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イスラエルに接近する日本は、中東和平プロセスにおいて中立的であるという評判を維持できるのだろうか

日本・イスラエル関係に詳しい別の専門家は安全保障と自国防衛の重要性が増すにつれ日本はイスラエル側に接近しているという。(AP)
日本・イスラエル関係に詳しい別の専門家は安全保障と自国防衛の重要性が増すにつれ日本はイスラエル側に接近しているという。(AP)
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21 Dec 2022 03:12:03 GMT9
21 Dec 2022 03:12:03 GMT9
  • 政府の外交政策への傾斜を鑑みるに、日本は中東和平プロセスの中立的存在としての評判を維持できるだろうか

カルドン・アズハリ

東京: 日本はイスラエルと緊密な防衛関係を築こうとしており、中東和平プロセスにおける中立的な存在としての評判は落ちている。イスラエルの攻撃的な政策やアラブの土地を力づくで併合することに対し、日本政府は見るからに軟弱な態度だと外交官等は言う。

このアジアの経済大国の政策転換は当然のごとくパレスチナ人だけでなく、アラブ世界全体の人々に不安を与えている。リクードのベテラン政治家ベンヤミン・ネタニヤフ首相がイツハク・ヘルツォグ大統領にイスラエル第37代政権の樹立準備完了を告げるまで、あと2日足らずだ。

イスラエルの新連立政権では極右政治家のイタマル・ベン・グヴィル氏が占領下のヨルダン川西岸における権限を拡大した警察省のトップに就くとみられている。ベン・グヴィル氏の国家安全保障大臣就任の内定はイスラエル国内でも論議を巻き起こしている。というのも1994年にヘブロンのイブラヒミ・モスクでテロを起こした過激派ラビのメイル・カハネを過去に支持しているからだ。カハネはこのテロ事件でパレスチナ人29人を殺害、150人を負傷させている。

そんな中、駐日パレスチナ大使のワリード・シアム氏はイスラエルとの二国間協力に熱心な日本の姿勢には負の側面もあると注意喚起している。

「もちろん日本は何をするのも自由ですが、そのような政策はイスラエルが得するだけで、パレスチナ人への敵対行為をやめさせることにはなりません」と同氏はアラブニュース・ジャパンに語った。

シアム氏はベン-・氏に言及し、「イスラエルの(次期)閣僚の一人が悪名高いカハネの組織に属していることは衝撃的です。この組織は過去にヘブロンのイブラヒミ・モスクや周辺地域で祈りを捧げていたパレスチナ人を殺害しています」

これは「各国と交わしたアブラハム合意を顧みず、イスラエルはパレスチナ人との和平や二国家解決策(公約)を遵守するつもりがない」ことを示しています。

シアム氏は目下に迫るネタニヤフ首相の政権復帰を「壊滅的なニュース」と言う。

同氏はアラブニュース・ジャパンに次のように語った。「ネタニヤフ首相は1期目と2期目に(パレスチナ国家樹立に関し)『ノー』と言いました。そして今、イスラエル政府を率いる立場も3期目になりますが、首相はいまでも『ノー』と言っているのです」

「パレスチナの指導者は長年イスラエルとの二国家解決に合意の立場で、妥協点を見出すことに大きな意欲を示してきました」

「しかし、イスラエルが違法入植地を拡大し、パレスチナの土地を併合し続けていることは我々パレスチナ人がアパルトヘイト軍事政権下で組織的な抑圧を受け、残忍に扱われ差別されていることを意味しているのです」

ユダヤ人入植者がパレスチナ人に暴力を振るうことを許し、パレスチナ人を強制退去させて家を取り壊し、パレスチナ人居住区を併合することを通じてイスラエルは「国際法も国連決議も尊重しない」ことを行動で示しているのだとシアム氏は言う。

世界が「イスラエルが得するようなことをして、協力し、市場をイスラエルに開放する限り、イスラエル人は二国家解決について何ら行動を起こす動機がありません」とシアム氏は補足した。「こうした状況を踏まえ、イスラエルがパレスチナ人に対して日々行っている違法行為の責任の一端が国際社会にもあるのだと自覚しなければならないと思います」

シアム氏の見解では、関連する国連決議の執行を国際社会が怠ったことが原因だと考えている。「我々は、国際社会がイスラエルを国連決議に遵守させるための適切な措置を検討することを、最も強い言葉で望み、訴えます」と同氏はアラブニュースに語った。

パレスチナのムハンマド・シュタイエ首相は最近、7週間前の選挙でイスラエルの大連立政権がネタニヤフ首相の右派宗教連合に敗れたことの意味を過小評価していた。

「イスラエルの各政党にはペプシとコーラくらいしか違いがありません」とのシュタイエ首相の発言がパレスチナのメディアで引用されている。「我々はイスラエルの選挙で和平に向けたパートナーが誕生するなどという幻想を抱いたことなどありません」

同首相は国政選挙におけるイスラエルの極右・宗教の各政党の獲得票数増は「イスラエル社会における過激主義と人種差別の顕在化による当然の帰結です」と述べた。

火曜日、日本の林芳正外相は次のように述べた。「我々としては、イスラエル政府に対し現状を一方的に変更するような行為を控えるよう強く求めます」

「一般的に武力占領した領土や一方的な併合は国際法上、認められません。この観点から日本はイスラエルによるゴラン高原併合を認めない立場を取ってきました。それが一貫した日本の立場です。ですので、イスラエルとパレスチナの紛争は当事者の交渉による(解決を目指す)二国家解決であるべきです」

ちなみに日本はイスラエル、ヨルダンとの地域協力を通じパレスチナの経済的自立を目指す「平和と繁栄の回廊」構想を打ち出した。

日本は次の3原則に基づき、パレスチナへの支援を拡大してきた。第一に両者に対し政治的に平等であること、第二にパレスチナの国家建設努力を支援する、第三に両者の間に信頼を醸成するような措置をとることだ。

2022年6月現在、日本の支援は1993年以来、パレスチナ難民支援やガザ地区情勢に応じた支援など22億1000万ドルにのぼる。日本は別途、ガザへの人道支援と復興支援として2,300万ドルも提供している。

2021年までにパレスチナの民間企業18社が旗艦プロジェクトのジェリコ農業工業団地で操業している。また、日本は「パレスチナ開発のための東アジア協力促進会合」を通じて東アジア諸国の資源と経済開発の知見を結集し、パレスチナの国づくりを支援している。

中東和平プロセスに対する日本のアプローチの基本的な要素は変わっていないかもしれないが、最近、東京では利己主義からイスラエルを賞賛する動きが増える兆しがある。

日本の外務省は2022年の外交青書で「イスラエルは先端技術開発やイノベーションに優れ、日本経済と中東の安定にとって重要な存在である」と述べている。

また、「イスラエルは2021年にCOVID-19のワクチン接種先進国として世界から注目を集めた。同国は世界各国に先駆け一般市民向けの3回目接種を開始した」と続けている。

日本とイスラエルの外相は2021年7月に「東北-イスラエル・スタートアップ・グローバルチャレンジ・プログラム」をキックオフした一方、ベニー・ガンツ前イスラエル国防相は今年初めに日本側と会談し、新たな軍事・安全保障協力に合意している。

日本はアブラハム合意を支持することで、一部のアラブ諸国がイスラエルに接近することになるものの、日本政府は中東の安定とその先の保証人という立場を手にできると観測筋は言う。しかし、すべての専門家がこれに同意しているわけではない。

「日本政府は現在の流れ、つまりアブラハム合意の支持は考えていません。なぜなら日本の中立性を損なうことになるからです」と中東問題に詳しい日本人専門家はアラブニュース・ジャパンに話す。

「しかし、このようなアプローチはアラブ人とイスラエル人の和解を目指す日本の目標に沿うものだという意見もあります」

日本・イスラエル関係に詳しい別の専門家は安全保障と自国防衛の重要性が増すにつれ日本はイスラエル側に接近しているという。

「パレスチナは日本の安全保障に協力できませんが、イスラエルにはそれができるのです」と同氏はアラブニュース・ジャパンに話した。

また、イスラエル大使館主催の二国間関係樹立70周年記念レセプションには「防衛省職員が多く出席していました」と同氏は続けた。

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