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グリーンファルコンズ、勇敢にその名を歴史に刻む

2022年11月22日、カタールのルサイルスタジアムにおいて、アルゼンチンを2-1で下したサウジアラビアチーム(ロイター)
2022年11月22日、カタールのルサイルスタジアムにおいて、アルゼンチンを2-1で下したサウジアラビアチーム(ロイター)
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24 Nov 2022 04:11:27 GMT9
24 Nov 2022 04:11:27 GMT9
  • エルヴェ・ルナール監督の基本方針と選手らの英雄的なパフォーマンスが、サウジアラビアのサッカー史上最高の瞬間を生む
  • サレム・アル・ドサリの、マルティエスをかわした曲線を描くシュートは、2022年カタール大会のゴールのひとつとして歴史に残るだろう

アリ・カーレド

筆舌に尽くしがたいことを、どう表現すればいいだろう。

サウジアラビアサッカー史上最高の試合。もしくは、サウジアラビア最高のスポーツにおける達成。

どちらも、ルサイルスタジアムでの出来事を正当に評価するには不十分だ。

アラブ国家による史上最高のパフォーマンスと言ってもいいだろう。

サウジアラビアがまったく思いがけなく、アルゼンチンおよびリオネル・メッシを打破した時には、こういった言葉さえも不十分に思えた。

テレビでは、涙ぐんだ解説者が的確な言葉を紡ごうと必死で、「英雄的」「センセーショナル」「あり得ない」という表現を口にした。

しかし、この前代未聞のパフォーマンスはあるひとつの言葉によって要約されるかもしれない。「勇気」という言葉だ。

タックルに飛び込んだり、危険を冒したりする肉体的な勇敢さのことではない。もっとも、英雄的なサウジアラビアの選手らは、それも十分に持ち合わせていたのだが。

しかし、ここで言いたいのは戦術面、勇敢なサッカーのことだ。戦術的プランを考え出し、それを最後までやり遂げる勇気だ。メッシのペナルティキックで先制を許した後も折れない勇気。世界最高のチームのひとつで、優勝候補であるアルゼンチンに対し、攻撃的な戦術をとり、信じられないような逆転勝利を収める勇気だ。

火曜、エルヴェ・ルナール監督が率いるチームは、そういった勇気に満ちていた。

エクアドル、イングランドを相手に、屈辱的な敗退を喫し、ワールドカップ初戦をものにできなかったカタールと、それほどでないにしてもイランも、嫉妬と悔恨を胸に見つめていたに違いない。

サウジアラビアは決して同じ運命を辿るまいとした。

そうすることで、2022年カタール大会に最高の瞬間をもたらし、フィールド外の騒ぎや論争に飲み込まれそうになっていたワールドカップを、多くの意味で活気づけた。

サウジアラビアのパフォーマンスは、同じアラブ勢のチュニジアに、ほんの1時間後に控えたデンマーク戦に臨むにあたっての青写真を与えた。チュニジアは劣らぬ勇敢なプレーを見せ、2020年欧州選手権の準決勝進出選手たちを相手に、0-0の引き分けに持ち込んだ。

メッセージは明確だ。「今を生きろ」

前半は、基本方針を固持するものだった。明らかにリスキーな高いディフェンスラインでプレーしており、時に裏目に出るかと思われた。しかし、再三にわたって、アルゼンチンの司令塔は上手くパス回しができず、フォワードはオフサイドに引っかかった(試合終了までに、2018年ロシア大会の全試合より多くのオフサイドをとられた)。

メッシの落ち着き払ったペナルティキックにより、アルゼンチンがリードした時でさえ、サウジの自分たちのシステムに対する決意と信頼が揺らぐことはなかった。

滅多に得点を許さなかった長期にわたる数々の親善試合と、守りのフォーメーションを完璧にするための練習場での時間が実を結んだのだ。

ラウタロ・マルティネスがアルゼンチンに2点のリードをもたらしたと思われたが、VAR判定により1-0のままとなったことが、試合の流れを変えることになった。

サウジは、さらなるダメージを受けずにハーフタイムを迎えて、後半の戦略を立てる必要があった。

後半は、これ以上ないほど良い展開となった。

サウジアラビアは、相手が予想し得ず、また、可能だとも思わなかったようなやり方で、ひたすら相手を圧倒した。

まず、48分にサレー・アル・シェフリが自ら攻撃を先導し、左脚でのすばらしいボレーシュートによってエミ・マルティネスから得点を奪い、試合を同点に戻した。スタジアムに詰めかけたサウジアラビアのサポーターは歓喜に沸いた。ワールドカップでアラブ国家のゴールがこれほどの歓声に迎えられることは稀で、史上最も大きな歓声だったかもしれない。

しかし、信じがたいことに、5分後にさらに良い展開を迎えた。サレム・アル・ドサリのマルティエスをかわした曲線を描くシュートは、2022年カタール大会のゴールのひとつとして歴史に残るだろう。

その後は、サウジチームが素晴らしいディフェンスと粘り強さを見せた。アルゼンチンがなんとかチャンスを作り出しても、ゴールキーパーのモハメド・アルオワイスの一世一代の好守備に阻まれた。

アル・ドサリによるゴールから約50分後、数多くの瀬戸際でのタックル、クリア、セーブの末、ついにレフェリーが試合終了を告げた。

1994年アメリカ・ワールドカップのベルギー戦でサイード・アル・オワイランがセンセーショナルな決勝弾を叩き込んだ時が、長らくサウジアラビアサッカー史上最高の瞬間だったが、いまやそうではない。

大会開始前には、サウジアラビアのグループステージ第2戦のポーランド戦が、難しくはあるが、勝ち点を獲得する最大のチャンスだと目されていた。アルゼンチン戦に望みを持つ声はなく、ルナール監督の「高潔なパフォーマンスを見せること」に関する試合前の言葉も、ダメージの抑制をほのめかすものだった。

監督と選手たちを疑うとは、我々はなんと間違っていたのだろう。

4年前に、最終的にスペイン、ポルトガル、イランのグループステージでの敗退に終わったモロッコの果敢な挑戦を監督したルナール監督は今、サウジアラビアを間違いなく難しいグループからベスト16に連れて行くまで、あと3点(1点かもしれない)のところに来ている。

強豪アルゼンチンを下したサウジアラビアは、続いてポーランドとメキシコにも衝撃を与えることができるだろうか。

彼らの敗北に賭けるのは勇気がいるだろう。

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