は27日連続して行われている抗議活動における3人目の犠牲者となった。

新しい課税を政府が提案したことに対する反発行動として始まり、その後、真の「人民の力」運動へと姿を変えた全国的な抗議運動の真っただ中、この殺害は、すでに高まっていた緊張をエスカレートさせた。 

デモ隊はレバノンの宗派主義制度の変更を要求しており、すでにサード・ハリリ首相の辞任を引き起こし、おそらくさらなる辞任につながるだろう。

その一方で、殉教者広場の革命の壁を覆うもの、リング(西ベイルートと東ベイルートを結ぶトンネル)、ESCWA(国連の西アジア経済社会委員会)の境界壁、 議会の隣のエリア、トリポリ全体、そして数え切れないほどの場所で、アートといった別の形での抗議活動が行われている。

「私たちが表現しようとしたアートは、これまでの革命のほとんどすべての出来事を日々記録しています」と、グラフィティアーティスト歴11年のSaid Fouad Mahmoudは語った。「スピーチがうまい人もいれば、歌がうまい人もいます。そして私たちは絵で声を上げます。私に一番影響を与えた瞬間の絵を描きました。革命における女性の役割、片足で掃除する男、そして旗と火の革命の初日です」

[caption id="attachment_4113" align="alignnone" width="383"] Said Fouad Mahmoudによるグラフィティ・アート。(提供)[/caption]

漸進的なグラフィティあふれる壁の多くは、Iman Nasreddine AssafのArt of Changeイニシアチブの傘下のものだ。このイニシアチブは地元ベイルートに拠点を置くNGOのAhla Fawdaと英国に拠点を置くWhere There's Wallsが連携し、5月に同氏によって設立された。

「私たちの目的は、コミュニティ全体に重要なメッセージを広めるために、アーバンアートを単なるグラフィティシーンではないものへと促進することです」とAssafは語った。「私たちの革命の壁は、デモと革命を支援するものであると同時にその一部でもあります。これらは人々の痛みと要求を表していて、そのインパクトは大きくなってきています。アートはすべての人を感動させる国際的な言語なのです」

アートは、革命家たちが彼らの政治的メッセージを伝えるのに好む媒体として姿を現してきた。そのため、Instagramのページ、Art of Thawra(Art of Revolution)は、2019年の抗議活動中に制作された関連するアートワークを収集し紹介している。

「この革命の間にストリートアートが大幅に増加しました」とMahmoudは語った。「人々は絵を通してメッセージを送ろうとしています。アートは、デモの間、文明人がどのようにふるまったか、またこの革命がこれまでどれほど平和的であったかを示しています。私は最後まで平和的であり続けることを願っています。もしそうなら、それはアートがこの革命で主要な役割を果たしたことを意味します。なぜなら、アートはそれ自体が平和的なものだからです」

レバノンの現代アートコミュニティは、アーティスト、キュレーター、ギャラリストが宗派を超えた団結を求めて抗議に参加することによる、スペース、プログラム、展示会の閉鎖に関し多数の声明を発表している。 抗議運動が10月17日に始まったとき、ベイルートのアートコミュニティは、Home Worksイベントに集まったばかりだった。

イベントを延期した主催者のAshkal Alwanからのメッセージは次のとおりだ。「芸術的および文化的な機関やイニシアチブは、より広範な市民的、政治的、経済的、イデオロギー的背景から決して分離されることはなく、むしろ歴史的出来事とその影響の結果として、またそれに応じて形作られるのです」

10月25日、ベイルートアートセンターは同様の声明を発表した。「現在の権力体制に反対しレバノン中で起きている民衆蜂起に連帯して参加することで、私どものような下記の文化組織や機構は共同でオープンなストライキに取り組み、文化部門の同僚に参加するよう呼びかけます」

ベイルートのクレマンソー地域にあるレバノンの大手アートディーラーSaleh Barakatのスペースには、もう1つの連帯の芸術的表現が見られる。11月8日、彼は、パレスチナ人でベイルートを拠点とするアーティスト、Abdul Rahman Katananiのインスタレーションをフィーチャーしたショーを開いた。

[caption id="attachment_4112" align="alignnone" width="386"] Said Fouad Mahmoudによるグラフィティ・アート。(提供)[/caption]

このアーティストが住んでいるサブラ難民キャンプの環境とそっくりな、塗装された金属スクラップと木材を使って作られ、有刺鉄線に囲まれた一連の一時的な住居がギャラリー全体に配置された。

Katananiの没入型で不安定なインスタレーションは、1月4日まで表示され、レバノンにはどんな未来が待ち受けているのかを問いかけている。

「多くが、作品を作り上げることと、デモに参加することとのちょうどよいバランスを考えようとしています」と、Dalloul財団の創設者兼ディレクターであるBasel Dalloul氏は述べた。「あらゆる形態の文化的生産は、将来のレバノンの経済的推進力の1つになり得ますしそうなるでしょう」

レバノンで最も有名な画家の一人であるAyman Baalbakiは「いまのところアートの製作には関わっていません」と語った。「彼はすべての抗議に参加し、政治的変化の必要性に完全に関わっているのです」

David/Nicolasという名のスタジオを持つ2人組のデザイナーDavid RaffoulとNicolas Moussallemは、声明で次のように述べている。「今日起こっていることは、腐敗に取り囲まれていない、より明るく誠実な未来を望むレバノン人にとって非常に重要なことです」

「私たちは作品を作ろうとしていますが、簡単ではありません。 いま、私たちは自分たちの国をどのように助けることができるかに集中しています」

「一方で、革命がこのように後押ししているので、創造性はさらに高まっています」

「ほとんどの場所は閉じていて、自発的にオープンしています。ソーシャルメディアがあって本当によかった。おかげで私たちがやっていることを世界に示すことができます」

動きのある筆使いと鮮やかな色彩にあふれる大胆で抽象的なキャンバスで知られるレバノンの画家Marwan Sahmaraniは、混乱の中で作品を作ることの難しさを指摘した。

「だれにとっても不安なときです」と彼は語った。「良いことも悪いことも含め、さまざまな思いがあふれています。必要に応じて作品を作ったりデモをしたりと分けています。でも、いまに関連していて現在起きている出来事のジャーナリスティックな表現に当てはまらないものを描くにはどうすればいいのでしょうか」

クリエイティブなシーンにおける個人は、抗議活動者と連帯していくつかのイニシアチブを生み出すために仲間意識により手を組んだ。その1つは、レバノンのファッションハウスと社会的企業であるSara's Bagの創設者Sara Beydounとその友人のMariana Wehbeにより実施されたNour Al-Thawraだ。

11月6日の夕方、レバノン人の女性のグループが、一人一人火をともしたろうそくを手にし殉教者広場に集まった。「私たちが示した力と決して死ぬことのないレジリエンスのためにろうそくを灯しましょう」と、Beydounは自分のInstagramアカウントに記した。「ろうそくと平和な祈りを手にし、私たちの力をすべて合わせて、殉教者広場を照らしましょう」

BeydounはArab Newsに次のように語った。「私たちは皆、1つのことを望んでいます。それは私たちが夢見るレバノンです」

Wehbeは同意した。「Saraと私は初日からデモに参加しています」と彼女は言った。「この革命に参加しているすべてのレバノン人女性のように、私たち一人一人はこの革命を助け、支援し、前進させる方法を見つけようとしています」

この二人が感動的な動画に収めネット上で急速に広まった、ろうそくを手にした女性の群衆は、「平和な象徴的な祈り」を作成するという必要性により推進された。

「どこ出身で、宗教的信条が何であろうと、これは 私たちの国、私たちの未来、団結のための祈りでした。」とWehbeは語った。「これは愛、思いやり、そして私たちのふるさと、レバノンの団結と保護の象徴なのです」

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