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スーダンとの国交正常化合意でイスラエルに住むスーダン人移民が新たな不安に陥いる

スーダンからの移民アトム・アリアルドムさん(56)。イスラエルのテルアビブ南部にある自宅の外で、スーダンとイスラエルの国旗で飾った自分の昔のレストランを写した写真を手にしている。(AP通信)
スーダンからの移民アトム・アリアルドムさん(56)。イスラエルのテルアビブ南部にある自宅の外で、スーダンとイスラエルの国旗で飾った自分の昔のレストランを写した写真を手にしている。(AP通信)
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01 Nov 2020 09:11:17 GMT9
01 Nov 2020 09:11:17 GMT9
  • イスラエルとスーダンは今月初めに国交を正常化すると発表し、スーダンはイスラエルと国交を正常化するアラブ諸国のうち、ここ3か月で3番目の国となった

テルアビブ:ウスマイン・バラカ氏は非の打ちどころのないヘブライ語を話し、イスラエル人を親友とみなし、旧約聖書の一節を引用することができる。しかし、スーダンからの亡命希望者であるバラカ氏は、イスラエルでの法的地位を持たず、イスラエル政府の気まぐれに縛られた不安定な生活を送っている。

バラカ氏はイスラエルに6,000人いるスーダン人のうちの1人で、イスラエルとスーダンが国交を正常化することに合意した後、イスラエルにいるスーダン人たちは再び自らの運命を恐れている。

イスラエルはすでに、スーダンとの今後の協議で移民問題を解決しようとしていることを示しており、紛争や迫害のために逃れたスーダンに強制的に送還されるかもしれないという恐怖感をスーダン人コミュニティの中でかき立てている。

「もし私が明日、あるいは明後日、彼らが協議している公式な和平が実現したときにスーダンに戻ったら、何かが私を待っている。その何かとは危険だ」とバラカさん(25)は語った。バラカさんは9歳のときに、ダルフールにある同氏の村を攻撃した民兵組織ジャンジャウィードから逃げてきた。

イスラエルとスーダンは今月初めに国交を正常化すると発表し、スーダンはイスラエルと国交を正常化するアラブ諸国のうち、ここ3か月で3番目の国となった。

この発表はイスラエル国民を満足させた。しかし、長年にわたりイスラエルが移民の追放に失敗した後、この発表は長い間、第2の故郷で不安定な生活を送ってきたスーダン人の間で新たな恐怖となっている。

主にスーダンとエリトリアからのアフリカ人移民は、エジプト軍が力で難民デモを鎮圧した後、イスラエルが安全で仕事の機会があるという噂が広まったため、穴だらけのエジプト国境を通って2005年にイスラエルに到着し始めた。

何万人もの人々がしばしば危険な旅を行い砂漠の国境を越えた。

イスラエルは当初、彼らの流入を見て見ぬふりをし、多くの人がホテルやレストランで下働きをしていた。しかし、彼らの数が増えるにつれ、新たな到着者を追放すべきだという声が高まり、反発が起きた。

イスラエルは移民の大多数を求職者とみなし、彼らを留めておく法的義務はないとしている。アフリカ人たちは、自分たちが命からがら逃げてきた亡命希望者であり、もし送還されれば新たな危険に直面すると言っている。多くはダルフールや他の紛争地域から来ている。

スーダンの前指導者オマル・バシル氏は、ダルフールにおいて自らの監視下で行われた集団虐殺作戦で虐殺の罪に問われている。この地域では今も部族間の衝突や反政府組織による暴力が続いている。

国際法の下では、イスラエルは移民の命や自由が危険にさらされている国に移民を強制送還することはできない。

批評家たちは、政府が強制送還のかわりに彼らに出国を強要しようとしていると非難している。

長年にわたり、イスラエルは何千人もの移民を遠隔地の砂漠の刑務所に拘束し、何千件もの亡命申請を放置し、アフリカの第三国への移送に同意した人に現金での支払いを申し出てきた。

イスラエルはまた、エジプトとの国境に沿って障壁を築き、移民の流入を阻止し、国連との間で数千人の移民を西側諸国に再定住させ、その他の数千人をイスラエルに留めるという協定を結んだが、この協定は反移民活動家や強硬派議員からの圧力ですぐに破棄された。

移民の存在は長い間、イスラエルを二分してきた。彼らの支持者は、ホロコーストの灰の上に建国され、ユダヤ人難民によって築かれたイスラエルは、難民を歓迎すべきだと言う。反対派は、移民が住む南テルアビブの低所得者地域に彼らが犯罪をもたらしていると主張している。イスラエルの政治家の中には、彼らに侵入者というレッテルを貼る者もおり、ある政治家は彼らを、この国のユダヤ人の地位を脅かしている「癌」と呼んでいる。

「彼らは出稼ぎ労働者であり、あたかも自分たちがその場所を所有しているかのように振る舞っていると思う」と、有名な反移民活動家のシェフィ・パズ氏は述べている。

公の場では、イスラエルの指導者たちは自らの計画について慎重な発言をしている。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は日曜日、イスラエルとスーダンの代表団が「移民の分野を含む多くの分野での協力を議論する」ために間もなく協議を行うだろうと述べた。イスラエル内務省の報道官はコメントを拒否した。

イスラエルとの早期の接触を直接知るスーダン軍幹部は、移民送還の問題はまだ議論されていないと述べた。同氏は公の場でこの問題を議論することを許可されていないとし、匿名を条件に話した。

イスラエルは2012年、同国の裁判所が移民は母国でもはや危険にさらされていないと判断したことを受け、約千人の移民を南スーダンへ強制送還した。南スーダンは独立したばかりだった。しかし、活動家たちによると、一部は病気で死亡し、一部は新たに発生した紛争から逃げたという。

イスラエルは最近の訴訟でスーダンの状況が不安定なままであることを認めており、移民と協力している支援団体は、移民を国外退去させることは厳しい法的課題に直面するだろうと述べている。

「イスラエルが亡命申請をしているスーダン人を国外退去させるなどということになれば、難民の地位に関する条約の最も基本的な原則に対する重大な違反となる」と、難民と移民のためのホットラインの社会政策ディレクター、シガル・ローゼン氏は言う。

それにもかかわらず、イスラエルの指導者たちはスーダンの一部の人々が自発的に去るように促すために、この問題を提起しているかもしれないと同氏は言う。

移民はすでにコロナウイルスの流行によって大きな打撃を受けており、レストランやホテルでの彼らの仕事は、繰り返し課されるロックダウンによって脅かされている。イスラエルでの正式な身分がない移民たちは、失業保険を要求する権利がない。ローゼン氏は、一部の同情的な雇用者は、とにかく彼らに命綱を与えようと移民労働者の雇用を維持していると述べた。

多くの移民が住む南テルアビブ地区の、普段は商店やレストランで賑わう歩行者用の通りは最近、寂れた雰囲気となっている。灰色のシャッターが多くの店の入り口を封鎖し、マスクをつけた移民たちが店の前でたむろしていた。

バラカ氏は父親を目の前で殺された後、ダルフールから逃れてきた。同氏はチャドとの国境沿いの移住キャンプに住んだ後、北への危険な旅に出た。同氏はリビア、エジプトを経由し、砂漠を抜けてイスラエルに密入国後、イスラエルに10年以上住んでいる。

同氏は2013年にイスラエルに亡命を申請したが、亡命の可否はまだ判断されていない。同氏はスーダンとイスラエルの関係を安定させるどんな合意も歓迎しているが、それが帰国の扉を開くとは思っていない。

「私は彼らが今協議しているスーダンとイスラエルの国交正常化を信じている。私はそれを支持するが、それが誰との間で協議され、いつ行われ、どのように行われるのかを知る必要がある」 とバラカ氏は話した。

AP通信

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