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糖尿病と肥満症の高比率がGCC諸国のコロナ対策を難しくしている

心臓疾患、糖尿病、肥満症などの合併症をもつ患者は新型コロナウイルス感染が重症化するリスクが高くなる。(シャッターストック)
心臓疾患、糖尿病、肥満症などの合併症をもつ患者は新型コロナウイルス感染が重症化するリスクが高くなる。(シャッターストック)
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03 Jun 2020 07:06:05 GMT9
03 Jun 2020 07:06:05 GMT9
  • 研究で2型糖尿病患者は新型コロナによる致死率が2倍に高まることが判明した
  • 糖尿病と肥満症を併せ持つ人々には免疫系の機能不全があり、それが危機的に作用する

カリン・マレク

ドバイ:新型コロナウイルス感染症が大惨事をもたらすなか、二重の縛りが湾岸諸国の医療専門家たちを憂慮させている。増加する糖尿病や肥満症と、この集団がパンデミックにより直面する致死率の高さである。

国際糖尿病連合(IDF)によれば昨年、中東および北アフリカ(MENA)地域の20歳から79歳の成人3900万人以上が糖尿病に罹患していた。2045年までにはこれが1億800万人に増えると推定される。

『IDFアトラス』は、アラブ首長国連邦の20歳から79歳の成人の15.4%が糖尿病患者であることを示しており、バーレーンでは19.6%、クウェートやカタールでは20%に数値が伸びる。

サウジアラビアでは、15%の成人が糖尿病であり、慢性病になる寸前の未診断や糖尿病前症の患者がそれよりはるかに多くいると考えられている。

これらの数値はこれ自体が憂慮すべきものだが、より懸念されるのは、コロナ禍ではある集団がより高いリスクに直面しているという事実だ。

インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究によれば、2型糖尿病患者はそうでない人々に比べて新型コロナによる致死率が2倍となることが明らかになった。

研究ではまた、1型糖尿病患者の新型コロナウイルス感染症による致死率は3.5倍であることも判明した。

なぜこのような致死率をもたらすのか。ドバイのDNAヘルスコーポレーションのナスル・アル・ジャフリ医師によれば、ウイルスが免疫系の「インフラマソーム」という部分を刺激することで死につながる可能性が出てくるのだという。

「これはよく免疫系の誘発性炎症反応を無制御に開放してしまうことになり、それにより(体が侵入してきたウイルスではなく、自らの細胞を攻撃し始める)『サイトカインストーム』と言われるものを引き起こします。その結果、心臓や肺に重大かつ不可逆的な損傷を与えることにもなり得るのです」とアル・ジャフリ氏はアラブニュースに語った。

「糖尿病と肥満症の両方を抱えている人々は、これと同じ『インフラマソーム』の慢性的活性化を起こしていることも知られています。

従ってこれらの人々は、既に述べた炎症性サイトカインカスケードを引き起こすリスクが高くなり、最終的には人工呼吸器を必要とするリスクや、死亡のリスクも高くなるというわけです」

クウェートに拠点をおく臨床栄養士のハディジャ・カパシ氏は、糖尿病患者が直面する問題は、ある「最悪の結果」だという。

「心臓疾患、糖尿病、肥満などの合併症を抱える患者は、新型コロナ感染症が重症化しやすく、糖尿病患者はウイルスが対処を困難にしてしまうために特に脆弱であるといえます」と彼女は述べた。

アル・ジャファリ医師やカパシ氏の懸念を繰り返すように、アブダビのシェイフ・シャフボウト・メディカルシティ病院・小児内分泌科部長のアスマ・ディーブ医師は、湾岸諸国では糖尿病が蔓延していることから新型コロナウイルス感染症のリスクは高いと述べた。

「糖尿病が新型コロナの症状をより深刻にし、死亡率を非常に高める可能性があります」と彼女は述べ、「肥満もリスク要因であると判明しています」と付け加えた。

糖尿病に加え、湾岸地域の糖尿病患者の半数は少なくともひとつ以上の合併症を患っているとの報告があるとカパシ氏は述べた。クウェートとサウジアラビアでは、5人にひとりが2つ以上の合併症を患っていると報告されている。

「サウジアラビアも肥満の上位15カ国入りしていますが、これが糖尿病を引き起こして重症化させるのです」とカパシ氏は述べた。「アラブ首長国連邦、バーレーン、サウジアラビア、クウェート、カタールは人口当たりの糖尿病罹患率が高い上位15カ国に入っています」

「糖尿病は新型コロナ感染症による入院や死亡のリスク要因です」とリヤドのキング・ファイサル特別病院研究センターの内分泌科教授であり小児科指導医でもあるバサム・ビン・アバス氏はアラブニュースに語った。

「サウジの成人の3人にひとり以上が肥満ですが、肥満も重度の感染症や糖尿病合併症のリスク要因です」

何がこれほど患者数を増加させているのだろうか。ニューヨーク大学アブダビ校の調査によれば、湾岸諸国の人々は糖尿病の遺伝子的疾病素質をもっている可能性があるのだという。しかし理由はそれだけではない。

「この地域の生活習慣病の急激な増加を懸念する専門家たちは、その原因を特定すべく歴史的・環境的要因に目を向けてきました」とカパシ氏は述べた。

そしてその原因は明確だと彼女はいう。「不健康な生活習慣と都市化です。バーレーン、クウェート、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦は今日、世界でも有数の豊かな国です。そしてこれらの国々の平均的市民のライフスタイルは、原油生産国となる前の時代とは劇的に異なります」

アフ・ジャファリ氏は、糖尿病患者の90%以上を占める2型糖尿病を、「生活習慣病」であると説明する。

「人口の多くが取り入れている現代的なライフスタイルは、この症状の根本にある『インスリン耐性』をつけるのに申し分のないストームになります」と彼は述べた。

「ファストフードや加工食品が過剰に手に入り、それに依存しています。生活習慣はほぼ椅子に座ってばかりで、暑い季節には得にそうなります」

すべての専門家たちが共通して主張するのは、いま必要なのは糖尿病患者たちの意識を高めることであり、この困難な時期において自身の健康状態を管理すべく教育や支援を提供することであるという。

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糖尿病患者は、血糖値を管理するために厳格で定期的な血糖値のモニタリングをするように言われる。

「空腹時だけでなく、より高くなると考えられる食後の血糖値も測るべきです」とドバイのアル・サファにあるメドケア・ホスピタルの内分泌科指導医であるアブドゥル・ジャバル医師は述べた。

「患者たちは、血圧や脂質をコントロールする薬を含む投薬スケジュールに厳格に従うことが必要です。彼らがウイルスに曝される機会を減らすために、可能なであればできるだけ電話で受診すべきです」と彼は述べた。

新型コロナ患者の糖尿病の治療は、血糖値の変動、敗血症の合併、糖尿病性ケトアシドーシス発症の高リスク、多臓器不全などでより困難になり得ると、ドバイのアル・ザハラ病院の内分泌科指導医であるビクラム・フンディア医師は述べた。

「インスリンを含む常用薬の適切なストックを確保しておくことは、医療制度の過重負担、薬剤供給の不足、移動制限などが障害となり得るこの時期には、極めて重要になります」と彼は述べた。

「雇い主たちは、糖尿病を患う従業員の感染リスクを最小化すべく、特別な労働環境を提供する必要があるかも知れません」と彼はアラブニュースに語り、湾岸協力会議加盟諸国は糖尿病患者たちが感染に曝されるのを防ぐための協調的かつ効果的な措置をとる必要があると述べた。

「糖尿病の管理を最適化し、健康な生活習慣を実施し、安全で健康に過ごすべく糖尿病管理チームと密接に連携することで、糖尿病患者が守られるのみならず、彼らがこのパンデミックを乗り越えたときにはより強く健康的でいることも可能になります」とフンディア氏は述べた。

中東諸国政府の多くが糖尿病や肥満症といった生活習慣病患者の増加への対策に取り組んでいるが、サウジ政府も、「サウジアラビア2030ビジョン実現プログラム」の一環である「生活の質プログラム」を打ち出している。

「この構想は、娯楽、スポーツ、文化活動への個人の参加を促すことによるライフスタイルの改善を通して、サウジの生活の質を向上させることを目的としています」とキング・ファイサル特別病院研究センターのビン・アバス氏は述べた。

「糖分の多い飲料への課税、フィットネス構想、予防的ケアの重視などといった措置が、感染症増加への対策措置としてすでにとられています」

ツイッター: @CalineMalek

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