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チュニジアの新興企業、3Dプリントによる太陽光発電の人工義手を開発

チュニジア・スースの新興企業、キュアバイオニクス社で義手のプロトタイプをテストする技術者たち。 (2020年10月20日、AFP)
チュニジア・スースの新興企業、キュアバイオニクス社で義手のプロトタイプをテストする技術者たち。 (2020年10月20日、AFP)
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04 Nov 2020 08:11:24 GMT9
04 Nov 2020 08:11:24 GMT9
  • 新開発の義手は、腕に取り付けられた筋肉の動きを検出するセンサーに連動している

スース(チュニジア):チュニジアのある新興企業が、手頃な価格の太陽光発電の義肢でアフリカ全土の手足を失った人々やその他の障害を持つ人々の役に立ちたいという思いから、3Dプリントで製造する人工義手を新たに開発している。

従来の義肢とは異なり、新開発の義手は、成長と共に費用の嵩むサイズ変更を必要としていた子供や若者達向けに、カスタマイズしていくことができるよう設計されている。

開発企業であるキュアバイオニクス社(Cure Bionics)はまた、若者が理学療法を通じて義手の使い方を学ぶのを支援する、ビデオゲームに似たバーチャルリアリティシステムを開発する計画を立てている。

キュアバイオニクスの創業者兼CEOである28歳のMohamed 氏は、地元スースの工学部の学生だったときに、最初のプロトタイプを設計した。

「チームメンバーの1人に生まれつき手がないいとこがいたのですが、両親には、彼女がまだ成長していたこともあり、義肢を買う余裕がありませんでした。」とDhaouafi氏は語る。

「それで私たちは、手を作ってあげることにしたのです。」

Dhaouafi氏は、2017年に両親の家で会社を立ち上げた。多くのクラスメートたちは、より高い収入と国際的な経験を求めて海外に行くことを選んでいた。

「それはポジティブの意味での意趣返しのようなものでした」と彼はAFPに語った。 「私は自分にそれができると証明したかったのです。また、何かいいものを後世に残したい、人々の生活を変えたいとも思っています。」

Dhaouafi氏はまた、大手のインターネット販売サイトから部品を注文することが難しいか全くできないという、チュニジアの不便さを指摘した。資金も不足しており、「チュニジアには将来へのビジョンを持った人が少なすぎるのです」と彼は言う。

しかし、スポンサー付きのコンテストや米国企業からのシード投資を通じて集められた資金をプールすることで、Dhaouafi氏は4人の若い技術者を採用することができた。

彼らは現在、デザインを微調整し、コードを書き、義手をテストしている。

新開発の義手は、腕に取り付けられた筋肉の動きを検出するセンサーと、センサーからの情報を解釈して指部分に指示を送信するAIを活用したソフトウェアに連動している。

義手本体は、横向きに回転できる手首、電子インパルスに反応して曲がる関節を持つ機械製の指を持っている。

若者に義手の使い方を教えるために、キュアバイオニクス社は理学療法プロセスを「ゲーム化」するバーチャルリアリティを用いたヘッドセットの開発に取り組んできた。

「現在、リハビリのために、子供たちには例えばもう存在しない手で瓶を開けるふりをする、といった練習をしてもらっています」とDhaouafi氏は言う。

「そのように筋肉を動かせるようになるには時間がかかります。直感的にする動きではないですし、とても退屈です」

新開発の義手の活用法について、技術者でもあるDhaouafi氏はさらに次のように述べている。「子供たちにスパイダーマンのように建物に登ってもらい、ゲームとして点数を付けてやる気を起こさせます。医師は離れた場所からオンラインでフォローアップすることができます」

一方、3Dプリントにより、ファッションアクセサリーや「スーパーヒーローのコスチューム」のように義手をパーソナライズすることが可能になるともDhaouafi氏は述べている。

キュアバイオニクス社は、最初の人工義手を数か月以内に、最初はチュニジアで、続いてアフリカの他の場所で販売することを望んでいいる。世界保健機関によると、アフリカでは必要とする人々の4分の3が義肢を持てない状況だという。

「開発の目的は、義手を経済的にはもちろん地理的にも手の届くものにすることです」とDhaouafi氏は語る。

約2,000ドルから3,000ドルの想定価格は依然高価ではあるが、現在ヨーロッパから輸入されている人工義肢の価格にくらべればはるかに低いものだ。

キュアバイオニクス社はまた、各地の技術者が利用者のサイズを測定し、それに合った義手を個別にプリントするという方法で、エンドユーザーにできるだけ近い場所で製造することを目指している。

「現在輸入されている義肢は、購入してから、また修理のたびに数週間から数か月待たなければなりませんでした」とDhaouafi氏は指摘する。

新開発の人工義手はレゴのようなパーツでできており、損傷した場合や、また子供の身体の成長に合わせて取り替えることができる。

また、電力供給が不安定な地域での使用を考慮して、太陽光充電器を使って太陽光発電により駆動することもできる。

義肢の3Dプリントによる製造は、約10年前にその初歩的なものが始まったが、今や標準になりつつある。

アフリカの病院の3Dプリントによる義肢の製造を支援しているカナダの非営利組織、Nia Technologiesを率いるJerry Evans氏は、専門的な医療ノウハウが依然として最も重要であり、3Dプリントの活用は魔法の解決策というわけではないと認めている。

「3Dプリントはまだ発展の初期段階なのです」とEvans氏は言う。「しかし、義肢と矯正器具の分野では大きな変革をもたらしています」

「コストを大きく下げることができるので、発展途上国はこうした新技術をおそらく積極的に受け入れるでしょう」

AFP

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