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アンカラはアラブ首長国連邦(UAE)との国交断絶を企てるも、イスラエルとの関係を維持:その狙いは?

アンカラの大統領官邸で、トルコ大統領レジェップ・タイップ・エルドアンに自らの信任状を提示するトルコ駐在イスラエル大使エイタン・ネー(左)。 (AFP/File)
アンカラの大統領官邸で、トルコ大統領レジェップ・タイップ・エルドアンに自らの信任状を提示するトルコ駐在イスラエル大使エイタン・ネー(左)。 (AFP/File)
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16 Aug 2020 05:08:46 GMT9
16 Aug 2020 05:08:46 GMT9

アラブニュース

  • ハマスは米国やEUにはテログループとして指定されているが、アンカラは合法的政治活動と見なしている

ジェッダ:トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領が金曜日、テルアビブと自国との外交関係の格下げに触れることなく、湾岸諸国とイスラエルの間の画期的な協定を受けて、アラブ首長国連邦(UAE)との外交関係を一時停止すると脅したことは、多くからご都合主義と非難されている。

イスラエルとアラブ首長国連邦の間の協定では、イスラエルがアブダビとの関係の国交正常化と引き換えに、計画されていたヨルダン川西岸の一部の併合を一時停止することを要求している。今回の事態に対応して、パレスチナ自治政府は、UAE大使の「即時」召還を発表している。

トルコ外務省は、この協定をパレスチナの大義に対する裏切りだと表明した。

ガザ地区とヨルダン川西岸でのイスラエルの行動に関する限り、トルコはパレスチナ人の強力な擁護者であるが、一方で同国はイスラエルとの外交関係を維持し続けている。

「トルコは自らもイスラエルとの外国関係を維持しながら、一方でイスラエルとの関係についてUAEを非難し、全く矛盾した立場をとっている」と中東報告分析センター(MECRA)のエグゼクティブディレクターであるセス・J.フランツマンは述べた。

トルコは1949年以来イスラエルと外交関係を持っている。特に2010年にイスラエル軍将校数人がトルコの援助船に乗り込み、10人のトルコ人活動家を殺害したマヴィ・マルマラ号襲撃事件以来、本来両国間には深い不信の溝があるにもかかわらず、二国間貿易は昨年60億ドルに達している。イスラエルは、トルコにとって上位10か国に入る輸出市場でもある。

過去2年間、エルサレムへの米国大使館の移転とガザ地区のイスラエルの政策への対応として、二国間の外交交渉は、大使ではなく、大使代行レベルのやり取りに格下げされている。

フランツマンによれば、このレトリックは、自国の経済的失敗を少しでも減じるためにアンカラが意図的に選択したことの一部である。

「現在の与党によって導かれたアンカラは、この地域で最も反イスラエル体制になる方向に向かっている。『アヤソフィア後のアルアクサの解放』に関する最近の大々的な発表は、アンカラの計略の一部として宗教過激主義を扇動して、前世紀の精神と戦争に根ざした地域全体の大衆、宗教、ナショナリストの見解をよみがえらせようとしている」 と彼は述べた。

8月13日、『ブリティッシュ・デイリーテレグラフ』紙はトルコがハマスの7人の上級工作員に市民権を付与していると主張し、世界中のイスラエル市民への攻撃を企図する、より多くの自由をグループに与えるそのような動きの潜在的な影響について懸念を表明した。疑惑はトルコ政府の報道官により否定されている。

ハマスは米国とEUによってテログループとして指定されているが、アンカラは合法的な政治運動と認めている。西側同盟国はトルコ領内でのハマスの活動についてトルコに何度か警告している。

フランツマンは、ハマスを支持し、イランの政権に近づいているトルコの与党は、ワシントンのため、そしてNATOとEUを利用したいという欲求のために、イスラエルとの現在の関係を維持しているだけだと見ている。

「アンカラの本当の戦略はアラブ世界を支配することであり、イランが政権自身の目的のためにパレスチナの苦しみを利用しようとするのと同じように、反イスラエルの見解を示すことで、支持を得ようとしている。トルコもイランもこれまでのところ、パレスチナ人にさらなる権利をもたらすことに成功しておらず、彼らが行ったことのすべてが、誤った希望を持たせ、平和と寛容のチャンスを台無しにしてしまった」と彼は述べている。

しかしフランツマンは、トルコがこの地域の問題にただ関与するのではなく、こうした政策を追求していることを残念に思っている。なぜなら、アンカラはかつてこの地域でのイスラエルとシリアの問題を仲介したり等、他でも生産的な役割を果たしてきたからだ。

イスラエルとトルコの間の「テクニカル」で「機能的」な関係はこれからも続く。イスラエルの国営航空会社、エル・アル航空は、マヴィ・マルマラ号の危機後、ここ10年間トルコへの乗り入れを停止していたが、この5月にイスタンブールに着陸し、イスタンブールとテルアビブの間を週2回運航することになった。

「トルコは、イスラム教徒が多数を占める国で初めてイスラエルを外交的に承認した国であり、AKP(与党の公正発展党)の下でもそれは変わっていない。したがって、現在アラブ首長国連邦(UAE)が行っていること、イスラエルを承認することは、トルコがほぼ70年間行ってきたことでもある」と、キングズカレッジロンドンの客員研究員であるビル・パークは述べる。

さらに、トルコとイスラエルとの貿易が、AKPの下でもトルコ自体の都合で増加し続ける中、パークはエルドアンがUAEの問題で、本当にイスラエルとの貿易を危険にさらすことができるのか疑問に思っている。

それが言葉の上での争いに過ぎないのなら、なぜエルドアンはこの危険な賭けにでるのであろうか?

「彼はすでにリビア、カタール、そしてトルコ国内のイスラム教主義者とムスリム同胞団の構成員に対する援助問題をめぐってアラブ首長国連邦(UAE)と対立している」とパークは述べた。「従って、エルドアンの発言の趣旨は、この継続的な緊張の延長線上にある。彼はイスラエルと同国のヨルダン川西岸を併合する計画が気に入っていないので、恐らく彼は自国と地域で道徳的および/または政治的に優位な立場に立とうとしている」

パークは、オマーン、バーレーン、さらにはサウジアラビア(KSA)等の他のアラブ諸国がアラブ首長国連邦(UAE)の後を追えば、エルドアンをさらに孤立させると考えている。

「アラブ首長国連邦(UAE)は、イランへの恐怖と敵意に大きく動かされており、このセンチメントをイスラエルと共有する。このセンチメントは今では多くのアラブ諸国政府にとってパレスチナ人の窮状よりも差し迫った問題である。この点、トルコは再びこの地域の多くの国と見解を異にしている。テヘランとアンカラの間にはある程度の相互疑惑があるが、敵意はほとんどなく、トルコはイランにとって米国主導の経済制裁の影響を軽減するのに決定的に重要である」とパークは述べている。

エルドアン首相は、自らの満足のために言葉遊びに従事している、世論を意識して一般大衆に訴えかけている、トルコの経済的利益にダメージを与えようとしている、あるいは単にトルコの厳しい地域的孤立を更に深めているかのいずれかであるとパークは語った。

パークが言うには、「彼がどういうスタンスを取るにせよ、地域またはトルコが直面する問題を一つも解決することは無い」

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