ナジア・フサリ

ベイルート:コロナウィルス感染病（COVID-19）に対する闘いの中、レバノンがマスクの使用をめぐって分裂している。この病気の拡散を制限する上でのマスクの有用性に関し、政府と医療専門家の意見が分かれている。

同国ではコロナウィルス感染により17人の死者が報告されている。確認されている感染者数は520人に上り、この24時間で新たに12人増えた。先月の3月15日、政府はウィルスの拡散をチェックする措置を課した。この措置には社会的距離戦略と、マスクおよび手袋の着用が含まれる。

しかしTVインタビューで医者たちは、外出中のマスク着用を止めるよう人々に呼びかけた。安全性と手指衛生について間違ったメッセージを送ることになるからだという。

「スーパーマーケットや銀行に行く時や自動車運転中のマスク着用を義務付ける通達を考慮し、1人の客が1週間に平均7枚のマスクを購入しました」と、薬剤師のロバート・テンはアラブニュースに語った。

彼は、レバノン通貨に対する米ドルの上昇がマスク価格の大幅な値上がりにつながったと述べた。「50枚入りのマスク1箱が100,000レバノンポンドで売られています。以前は15,000レバノンポンドを超えることはありませんでした。普通のマスクのことで、N95Kではありません。N95Kは正しく使用すればコロナウィルスや他のウィルスをより厳密かつ効果的に防ぎますが、手洗いに代わる効果的な手段はありません」

中国のマスク輸出再開を受け、レバノンは中国からの輸入を再び始めたと、彼は付け加えた。

「これらはレバノンで現地製造された新しいタイプのマスクです。輸入品よりも安価ですが、医療基準には不足しています。そのため人々への販売用にそれらを購入することはしません。これらは個人的な努力によって作られたもので、一部にはウィルスが通り抜けてしまう布製のものもあります」。レバノンでは多くの種類のフェイスマスクが登場し、軍服に似合うカーキ色や治安部隊向けの黒など、さまざまな色やデザインのものが見られた。また、政党のロゴが入ったマスクもある。

ナバテアの報道機関に勤めるサマー・ウェーベは、政党のスローガンが印刷されたマスクが市販されていると述べた。アマル運動が、同運動の色である緑色のマスクの着用を促進していると言う。「今後はスローガンを印刷したマスクを使う可能性もあります」と、彼は付け加えた。

南部の郊外に住むハッサンは、「露天商が色付きマスクを低価格で売っていますが、それらのマスクは品質が非常に低い」と述べた。

彼は各政党が現地で製造されたマスクにスローガンを使用する可能性については排除しなかったものの、「ただ、そのようなマスクを公に使うことについては、みんな少し恥ずかしさを感じます」と、付け加えた。

国内治安部隊理事会は土曜、ルーミエ中央刑務所の受刑者を撮影した動画をツイートした。動画の中では受刑者たちが、治安部隊と囚人が必要な時に使用する医療用マスクを作っていた。

他にもマスク作りを始めた者たちがいる。

建築家エドガード・メクサスは目・鼻・口を保護するスエーデン式のデザインがあると述べ、オフィスの3Dプリンターを使ってそれを再現した。

「2時間ごとにマスク1枚を製造していたロボット風の機械が、技術の開発により48分以内に製造できるようになり始めました」と、メクサスはアラブニュースに話した。

このマスクは顔全体を覆う透明なプラスチックの部品で構成されており、頭を囲むプラスチックのアーチに取り付けられる。メクサスは、彼のマスクにはウィルスが付着するスポンジ素材が含まれておらず、ウィルスを伝染させないことを証明する医学的な証明書も取得していると述べた。

メクサスのプリンターは24時間稼働し、1日に155枚のマスクを製造している。それらの製品は beiruting.com にて通常価格で販売されている。

彼はレバノン歯科医師会に連絡を取り、マスクに必要な原材料の十分な購入費を寄付してもらうことを前提に、それらのマスクを配布した。

メクサスは他の人たちも無料で恩恵を受けられるように、自分の経験をオンラインで共有している。「今は社会が一致団結し、社会の安全を確保する意識を高める時です」と、彼は付け加えた。

一方で、コロナウィルスに襲われた国々から帰国するレバノン人国外居住者を乗せた飛行機が日曜にレバノンに到着することになっており、当局は検疫の計画を立てようとしている。

本国帰還の取り組みはウィルス検査手続きに関する懸念と、関連する帰国者が大量なことから遅れが生じていた。また、帰国する国外居住者たちに割り当てられた隔離検疫所があるコミュニティーのレバノン人住民たちにも、健康リスクをめぐって恐怖心が高まっていた。