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過密状態のレバノンの刑務所 コロナによる健康災害まねきかねぬ

新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐ手立ての一環として、治安部隊員および受刑者みずからが使うことになる防護マスクを製作している受刑者ら。レバノン・ルーミーヤ刑務所内。2020年4月6日付でロイターより配付の資料写真(ロイター)
新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐ手立ての一環として、治安部隊員および受刑者みずからが使うことになる防護マスクを製作している受刑者ら。レバノン・ルーミーヤ刑務所内。2020年4月6日付でロイターより配付の資料写真(ロイター)
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14 Sep 2020 09:09:43 GMT9
14 Sep 2020 09:09:43 GMT9
  • ルーミーヤ刑務所でコロナ禍拡散との報を受け、受刑者の家族らはパニックに。デモ隊も立ち上げ

ナージヤー・フサリー

【ベイルート】レバノン最大の刑務所であるルーミーヤ刑務所内で新型コロナウイルス感染症が広がりつつあるとの報告が相次ぎ、受刑者の家族らの間でパニックを引き起こしている。早急に手を打たなければ惨憺たる状況を招くことを家族らは危惧している。

看守および受刑者の間で感染者が出ているとの報が入っている。レバノン国内の刑務所はどれもすでに深刻な過密状態にあり、2019年末の時点で収容人数の1.6倍の受刑者を収容している。

ベイルートの東に位置するルーミーヤ刑務所では5,500人以上を収容する。年少の受刑者を収容する隔離棟も備わっている。

1970年の開設当初は1,500人ほどの収容人数だったが、年を経てその数は増え、もはや社会的距離の確保は不可能となっている。全受刑者に対し恩赦をほどこすことの可否についても目下検討されているところだ。

弁護士のギーダー・フランジーヤ氏は語っている。「司法当局は、各拘置所の過密を避ける目的で収容者の移転を発表後、多数受刑者の放免を命じている」

同氏はまた、微罪での受刑者の放免を実現するためには議会が調停に入る必要があるだろう、ともしている。

同氏は続ける。「回答してもらわねばならない疑問は山ほどある。感染は早いうちから発見されていたのか。感染者はただちに隔離されていたのか」

「過密状況が増大すればルーミーヤ刑務所の衛生状況も悲惨なことになりかねない。感染した受刑者や接触者を守るためのあらゆる必要な措置を国内治安部隊や司法当局が講じない場合、これは刑務所だけの問題ではなくなってしまいかねない。受刑者は特に、その多くが生活環境や健康状態が劣悪であるため免疫力も弱っているのだからなおさらだ」

多くの受刑者が、疲労や高熱、咳、息切れ、咽喉炎、嗅覚脱失などといった症状を訴えている。刑務所内の薬局では鎮痛剤や解熱剤が払底しているとの報もある。

ルーミーヤ刑務所でコロナ感染者が出ていたことについてはハマド・ハサン保健相が認めた。が、ハサン保健相は、感染は主に「所内の治安部隊の間で」起こり、「受刑者の感染については極めて限定された数だけ報告を受けている」とした。

「受刑者の処置については、ビカー県およびベイルートにそれぞれ病院一院ずつを確保すべく努めているところだ」

国内治安部隊トップは声明を出した。「受刑者13人および隊員9人が9月11日にウイルス陽性反応を示した。中央刑務所[=ルーミーヤ刑務所]には、国際赤十字および世界保健機関(WHO)の協力を得て隔離スペースが設けられた。政府系病院複数についても必要な措置を取るため区画を設けたところだ」

ルーミーヤに収容されている多くの受刑者の家族たちはトリポリ市内でデモ隊を組織した。受刑者の保護および受刑者同士の感染拡大の防止に必要な措置を取ることを求めている。

レバノン国内のコロナ感染者は累計2万4,000人に達している。8月半ば以降は日別の感染者数も500人を突破している。累計死者数は13日時点で239人を数える。

レバノンのシャルビル・ワフバ外相もウイルス感染している。外務省職員も先週PCR検査を受け、その結果、外相と接触した3人の感染も確認された。

トリポリ市選出のファイサル・カラーミー国民議会議員は、同市には新型コロナの感染者に対応できる病床が26しかなく、市民が検査を受けるまで6日間の待機を余儀なくされているとし、感染拡大を懸念していると発言した。

カラーミー氏は、トリポリ市民や市当局は「いまだウイルスが実在すると思っていない。市民も予防措置などお構いなしだ」と吐露している。

他方で、国連レバノン暫定軍(UNIFIL)のアンドレア・テネンティ報道官は、隊員90名がウイルスに罹患しているとしている。

同報道官は、「うち88名が同一部隊の所属だ。彼らについては隔離処置を施すとともに、ほかの隊員への感染拡大を防ぐためのあらゆる予防策を講じているところだ」ともしている。

「UNIFILでは各施設内外の軍関係者および民間人について、WHOおよびレバノン政府のガイドラインに沿い、検疫隔離など公知のあらゆる手順に従いきわめて厳格な予防措置を講じている。雇用関係にある者については全員の職務について見直しをしているところだ」

国連安保理決議1701号に沿って負託される委任業務の執行に関わるあらゆるUNIFILの活動が影響を受けることは当面ない、とも同報道官はしている。

 

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