• レバノンの情報当局は、レバノン山で新たなレバノン人ギャング集団の活動が活発化し、強盗事件もいくつか起こしたことを確認した。

ナイジャ・ハウサリ

ベイルート―レバノン東部バールベック・ハーメルに位置するレバノンとシリアの国境地域では、現地での密輸取り締まりの状況次第により、頻繁に治安上の緊張状態に陥っている。

シリア軍国境警備隊は12日、国境の村アル・カサーに位置し、アリダ国境横断路として知られる不法横断路で、若い男数人を銃撃。この銃撃でレバノン人男性の1人が死亡、1人がけがを負った。

この横断路ではレバノン、シリアの双方向の密輸が行われているが、両国の経済状況の悪化とシリアへの経済制裁を背景に、レバノンからシリアへの密輸がこのところ常態化してきている。密輸品には、レバノン政府の支援により供給された小麦粉、燃料、薬などの生活必需品が含まれている。また、盗難車の密輸に使われる不法ルートがある。シリアに密輸される製品には、製造業用の原材料や車の部品が含まれている。

これらの国境地帯では今月初め、密輸業者とシリア軍パトロール隊との間で衝突が起きた。レバノンの国境の町ホシュ・アルサイード・アリに近いシリア側地域で発生したこの追跡劇では、軽量武器や中型武器が使用された。

このためレバノン軍は、銃撃してレバノン側に逃走した密輸業者を捜すため、情報部局と連携してレバノンの同地域を強制的に捜索した。レバノンの内務省警察軍（ISF）は2日前、車を盗んでシリア国内に密輸することを計画していた2人の若いシリア人（19歳と23歳）を拘束した。ISF情報当局によると、2人のうち1人は以前、シリアからレバノンに人を密航させたことがある。

同情報当局は、レバノン山で新たなレバノン人ギャング団の活動が活発化してきており、数件の強盗事件も起こしたと確認した。拘束されたギャング団メンバーの2人は、盗難車をベッカー地方に輸送した後、そこからシリア国内に密輸するところだったと自供した。

レバノンの最高国防会議は、昨年に「レバノンとシリアの間で124件を超す密輸が行われた」としている。アリ・ハッサン・カリリ前財務相は昨年の国会予算案審議の中で、密輸業者が大胆にも、横断路に対して特定の密輸製品、人物、町、方角にちなんで名前を付けていると述べた。「国としての義務を果たすという意味では、これは明らかな国家崩壊の一つの兆候といえる」。同前財務相はこのように述べた。

シリアの野党連合は、米国政府においてシーザー法を起草する委員会に対し、「レバノンのヒズボラがシリア政権に武器、金銭、燃料を密輸するために使用する陸上ルートおよびトンネル」についての情報を提供した。

その情報にはこう記されている。「ヒズボラは2012年以降、レバノンのベッカー高原と、ダマスカスの田園地帯にあるレバノン西部のカラモーン村とを結ぶ不法横断路のネットワークに頼って、シリアへの物資、武器、ドラッグの密輸を行ってきた。これらのルートのうちの4つが、両国間の国境を結ぶ主要道路となっており、ほかにも二次的な横断路がある」

この情報では、両国間にある複数の町の力のある人々や一族が、レバノンからの物資の密輸を監督していることにも注目している。

シュラフ・アルムサウィ弁護士は、アラブニュースの取材にこう述べた。「自動車窃盗は恐ろしい勢いでエスカレートしており、盗まれた車はひと月で136台を超えた。車が1日当たり4～5台も盗まれている計算になる」

アルムサウィ弁護士は、レバノンで盗まれた車がアルスワイダーの自動車市場で見つかり、その市場はソーシャルメディアで「A Key and a Car（キーと車）」のタイトルで広告も載せていた、と述べた。

「盗難の被害者は、電話で問い合わせることができる。それにより、お金を払って車を取り戻すことが可能だ。車はレバノンとシリアの国境まで配送されることになる」。同弁護士はこう付言した。

元受刑者やギャングのメンバーである場合も多い人物が、盗んだ車をベイルートまたはレバノン山から国境まで運び、最大200万レバノン・ポンドを稼ぐことが可能となっている。

治安当局筋はアラブニュースの取材にこう述べた。「こうした集団の一部は、職務に就いているレバノンの警備担当員である可能性がある。手っ取り早い稼ぎになるとして、手を染めるのだ。また、彼らは、ギャング団に加わった退役軍人である可能性もある。例えば、こうした人物がひと月に車4台を輸送した場合、自分たちの月給の5～6倍の収入を得ることになる。車を運転する場合には、治安部隊に気づかれないようにしている。一部の者は、治安上の不祥事の時と同じような方法で逮捕されており、今も拘留されている」