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米国が殺害のイラク人司令官の墓が新たな反米の橋頭堡に

イラクの民兵組織指導者アブー・マフディー・アル=ムハンディス氏の墓所は聖廟に準じる扱いとなっている。(AFP)
イラクの民兵組織指導者アブー・マフディー・アル=ムハンディス氏の墓所は聖廟に準じる扱いとなっている。(AFP)
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23 Feb 2020 04:02:45 GMT9
23 Feb 2020 04:02:45 GMT9

【イラク・ナジャフ】イラクにあるシーア派の聖地ナジャフ。そこにある世界最大の墓地の外に一台のマイクロバスが停車した。5人の女性が降りると、携帯電話のカメラであたりを撮影しながら、興奮したようすで墓へ向かって駆け出した。

黒装束の彼女たちは、今もその規模を広げている墓地ワーディ・アッサラーム(「平和の谷」の意)でむせび泣きながらみずからの胸を叩いている男女の群れに加わった。

その場にいる者たちの目はすべて、イラク民兵組織の指導者だったアブー・マフディー・アル=ムハンディス氏の墓へ向けられていた。

1月3日の米軍によるドローン攻撃でガーセム・ソレイマニ司令官とともにバグダッドで死亡したアル=ムハンディス氏はいま、反米抵抗運動に殉じたシンボルとして崇められている。

同氏の墓は米政府への復讐を誓うシーア派信徒らを吸い寄せる場所となっている。

等身大の遺影のもとでは、一人の若い男性が同氏の墓前にひざまづいていた。女性らの嗚咽が周囲に響き渡る。

「アメリカに神の報いのありますよう」。男性が声を上げる。

アル=ムハンディス氏の墓所は「平和の谷」の第9側廊沿いに位置し、聖廟に準じる扱いとなっている。

預言者ムハンマドの義理の息子であるシーア派初代イマーム・アリーの墓廟を訪れるため日々ナジャフ入りする何万という巡礼者らもここに立ち寄るようになっている。

墓所を守るアッバース・アブドゥル・フセインさんは語る。「ただの墓ではありません。もはや聖廟といえます」

「大人も子供も男も女も……、イラン、レバノン、バーレーンと、各地から大勢がアル=ムハンディス氏の墓へ毎日訪れています」

米政府がイラクにおける敵の筆頭とみなしたアル=ムハンディス氏は、イラク国内に張りめぐらされた軍事組織「人民動員隊」の司令塔だった。

同氏はソレイマニ氏のイラク国内での懐刀であり、イラク政府は同氏を国内の親イラン勢力を代表する人物とみていた。

バグダッド空港近傍で米軍がアル=ムハンディス氏とソレイマニ氏を爆殺したことは、イラン政府および、「抵抗の枢軸」と呼ばれるイラン・イラク・イエメン・レバノンの勢力にも痛烈な打撃となった。

イラク国内の武装勢力各派は一様にアル=ムハンディス氏の死への報復を誓っている。うち最強硬派はイランが資金援助し軍事訓練や軍備の提供をおこなっている。

イラク駐留米軍5,200名は恐るべき報いをあがなうことになる、としている。

が、暗殺からほぼ2か月が経った今も、1月8日にイランがミサイル攻撃をした以外、これといった反応は特にない。

平和の谷以外に、バグダッド空港エントランスにもアル=ムハンディス氏の没した地として小規模な祭壇が設けられている。

全身黒装束のウム・フセインさんは、イラク南部のバスラから墓地参拝のため450キロの道のりを歩いたと語った。

「初代イマーム・アリーのもとを訪れる際には、英雄であり殉教者であるアル=ムハンディス氏のもとにも必ず立ち寄るのです」と彼女は言う。

「それは定めです」

朝早くから日暮れ過ぎまで、墓地入り口には参拝者を乗せたマイクロバスがひっきりなしにやって来る。

アル=ムハンディス氏の墓前に立ち珠の涙をこぼしているスアードさんもまたバスラから来たと語り、「イスラム国」を「敗北させた英雄」の参拝に来た、とする。

「彼の死は、私たち、また人民動員隊全体にも大きな影響を及ぼしています」

平和の谷は、2014年から17年にかけて人民動員隊が「イスラム国」と戦った際の無数の殉死者らの永眠の地でもある。

アル=ムハンディス氏は、2003年の米国主導によるイラク侵攻のはるか以前から激越な反米姿勢で知られていただけに、復讐の旗印となったのだ。

アル=ムハンディス氏は1983年に起きた駐クウェート米仏大使館への爆破テロに関与したとして告発された人物であり、イラク国内では人民動員隊を統括しイラク国軍へ統合させた。

同氏は民兵のほとんどをイラク正規軍に編入したが、一部は民間にとどまっている。米軍の人員を攻撃したと米政府が難じているのもこれらの民間に残った勢力だ。

ソレイマニ氏の故地ケルマーンから来たというイラン人レザー・アバーディーさんは、そのほかのシーア派軍事組織の指導者らの墓の横に立ち、アル=ムハンディス氏への賛辞を送った。

アバーディーさんは語る。「イラン人もイラク人もともに敬愛するこの人物に敬意を表するために訪れました。ソレイマニ氏とアル=ムハンディス氏という二人の殉教者の記憶は永遠に忘れ去られることがありません」

AFP

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