Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter
  • Home
  • 中東
  • 洞窟に住むパレスチナ人家族、強制退去を迫られる

洞窟に住むパレスチナ人家族、強制退去を迫られる

ヨルダン川西岸(West Bank)で取り壊しを通告された家は、この家が初めてではない。だが、洞窟内に建てられた住宅としては初めてかもしれない。(AFP)
ヨルダン川西岸(West Bank)で取り壊しを通告された家は、この家が初めてではない。だが、洞窟内に建てられた住宅としては初めてかもしれない。(AFP)
Short Url:
11 Aug 2020 01:08:44 GMT9
11 Aug 2020 01:08:44 GMT9

パレスチナ、ファラシン村:アーメッド・アマルネ(Ahmed Amarneh)さんの住む家の木の扉を開けると、クッションの並んだ部屋が並ぶ。イスラエル占領下のヨルダン川西岸(West Bank)で取り壊しを通告された住宅はここが初めてではない。

だが、洞窟内に建てられた住宅としては初かもしれない。

土木技師として働く30歳のアマルネさんは、西岸にあるファラシン村の北に住んでいる。この地区で新たに住宅を建てる際は許可が必要で、許可なく建てられた場合は取り壊されるとイスラエルは強く主張している。

「二度、(家を)建てようと試みたが、この地域では新しい家の建設は禁止されていると占領軍当局(occupation authorities)から告げられた」と、アマルネさんは一部のパレスチナ人達の間でのイスラエル人の呼び名を使い、AFPに語った。

1990年代のオスロ和平合意で、ヨルダン川西岸はパレスチナ自治区と定められた。だが、ファラシン村も含む60%はC地区と呼ばれ、行政・治安ともに未だ全面的にイスラエルの支配下にある。

国連はC地区をパレスチナ占領地と考えている。

だが、イスラエルがユダヤ人入植地の建設に割り当てる土地の面積は増え続けている。ユダヤ人入植地は、国際法では違法となる。

イスラエルから村に家を建てる許可は出ないと確信したアマルネさんは、ファラシン村を臨む山麓の丘の洞窟に目をつけた。

イスラエルも古代から自然に形成された洞窟が違法の建造物だとはさすがに言えまいとアマルネさんは考え、パレスチナ当局(PA)は彼の名前での土地の登記を承認した。

卓越した建造のスキルを持つアマルネさんは、洞窟の入り口を石の壁で塞ぎ、中心に木の扉を取り付けた。

キッチンと居間、妊娠中の妻と娘と自分自身の寝室もすべて自分でつくった。来客を泊める部屋まである。

洞窟の家には一年半住んでいたが、7月にファラシン村に住む他の20のパレスチナ人家族とともにイスラエル当局から住宅破壊の通告を受けたとアマルネさんは語る。

西岸の民事を担当するイスラエル占領地政府活動調整官組織(COGAT)は、ファラシン村の一部の住人への住宅破壊の通告は「必要な許可や承認なく、違法に建設された構造物」に対するものだとAFPに語った。アマルネさんは、自分が違法に何かを建てたと考えられていることを知って「驚いている」と話す。

「洞窟をつくったのは自分ではない。古代からあったものだ」と、幼い娘を抱きながらアマルネさんは語った。

「彼らに私たちが洞窟に住むことを禁じる権利があるなんて、理解できない。洞窟には動物も住んでいるし、追い出されたりしない。私のことも動物と同じように扱って洞窟に住ませてくれればいい」

ファラシン村は1920年にアラビア人の住人たちによってつくられたと、村の評議会の議長、マフムード・アマルネ・ナセル(Mahmud Ahmad Nasser)さんは話す。

イスラエルが西岸の占拠を開始した1967年の六日戦争(Six-Day War)中に、村からは一度、誰もいなくなった。

だが、80年代から以前の住人たちが戻ってき始めた。現在の人口は大体200人ほどだとナセルさんは言う。
ファラシン村は、村というよりはいくつかの家が間を開けて立っている小さな集落のように見える。

ナセルさん曰く、パレスチナ当局は3月に公式にファラシンを村として認定したが、コロナウイルスのためにまだ電気が通っていないという。

4月、COGATは感染拡大を理由に住宅取り壊しの予定を保留にする可能性を示唆した。

だが、イスラエルの反ユダヤ人入植人権団体B’Tselemによれば、イスラエルは6月にパレスチナ人の住宅63棟を取り壊した。

現在、西岸に住むユダヤ人はおよそ45万人、パレスチナ人は2700万人だ。

迫りくるブルドーザーの可能性への恐怖に加え、ファラシン村の住人達はユダヤ人入植者がキャラバンでやってきて住みつこうとしているのを目撃したと話す。

「その入植者は少し前に羊をつれてやってきた」と、村の評議会議長のナセルさんは語り、なぜ自分たちが立ち退きを要請されている時に入植者が来るのかと疑問を口にした。

「私たちは何世代もこの土地に住んできた。祖先がここに眠っているんだ」

AFP

特に人気
オススメ

return to top