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イランの支援を受けている、イエメンのフーシ派はバイデン政権に威嚇射撃をしているのか

しかし、こうしたテロ行為を行い、弾道ミサイルや無人機を使用しているのは、イランが支援するフーシ派だということは、誰もが知っている、とアナリストのHamdan Al-Shehri氏は言う。(AFP/資料写真)
しかし、こうしたテロ行為を行い、弾道ミサイルや無人機を使用しているのは、イランが支援するフーシ派だということは、誰もが知っている、とアナリストのHamdan Al-Shehri氏は言う。(AFP/資料写真)
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27 Jan 2021 12:01:00 GMT9
27 Jan 2021 12:01:00 GMT9
  • フーシ派は、サウジの人口集中地域を標的にしていることの自慢と、一見もっともらしい反証の主張を繰り返している
  • 26日にリヤド上空で発射体がはっきりと目撃されたが、こうした事件が起きたのは30年で2度目だ

ロバート・エドワーズ&タレク・アリ・アフマド

ロンドン:26日にリヤド上空で目撃された物体は、明確な標的のない、それた発射体だったのか、それともバイデン政権に向けた威嚇射撃だったのか。サウジの首都に向かって進んだ、弾道ミサイルとみられる「敵の空中目標」が迎撃・破壊されてからわずか3日後の出来事であり、それは防衛専門家や政治アナリストの心の中にある最も重要な問題だった。

26日、ソーシャルメディアはリヤド上空に煙が漂う映像で騒然となり、住民は、少なくとも1回は起きた爆発の衝撃で家の窓がどれくらい揺れたかを説明していた。イランの支援を受けている、イエメンのフーシ派は、人口768万人の街に発射体が直撃したことを深夜までに自慢しなかった。フーシ派の行動はいつもどおりで、23日の失敗した攻撃への関与を否定していた。

しかし実際問題として、これらは、ドナルド・トランプ政権のイランとその代理人に対する「最大の圧力」キャンペーンの最後の行動の一つとして、米国務省が1月19日にフーシ派を「外国テロ組織」に指定して以来初めてとなる、サウジの主要都市を狙った大規模な攻撃である可能性がある。

米国の同盟国への相次ぐ攻撃は、イランがバイデン大統領の決意を試すためにしたことである可能性があり、運が良ければ、対話の開始を促すためである可能性さえある。(AFP)

23日の事件の後、バイデン政権は、フーシ派の名をはっきりと挙げずに、否定できない、民間人を標的とした攻撃を非難する声明を発表した。「こうした攻撃は国際法違反で、平和と安定を促進する全ての努力を台無しにするものだ」と国務省は発表した。

多くの政治評論家にとって、この新たなフーシ派のアプローチは、頭を悩ませる問題では全くない。制裁と政治的孤立の脅威にさらされ、米国が譲歩してくれることを切に望んでいるフーシ派は、リヤドへの攻撃を開始し、犯行声明を出さないことで、矛盾する二つのことを同時に実現させようとしている。

政治アナリストで国際関係学者のHamdan Al-Shehri氏はアラブニュースに対し、「間違いなくフーシ派は、国際社会の反応を評価し、特に国務省によって「テロリスト」に分類された後、犯行声明が逆効果であることに気付き、23日の攻撃が自分たちの仕業であることを否定しようとした」と話した。

「しかし、こうしたテロ行為を行い、弾道ミサイルや無人機を使用しているのは、イランの支援を受けているフーシ派であることは、誰もが知っている。彼らは、サウジアラビアで起きたことを否定することで、米新政権の機嫌を取ろうともした。しかし、これらの行動は誰の仕業か、誰もが知っている」

イエメンとの国境から約850キロの所にあるリヤドが初めてフーシ派に攻撃されたのは2017年11月4日だった。(Shutterstock)

専門家らによるとフーシ派は、民間人を標的にしていることの自慢と、一見もっともらしい反証の主張を繰り返すという戦略を取っているという。言い換えれば、彼らはいつでも、どちらの態度が自分たちの目的、そして支援者であるイランの目的に合うかよく選んで決めている。

単刀直入に言えば、サウジアラビアの首都を標的にした恥知らずな攻撃は、低水準紛争における定型的戦術行動ではなく、ジョー・バイデン大統領の外交政策チームに通告するという、イランのより大きな戦略的意思決定を反映しているのかもしれない。  

トランプ政権は2018年5月、オバマ時代のイランとの核合意から米国を撤退させ、イラン政府に対して多くの経済制裁を再び課した。この戦略は、イエメン、イラク、シリア、レバノン、パレスチナにおけるイランの影響力に対する、断固とした措置と合致していた。

このような背景から、米国の同盟国やパートナーへの相次ぐ攻撃は、イランがバイデン大統領の決意を試すために行ったものである可能性が非常に高く、運が良ければ、対話の開始を促すためである可能性さえある。

「間違いなくイランは、米新政権がイエメンの問題とイランの核問題をどれだけ真剣に考えているかを知るために同政権を試したい、そして複数のカードで交渉したいと考えている」とAl-Shehri氏はアラブニュースに話した。

「『そちらが核問題への圧力を軽減する気があるなら、こちらはリヤドを標的にすることへの圧力を軽減する』と言っているようなものだ。これは安っぽくて恥知らずな政治的恐喝にすぎず、世界はそのことを知っている」

「安っぽくて恥知らず」とは、フーシ派が民間人の人口集中地域、多くの場合サウジ領土内の数百マイルを標的にする傾向があることの表し方の一つでもある。

2018年3月26日にはフーシ派による最大級の集中攻撃があり、イランが供給した弾道ミサイルがサウジアラビアの4都市の民間人居住地域に雨あられのごとく降り注いだ。そのうち3発はリヤドを、2発はジャザンを、残りはハミス・ムシャイトとナジュランを標的にしていた。

フーシ派がサヌアを占領し始めた頃から、一般市民が標的にされている。(AFP/資料写真)

サウジアラビアの防空手段によって7基のミサイルは全て迎撃されたが、エジプト人の民間人1人が落下した破片で死亡し、2人が負傷した。いずれの攻撃も意図的に人口密集地域を標的にしたとみられる。

「無差別攻撃の開始は国際人道法で禁止されている」とアムネスティ・インターナショナルのSamah Hadid氏は当時述べた。

「ミサイルが迎撃されたからかもしれないが、多数の死者が出ることは避けられたかもしれない。だが武装勢力フーシ派はこの無謀な不法行為の責任を逃れられない。これらのミサイルは、そのような距離では正確に目標に向かうことはできないため、このように使えば不法に民間人を危険にさらすことになる」

イエメンとの国境から約850キロの所にあるリヤドが初めてフーシ派に攻撃されたのは2017年11月4日だった。リヤドの北東約35キロに位置するキング・ハーリド国際空港が無誘導弾道ミサイルの標的になった。

ミサイルは飛行中に迎撃されたが、破片が空港内に落下した。けが人はいなかったが、壊滅的な結果になる可能性があった。

「ブルカーンH2のような無誘導弾道ミサイルは、軍事目標を標的にするのに必要な精度がないため、この距離からそれらを使えば無差別攻撃だ」とヒューマン・ライツ・ウォッチは当時発表した。

「意図的に、あるいは無差別に人口密集地域や民間の物に向けられた攻撃は、戦時法に違反し、戦争犯罪になる可能性がある」

その前年の2016年10月にはブルカーン1とみられるミサイルが、サウジの防空手段によってマッカから南にわずか65キロの所で迎撃された。フーシ派は当時、標的はジッダのキング・アブドゥルアジーズ国際空港だと主張していた。

フーシ派がサヌアを占領し始めた頃から、一般市民が標的にされている。2015年5月には、イエメン北部からサウジアラビア南部の人口密集地域に向けて発射した短距離ロケットによる無差別攻撃が繰り返され、民間人数人が死亡した。

フーシ派は、リヤドへの攻撃を開始し、犯行声明を出さないことで、矛盾する二つのことを同時に実現させようとしている。(ロイター/資料写真)

イエメンでの戦闘は、フーシ派が国連が承認したアブドラボ・マンスール・ハディ政権を倒した2015年に激化した。米国、英国、フランスの支援を受けたアラブ連合軍は、合法政府を権力の座に復帰させるために軍事作戦を開始した。

それ以来、何度も和平合意に達しようとしたが失敗し、2018年9月にジュネーブで開催された、国連が仲介した協議にフーシ派の代表は出席せず、フーシ派の戦闘員はストックホルム合意とリヤド合意の条件を故意に無視した。

COVID-19のパンデミックが始まったときにアラブ連合軍が発表した、2020年4月の停戦は、フーシ派がサウジアラビアを標的とした、国境を越えた無人機・ミサイル攻撃を再開したことで、すぐに破綻した。

この紛争は6年目に入っており、11万2000人が死亡し、2400万人が人道的支援を今すぐ必要としている。

Twitter: @RobertPEdwards
Twitter: @Tarek_AliAhmad

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