• 新型コロナウイルスは、終わりの見えない壊滅的な経済危機の中で生き延びようとしている多くの人が抱える問題の氷山の一角である
• 通貨暴落後、各家庭が必需品を手に入れるのに苦労しているため、子供へのプレゼントやお祝いの食事などの「贅沢品」は手の届かないものとなっている

ナジャ・フーサリ

ベイルート：今年のクリスマスは、いくつかの危機を伴ってレバノンに訪れる。

ここ数日、通りや市場はクリスマス直前の買い物客でごった返しているが、これは景気が良くなっていることや、人々の喜びを表すものではない。そうではなく、可能な限り安い品物を求め、必死に探し回っているのだ。

レバノンの給料は今年、対ドルで約80％の価値を失った。彼らはもはや必需品の費用さえまかなえず、物価は急騰している。果たして、子供へのプレゼントや心のこもったクリスマスディナーなど、お祝いの「贅沢品」にお金を払うことができるのだろうか？

「10万レバノンポンド（66ドル）では、洗濯洗剤、歯磨き粉、シャンプーを買うのにも十分ではありません」とベイルート南部の郊外のフォルン・エル・チェバクに住むソウアドは語る。「では、給料が80万ポンドだった人が、食べ物や飲み物に加えて、その他の生活必需品をどうやって買えばいいのでしょうか？」

「今年は1つだけのプレゼントで満足するように子供たちを説得しています。私たちは今あるもので何とかしなければなりません。そして、来年がこれ以上良い年になるとは考えていません」

通貨崩壊前には2万レバノンポンド程度だった子供向けの玩具やプレゼントが、今では12万レバノンポンド以上になっている。一方、海外の有名ブランドの輸入玩具の価格は、LBP4万5000レバノンポンドから25万レバノンポンドに上昇している。

大人向けの贈り物のコストはさらに高額である。最大30万レバノンポンドで販売されていた良い品質の靴は、今や100万レバノンポンド以上で売られている。

「週毎の減少がほぼ90％に達しており、私たちのビジネスに影響を与えています」と宝石店を所有しているガッサンは述べる。「1年前は200ドル（30万レバノンポンド）でネックレスが買えた人が、今では国の最低賃金の3倍の160万レバノンポンドを支払わなければならないのです」

新型コロナウイルス危機の健康への脅威を矮小化すべきではないが、レバノンでのパンデミックは、家族が大規模な家族の集まりを避けることによって、クリスマスの食事のコストを削減することができるようになることから、ある程度の隠れた金銭的なメリットになる可能性がある。

高価な肉、贅沢なデザート、輸入チーズは、今年はほとんどの祝祭の食卓には登場しない。200グラムの3種類のチーズと加工肉が入ったシャルキュトリープレートの価格は、昨年の6万レバノンポンドから35万レバノンポンドまで値上がりした。

レバノンのクリスマスディナーの風物詩である七面鳥は、以前はレストランで平均約15万レバノンポンドであった。今では、自宅に配達される調理済みの七面鳥の価格は最低でも75万レバノンポンドだ。一緒に頼むサイドディッシュによっては最大130万レバノンポンドに達することもある。

デザート用の甘いお菓子としては、高級チョコレート1キログラムの価格は現在1万2000レバノンポンドを超え、高級クリスマスケーキは100万レバノンポンドにもなる。

「食卓に外国の食事が並ぶこともなく、輸入品のプレゼントもないので、今年のクリスマスのお祝いはいつもと違います」とベイルート在住のジョエル・ダニエルは語る。「私達は国内の商品を購入し、レバノン人デザイナーが製造した教育用の子供向けギフトに注目しています　」

「誰もが経済的に苦しんでおり、私達は今あるもので何とかしなければなりません。今年は悪い年でしたが、2021年がこれ以上良くなるとは思っていません。（レバノンの）経済的、社会的、政治的状況が非常に悲惨なので、私と家族は移民書類の準備を始めました」

「革命は私達の野望を達成できませんでした。そしてベイルートの港で爆発が起き、私達の国がいかに腐敗しているかが明らかになりました」

すでに海外でのより良い生活を求めてレバノンを離れた人々の多くが、クリスマスを家族と過ごすために帰国している。ここ数日で7000人以上の人々が休暇のためにベイルートに戻り、今月に入ってからは8000人以上が到着している。しかし、訪問者が苦労しているビジネスに対して多くの季節の喜びをもたらす可能性は低い。

ベイルートの司法宮殿近くで服屋を経営するガッサン・アボウ・ジャウデは、「休日に伴う経済活動の効果は限定的でした」と語る。「休暇が終われば、すべての商人は損失と利益を比較しなければならず、家にいる方が借金を増やすよりもコストがかからないことに気づくでしょう」

「これは、単に人々のお金がなくなったからです。私達の政治指導者は皆、国民を見捨て、外国勢力の意向に従うことを好み、このような運命的な国家問題に直面しているのも関わらず、いかなる譲歩も拒否しています」