• ガリバフ氏は近隣諸国および「困難な時期にわが国の友人であり、意義ある戦略関係も分かち合う大国の数々」との関係改善を求めた。なお、具体的な大国の名前は示さず

【テヘラン】5月31日、イラン議会の新議長が米国といかなる交渉をしても「無益」と発言した。また、全米を覆う暴力的な抗議活動に発展した黒人男性の死についても非難した。

モハンマド＝バーゲル・ガーリーバーフ（以下ガリバフ）氏は元革命防衛隊空軍司令官だ。今年2月の総選挙の結果超保守派が多数派を占めたイランの国会で、先月28日に議長に選出された。

陣容の改まった議会の冒頭演説で新議長は、イラン国会は「世界的な傲慢不羈の枢軸たる米国との交渉、また米国の融和政策なるものは無益かつ有害とみなす」とした。

ガリバフ議長はまた、革命防衛隊対外工作部隊のガーセム・ソレイマニ司令官が1月に米軍のドローン攻撃によって殺害されたことにも言及、復讐を誓った。

同議長は議員らを前に「テロ国家アメリカと立ち向かうわが国の戦略は、殉教者ソレイマニの血であがなうことにより達成される」と語りかけ、「中東地域から米テロ軍を完全に排撃する」ことを誓約した。

ガリバフ氏はまた、丸腰の黒人男性ジョージ・フロイドさんがミネアポリスで逮捕執行中に殺害されたことにも言及、米国を難詰した。抗議活動は米国全土に拡散するにいたっている。

フロイドさんはミネアポリス警察のデレク・チョーヴィン警官に9分近く首根っこを膝で押えられたすえに亡くなった。これを受け、より罪の重い第1級殺人罪および関わったほかの警官らの逮捕も求める数万人規模の抗議活動がニューヨークからシアトルにいたる路上で展開している。

米イラン関係は数十年にわたり張り詰めているが、昨年以来緊張が高まっている。2度にわたって直接対峙の瀬戸際にまでいたったかのような事態も、この不倶戴天の敵同士である両国の間には持ち上がった。

緊張が高まりだした2018年は、ドナルド・トランプ米大統領が関係改善の象徴である核合意から脱退、イラン経済に壊滅的な打撃を与える制裁をふたたび加えはじめた時期となる。

こうした流れのすえ今年1月、イランで絶大な人気を誇ったソレイマニ氏を米国がバグダッド近郊の空港でドローン攻撃により殺害するという事件が起きたのだ。

数日後、イランは報復措置としてイラク駐留の米軍にミサイルを連発した。トランプ氏はこれに対応する一切の軍事攻撃を選択しなかった。

ガリバフ氏は近隣諸国および「困難な時期にわが国の友人であり、意義ある戦略関係も分かち合う大国の数々」との関係改善も求めた。なお、大国がどこであるかは触れなかった。

ガリバフ氏は58歳。2017年の前回大統領選で現職のハサン・ロウハーニー（ロハニ）大統領に敗れたほか、過去大統領選に3度出馬している。

今回新たに国会議長に選出される以前は、テヘラン市長や警察組織のトップも務めた。

5月30日のツイートでは、米国は「政治・司法・経済に不正がはびこる構造だ」とし、これを難じている。

同氏はさらに、「こうした構造が数百年にわたり、世界へと戦争・政変・貧困・無分別・拷問・同胞殺し・モラル崩壊を送り出し、米国自身にも人種差別・飢餓・恥辱、さらには『膝で押さえつけて窒息死させること』のようなことまでもたらしているのだ」とツイートしている。

イラン外相のモハンマド＝ジャヴァード・ザリーフ（ザリフ）氏も、ツイートでこれに応えた。

「（ハッシュタグ #BlackLivesMatter に代表されるような）黒人差別反対運動など歯牙にもかけぬ者もいる。そうではない側の人たちに述べたい。人種差別撤廃のため全世界が戦いを挑む機はいまや熟している。いまこそ #WorldAgainstRacism の秋だ」とザリフ氏はツイートした。このツイートに添えられた画像は、マイク・ポンペオ米国務長官が2018年に出した声明だったが、そこでイランを名指して批判した部分は米国に書き換えられている。

書き換えられたテキストではこうなる。「米政府は国民の富を散財している」

「米国民は、人種差別や不正腐敗、自国の指導者らの無能に飽き飽きしている。その声は世界に届いている」。ポンペオ氏もザリフ氏にツイートで応じた。「君たちは同性愛者を吊し、女性に石を投げ、ユダヤ人を根絶やしにしているではないか」。それ以上は触れなかった。

AFP