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イラクのバビロン、古来の建築技術が風化の傷を癒す

バグダッドの南、バビロンの古代遺跡にあるイシュタル門。(AFP)
バグダッドの南、バビロンの古代遺跡にあるイシュタル門。(AFP)
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30 Oct 2022 02:10:27 GMT9
30 Oct 2022 02:10:27 GMT9
  • 塩分が人類最古の遺跡を腐食させている
  • 考古学者は政府からの資金が足りないと訴えている

バビロンの遺跡:シュメールの母なる女神ニンマフの神殿では、イラクの考古学者が7,000年前の技術を駆使して、この遺跡と古代都市バビロンの他の地区が、その中心部に浸み込んだ塩分により内部から破壊するのを防ごうとしている。

気候変動の影響を受けやすいイラクでは、長引く干ばつや土壌侵食の問題により、ユネスコ世界遺産地区の遺跡が塩分を含んだ地下水の流入を受け、腐食が進んでいる。

それを彼らが丁寧に作られた脱塩レンガで修復しているのだ。

「塩分を含んだ地下水は最大の敵です」。イラク国家考古局の考古学者で、皮肉交じりに自らを“バビロンの守護神“と称するアンマー・アル・タイー氏は言う。

ユーフラテス川沿いにある古代メソポタミアの都市は、かつて広大な帝国の中心地であり、塔や泥レンガ造りの神殿で広く名を轟かせていた。

約2,600年前に造られた空中庭園は、古代世界の七不思議のひとつに数えられている。

気候変動の影響もあり、塩害、異常気温、洪水、土壌浸食などの問題が、世界中の文化遺産を脅かしている。

その影響は、イラクをはじめ、オーストラリアの先住民の岩絵からバングラデシュの15世紀の「モスク都市」に至るまで、広範囲に及ぶ。

アル・タイー氏らのチームは、父親から古来の技術を受け継いだ地元の職人から、塩分を抑えた特殊な泥レンガの製造方法を数ヵ月かけて懸命に学び、今年、修復用の最初の1ロット分を作った。

まず、泥レンガの専門家が1週間以上かけて地面を探し回り、塩分濃度が許容範囲内にある原料の土を見つけ出した。

それでも、さらに塩分を少なくするために土を「洗う」必要があったとアル・タイー氏は言う。

次に、この泥に砂、砂粒、わら、水を混ぜて大きな円形物に成形し、1ヵ月間発酵させる。この過程で、残った塩が泥や砂の混合物の端に追いやられ、縁の部分に白い結晶ができる。

この塩分を含んだ不要な汚泥の表面を削り取り、レンガの形にした後、地元の女性たちが共同で編んだ葦のマットの上に並べる。

こうすることで、レンガに独特の模様が生まれるのだ。

アル・タイー氏は、これらの全工程を経た新品の泥レンガに含まれる塩分の量は、作業前の状態から4分の3近く減少するという。

さらに、風通しの良い木陰に積み上げて2~3日乾燥させた後、日なたに並べて1ヵ月間天日干しすると、レンガは使用できる状態になる。

アル・タイー氏の大敵である塩分は、いたるところに存在する。

こうした塩の問題の深刻さにもかかわらず、アル・タイー氏は、イラク政府から何の援助も受けていないという。

彼の現在の修復プロジェクトはすべて外国からの資金に依存している。

「政府からの支援や投資がないことが、私たちの最大の課題です」。同氏はこう話し、基本的な物資の価格高騰について指摘する。干ばつに悩まされるイラクでは、清潔な水でさえ、ますます値段が上がっているという。

ロイター

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