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日本の宇宙機関、惑星間探査の新たな幕開けを告げる

アラブニュース・ジャパンのオンラインインタビューを受ける、はやぶさ2のプロジェクトマネージャー、津田雄一氏。 (ANJP Photo)
アラブニュース・ジャパンのオンラインインタビューを受ける、はやぶさ2のプロジェクトマネージャー、津田雄一氏。 (ANJP Photo)
スペースドームに展示された小惑星探査機「はやぶさ2」。(JAXA)
スペースドームに展示された小惑星探査機「はやぶさ2」。(JAXA)
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27 Apr 2022 12:04:35 GMT9
27 Apr 2022 12:04:35 GMT9
  • JAXAの津田雄一氏が小天体探査、サンプルリターンミッションにおける日本の専門技術について語る
  • サウジアラビア宇宙委員会は、UAEと同様に、間もなく地球外生命探査を開始する可能性が高い

カーラ・シャハルー

ドバイ:宇宙飛行士が最後に月面を歩いてから半世紀が経ち、地球外生命に関するデータ収集に力を入れるサウジアラビアをはじめとするいくつかの国々の中で、日本における宇宙探査の新時代が幕を開けようとしている。

日本の小惑星探査機「はやぶさ」は、2005年に「イトカワ」にタッチダウンし、初めて小惑星の塵を地球に持ち帰った。2019年2月22日には最初のミッションの後継機である日本の宇宙船「はやぶさ2」が小惑星「リュウグウ」の表面へのタッチダウンを達成し、サンプルを回収した。

UAEは、2020年にホープ探査機を打ち上げ、アラブ初の惑星間探査機で赤い惑星に到達した5番目の宇宙機関となった。

またサウジアラビアは、経済の多様化を加速、研究開発を強化、世界の宇宙産業への民間部門の参加を促進することを意図した、2018年の勅令により発足したサウジアラビア宇宙委員会(SSC)が宇宙開発を代表する。

アラブニュース・ジャパンは独占インタビューで、宇宙航空研究開発機構の津田雄一氏に日本の将来の計画について語ってもらった。津田氏ははやぶさ2のプロジェクトマネージャーであり、JAXA史上最年少でこうした要職に就いた人物でもある。同氏は、リュウグウ探査に関わるプロセス、それが初期の太陽系で地球がどのように形成されたかを科学者らが理解するためにどの役立つか、さらにプロジェクトの実行に伴う課題を概説した。

津田氏は、2003年に宇宙科学研究所(ISAS)の准教授に就任し、そこで最初のはやぶさプロジェクトに配属された。同氏は宇宙船のシステム・運用エンジニアを務め、しばしば宇宙ヨットと呼ばれる世界初のソーラーセイル宇宙船の実現に多大な努力を払った。

在職中、津田氏は薄くて柔軟な大型太陽電池の鍛造方法と展開機構を発明し、その後ソーラーセイルミッションのサブリーダーとなった。2007年、はやぶさ2ミッションの構想中、津田氏は主任技術者としての役割を任された。

打ち上げ後、同氏はプロジェクトマネージャーに任命された。宇宙船開発に広く関わっていたにもかかわらず、同氏は控えめに、誰もが望む地位に就けたのは単なる「偶然」だったと語った。


宇宙科学研究所/JAXA管制室で、はやぶさ2のプロジェクトマネージャーを務める津田雄一氏。(JAXA)

はやぶさ2は、2014年に種子島宇宙センターからH-IIAロケット26号機で打ち上げられ、地球と火星の間で太陽の周りを回る直径900メートル強の小惑星であるリュウグウからサンプルを採取した。

津田氏は、小惑星や彗星からのサンプルを目的とした小天体探査は、ISASの活動の主要な柱の1つであると説明した。「日本には宇宙科学と惑星間ミッションの長い歴史がありますが、この分野で約20年間の探査を経て、2010年にようやく宇宙探査が私たちの強みであると言えるようになりました。これは、リソース制約の中、最大限の成果を得るために私たちのポートフォリオを最適化した努力の結果です」と同氏は述べた。

「ISASは、限られた予算で、小天体探査に注力してきました。20年前まであまり学術的な関心を集めていなかった小天体は、低重力であり地球に近いということから、現在では特に注目されている分野です。はやぶさの打ち上げは初めての惑星間往復ミッションであり、現在非常に注目される分野となった小惑星・彗星の惑星科学を刺激しました」と津田氏は付け加えた。

津田氏は、はやぶさ2の物語を「宇宙科学や宇宙探査に対するJAXAの姿勢を説明する典型的な例」として説明し、小惑星への関心の高まりは、小惑星が惑星形成の名残であるという考えから来ていると述べた。

それらの小惑星は、45億年前の古代の太陽系がどのようなものであったかについての情報を保持しており、生命の起源についての手がかりを得るのに役立つ。こうした情報は、地球や木星のような完全に進化した大きな天体からは完全に得ることはできない。

太陽系内で発見された120万個の小惑星のうち、地球から3億キロ以上離れたリュウグウを探索するというこの決定には、さまざまな理由がある。

1つ目の理由は、太陽系内の小惑星の位置と地球との関係性である。津田氏はその理由を詳しく説明して、地球のような惑星を議論する上でのキーワードは、火星と木星の仮想境界を指す「スノーライン」であると述べた。

スノーラインを超えると水は氷の形で存在することができるが、太陽に近いスノーラインの内側では、水は蒸発する。つまり、スノーラインの内側にある惑星は乾燥しており、その外側にある惑星には水がある。とはいえ、スノーラインの内側に位置し、それゆえ乾燥した惑星であるはずの地球にはたくさんの水が含まれる。

これは事実であるので、水は地球に持ち込まれ、居住可能になったに違いないと考えられている。そこで、津田氏によると、スノーラインの外側に生まれた小天体が水を運ぶカプセルの役割を果たしたという仮説が立てられている。

リュウグウは現在、スノーラインの内側に位置しているが、以前はスノーラインの外側に存在していたと理論化されており、これは極めて稀であり、重要でもある。「スノーラインの外側にある小惑星から戻ってきたサンプルを、地上で分析するために持ち帰り詳細に分析することが、その物語を解読する最良の方法です。

「小惑星からサンプルを持ち帰るのは簡単ではありません。地球外惑星からのサンプル回収を達成するためには、多くの挑戦的で非常に洗練された技術が必要です。これがはやぶさ2ミッションのシナリオです」と津田氏は述べた。

リュウグウを探査するという決定の背後にある2つ目の理由は、地球の近くにあるため、往復航行が成功する可能性が高まることだ。「リュウグウはスノーラインの内側にあり、非常に地球から近いため……そこに行くのは簡単で、往復も容易です」と津田氏は述べた。

3つ目の理由は、リュウグウはC型、すなわち炭素質小惑星であり、有機物として知られる炭素分子と含水鉱物が多く含まれていることである。このような分子は、小惑星が地球に生命をもたらした有機物を植え付けた可能性を示す。

「豊富な有機化合物と含水鉱物、すなわち炭素と水を含むリュウグウのサンプルを入手することで、生命の起源についての手がかりを得ることができるかもしれません。すでに回収サンプルを調査して、有機化合物の手がかりを得ており、サンプル中に水が存在することを確認しています。

「その意味では、私たちはすでに得られた結果に満足しており、リュウグウがどのように生まれたのか、また太陽系がどう進化したのかを教えてくれる、リュウグウサンプルの特定の化合物や組成に興味を持っております。また何らかの形で地球上の生命の起源を(究明)できるかもしれません」と津田氏は語った。

このミッションに伴うリスクを軽減するための綿密な計画にもかかわらず、津田氏はリュウグウへの最初のタッチダウンへのプロセスには「紆余曲折」があったと説明した。リュウグウは、この小惑星全体に散らばった岩で覆われており、着陸作戦の戦略変更を余儀なくされた。

はやぶさ2は、数多くの精度性能試験を受け、世界中の同僚らと打ち合わせを行い、ミッションを4ヶ月遅らせた後、リュウグウへの2回のタッチダウンに成功した。このときにいくつもの「世界初」を達成したが、そのうちの1つは宇宙船1機で2回の着陸に成功したことだ。また、はやぶさ2は小惑星表面に銅のプロジェクタイルを発射し、散乱したサンプルを採取して、太陽系の天候にさらされていなかった小惑星の塵を確実に獲得し、その地質学的歴史の徹底的な分析を可能にした。


はやぶさ
2の小惑星リュウグウの表面への最初のタッチダウン。(JAXA)

「探査とは、予期せぬ事態が起こりうる未知の場所に足を踏み入れることです。科学は予期せぬ事態から進化したので、挑戦は重要です。(そして)挑戦を避けるならば、私たちは何者にもなれないままです」と津田氏は述べた。

直面した課題について詳述する中で、津田氏は、このミッションがいくつかの課題に直面したと述べた。同氏はまた、利用可能なリソースを活用し、弱点を強みに変えることなど、宇宙探査における成功の達成に役立ったユニークな視点を披露した。

「予算が少ないからといって、必ずしも成果が減るとは限りません。予算が少ないということは、より多くのリスク、または予算レベルに見合ったリスクを冒すことができるということです。

「そこで、2回目のタッチダウンを試さないリスクと、試すリスクを検討しました。サンプルカプセルの回収は、世界がパンデミックの暗雲に覆われる中でさらなる挑戦となりました。私たちのチームと機関の回収に向けた明確な意志が、その成功につながりました」と津田氏は述べた。

最終的に、日本はリュウグウから入手した小惑星の塵が入ったカプセルをオーストラリアの奥地から回収し、6年間のミッションを無事に完了した。JAXAはカプセルの中身の15%を世界中の科学者に配布し、60%を将来の世代のために保管した。


はやぶさ
2が小惑星リュウグウから回収したサンプル。(JAXA)

今回のサンプル共有は、同機関が実施した共同アプローチを具現しており、「宇宙競争」を過去の概念としている、宇宙科学に対する新しい視点を示す。「現在の宇宙は、『宇宙競争』というよりはむしろ協力関係にあるので、協力できる人や国が増えているのは良いことです」と津田氏は述べた。

同氏はサウジアラビアのような国々の努力を歓迎した。

「国力のある国が、その国力に(見合った)方法で宇宙活動を行うことは良いことです。国際協力はとても刺激的な目標です。サウジアラビアが、サウジアラビア自体の、総じて人類の、英知の発展に貢献することを期待します」と津田氏は語った。

 JAXAは、2022年の月面着陸、2023年の彗星フライバイミッション、2024年の火星衛星サンプルリターンミッションなど、野心的な今後のミッションで、宇宙探査、技術、科学の物語を続けていく。

これらの計画は、宇宙に関する人間の知識の進歩を可能にするため、小さくても可変的な焦点で、この分野に貢献するという同機関の決意を示しており、達成までにはまだ長い道のりが待つ。

 

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