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西サハラにおけるラクダ飼育の情熱と伝統

2019年10月13日、モロッコが支配する西サハラの都市、ダフラ近くの砂漠にて、日没を背景とするラクダのシルエット。(AFP/ファデル・センナ)
2019年10月13日、モロッコが支配する西サハラの都市、ダフラ近くの砂漠にて、日没を背景とするラクダのシルエット。(AFP/ファデル・センナ)
2019年10月13日、モロッコが支配する西サハラの都市、ダフラ近くの砂漠にて、ラクダに水を飲ませる所有者。(AFP/ファデル・センナ)
2019年10月13日、モロッコが支配する西サハラの都市、ダフラ近くの砂漠にて、ラクダに水を飲ませる所有者。(AFP/ファデル・センナ)
2019年10月13日、モロッコが支配する西サハラの都市、ダフラ近くの砂漠にて、ラクダの群れを導く所有者。(AFP/ファデル・センナ)
2019年10月13日、モロッコが支配する西サハラの都市、ダフラ近くの砂漠にて、ラクダの群れを導く所有者。(AFP/ファデル・センナ)
21 Nov 2019 07:11:11 GMT9

AFP 西サハラ・ダフラ

  • 西サハラでは、現地の格言「ラクダを持たない者は何も手にできない」がいまも事実
  • 「ラクダは、日差し、風、砂、渇きと、あらゆるものに耐えることができます。もしラクダと話せたなら、彼らの頭の良さを簡単に知ることができるでしょう」と飼い主は語る

西サハラ、ウエド・エダハブ砂漠で、ハビボウラ・ドリミ氏は先祖の仕事を受け継ぎ、酪農用ラクダとレース用ラクダを育てている。ただし、少しだけ現代のテクノロジーの助けを借りている。

彼が育てているラクダは砂漠を自由に歩き回り、普通のラクダと同じように明け方と夕暮れに搾乳される。

ラクダは「野生植物を餌にし、一日中歩けば、ミルクがとてもおいしくなる」のだと59歳のドリミ氏は言う。遊牧民が「命の源」と呼ぶ栄養豊富な飲み物の優れた点について熱く語る。

しかし、ドリミ氏はいまはラクダの群れと一緒に暮らしていない。

彼は家族とともに町で暮らしている。ラクダの世話をしてくれる人を雇い、ラクダのところに行くときは、GPS座標を確認して四輪駆動の自動車で砂漠を横切る。

群れの大きさについて聞かれると、口が重くなる。「それを話すと悪いことが起きるのです」と彼は言う。

ドリミ氏は、自分の子供のことのようによく知っているラクダのおだやかさや優しさについて語るのが好きだ。

「ラクダは、日差し、風、砂、渇きと、あらゆるものに耐えることができます。もしラクダと話せたなら、彼らの頭の良さを簡単に知ることができるでしょう」

「砂漠は私を知っている」

ドリミ氏は、長い間砂漠に住んでいるオウルド・ドリミ部族の子孫だ。

彼は自己紹介をするときには、伝統が乗り移ったかのように5世代遡って先祖の名前を挙げる。

「私は砂漠を知っていますし、砂漠は私を知っています」と彼は言う。

他の地域と同じく、西サハラの遊牧民も田舎の暮らしから都市型の暮らしへと移行している。

「若い人は町にとどまることを好みます」とドリミ氏は言う。そして、いま家畜の世話をしているのは、主に隣国モーリタニアから来た人たちだ。モーリタニアの北の砂漠は、最大1,000頭のキャラバンで横切る。

若い人は「(携帯電話の)電波が届くところで働くことを求めることも多いです」とも語る。

近くの町ダフラの人口は、モロッコの支援を受けた漁業、観光、ハウス栽培の成長によって20年間で3倍の10万人になった。

西サハラのこの地域では、開発プロジェクトはもっぱらモロッコ政府に依存している。

モロッコは、旧スペイン植民地の80%を1970年代から支配しており、スペイン統治の下、自治領として維持することを望んでいる。

ポリサリオ戦線は、1975年から1991年まで、独立戦争を戦った。そして、西サハラの人たちが独立またはモロッコとの統合を選択する住民投票を行うことを希望している。

国連は数十年間にわたり、政治的歩み寄りの交渉を試みてきた。

彼の部族には多いのだが、ドリミ氏にも、モロッコが支配する地域とポリサリオ戦線が支配する地域を隔てる「砂の壁」の向こう側に家族がいる。

彼はモロッコへの忠誠を支持するが、独立を支持する人もいると話す。

しかし、部族間の協力関係が政治に勝る。

「部族は部族。社会組織なのです」と彼は言う。「私たちの間にはとても強い絆があります」

「未来のために過去を守る」ためにドリミ氏は文化団体を作り、国境がなく「家族が群れと雲に従う」時代から伝統を守る。

皮肉

ドリミ氏は砂漠を愛しているが、1つ不満がある。「ラクダの乳製品産業は、この地域を除く世界のあらゆる場所で高く評価されています」

ラクダ乳は健康を意識する消費者に人気で、脂肪のない肉も優れているとドリミ氏は語る。

しかし今日の農業の中心は、遊牧民でないモロッコ人が食べるものに合わせた小規模な畜産農場だ。

モロッコ政府の統計によると、モロッコ人が支配する26万6,000平方キロメートル(10万6,400平方マイル)の西サハラには、6,000人の家畜所有者、10万5,000頭のラクダ、56万匹の羊とヤギがいる。

サウジアラビアなど、他の乾燥地にある国々では、ラクダの集中的な飼育が急増している。

しかし、モロッコ当局は西サハラのラクダ産業に関する複数の調査に着手したものの、成果は出ていない。

それにもかかわらず、現地の格言「ラクダを持たない者は何も手にできない」はいまも事実だ。

「サハラの住民は、金があればラクダに金を使う頭がおかしいやつらだと言う人もいます」とドリミ氏はおどける。

彼にとっては、ラクダに2万モロッコ・ディルハム(2,000米ドル)を使うのが安全な投資だ。

だが、激しい情熱もある。

彼のFacebookページやWhatsAppのメッセージはラクダの飼育技術や研究、レースについてのトークであふれている。

レースは「楽しいですし、お金になります」とドリミ氏は言う。

ドリミ氏によれば、アラブ首長国連邦が、900キロメートル北にあるタンタンのレース場建設に出資して以降、レース用のラクダは価値が上がり、最高12万モロッコ・ディルハムで売れるようになった。

レース用のラクダを訓練するため、ドリミ氏は砂漠で四駆に乗って若いラクダを追い回す。

この技術により、彼は国内のコンテストで8回優勝しているのだと語る。

しかし、頑固なラクダもいるのだとドリミ氏は強調する。優勝した最高のラクダを「すばらしい価格」で売ったのだが、そのラクダは飼い主が変わると走ることを拒絶するようになったという。

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