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米高官、レバノンの政治改革を妨害する勢力に警告

ヘイル国務次官は、15日にレバノンのミシェル・アウン大統領と会談した後に声明を発表した。(ロイター)
ヘイル国務次官は、15日にレバノンのミシェル・アウン大統領と会談した後に声明を発表した。(ロイター)
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16 Apr 2021 07:04:57 GMT9
16 Apr 2021 07:04:57 GMT9
  • デビッド・ヘイル国務次官「米国は改革勢力を強力に支援すると保証する」

ナジア・フッサリ

ベイルート: アメリカのデビッド・ヘイル国務次官(政治問題担当)は、「改革政策の妨害をやめない勢力」に対し警告を発した。

ヘイル国務次官は、抵抗勢力が「アメリカや同盟国とレバノンとの関係を危険にさらし、懲罰的措置を誘発しようとしている」と述べ「アメリカは改革勢力を強力に支援すると保証する」と付け加えた。

ヘイル国務次官は15日、レバノンのミシェル・アウン大統領と会談した後に声明を発表した。

アウン大統領が指名したサード・ハリリ首相は、政治的意見の対立により国際社会が要求する改革の実行を目的とした、無党派の専門家による救国内閣を組閣できなかった。

アウン大統領の側近と支持者は、昨年12月にハリリ首相が提案した閣僚候補の承認を拒否している。自由愛国運動(FPM)を中心としたアウン大統領率いる勢力は、キリスト教徒の閣僚たちを指名し反対票を投じる権限を自分たちに寄こすよう要求している。ヒズボラは専門家出身の閣僚でなる政権の樹立に賛同しているため、大統領側の要求を一部擁護している。

アメリカ政府はそれ以前に、汚職容疑でFPMのジブラン・バシル党首に制裁を課した。

ヘイル国務次官はレバノン訪問の目的が「ブリンケン国務長官の要請を受けたもので、バイデン政権がレバノン国民に今後とも寄り添い、レバノンの安定と繁栄を願う共通の思いを形として示すこと」だと強く述べた。

ヘイル国務次官はレバノンの指導者たちが責務を履行していないとの非難を繰り返した。

「レバノン国民が苦境に置かれているのは明らかだ。レバノンの指導者たちは、国益を最優先して増大する社会経済問題に対処するという責務を果たせていないため、国民が苦境に立たされている」と述べた。

ヘイル国務次官は自らが2019年12月と2020年8月にレバノンを訪問していることについて触れた。「当時は宗派を問わずあらゆるレバノン国民から変化を求める声をはっきりと耳にした。こうした要求は国民全体のものだ。透明性・説明責任を確保し、国難の原因となったレバノン特有の腐敗構造とずさんな国家管理体制の終焉を求める声だ。」

「こうした要求が満たされていたなら、現在のレバノンは素晴らしい潜在能力を発揮するためのステップを踏んでいるはずだった。しかし現在、全くといってよいほど進歩が見られていない。しかし今ならまだ間に合う」

ヘイル国務次官は再び、レバノンの指導者たちに対し「現在進行中の社会崩壊を食い止め、国家を再建する意欲と能力を備えた政権を樹立するため、柔軟に対応する」よう要求した。

またこう述べた「今は国家を構築すべき時期であり、足を引っ張る時期ではない。今こそ国家を構築しなければならない。今こそ包括的な改革を実施すべき時期だ。アメリカと国際社会は援助を実施する用意がある。しかし昨日述べたように、レバノン側の協力が得られなければ手を貸すことはできない」

ヘイル国務次官は特にヒズボラを批判した「ヒズボラの危険な武器の蓄積・密輸・その他の違法で腐敗した活動により、合法的な国家機関が弱体化している」

こう付け加えた「ヒズボラにより、レバノン国民は平和で繁栄する国家を建設する力を奪われている。さらにイランこそ、国家を弱体化しレバノン政治家の腐敗を助長しこれに資金を投入している黒幕だ。」

「この事実があるため、私はイラン核開発計画に対しアメリカが新たな交渉に臨んでいることついて考えてしまう。イラン核合意に両国が復帰すれば、アメリカの国益と地域の安定につながるが、これは交渉の糸口にすぎない。アメリカがイランによる地域の不安定化を目論む他の行動に対処する際、レバノンでアメリカの国益と仲間を犠牲にすることはない」

レバノンとイスラエルの南部国境線を確定する枠組み合意の立役者として知られる、ヘイル国務次官は次の点を強調した「協議開始時の合意事項に基づいて、レバノン・イスラエル間の海上国境画定に関する協議を仲介する用意があるとのアメリカのスタンスは変わらない」

ヘイル国務次官が「協議開始時点の合意事項に基づいて」交渉を仲介すると主張しているのはレバノン側の要求に応じたものだ。2020年のレバノン・イスラエル間の技術交渉でレバノン側は、計算ミスを理由としてレバノンに返還される海域を修正するよう求めている。この修正により返還を求める海域が、860㎢から2290㎢に増加することとなった。返還を要求する海域が増えたのは、2019年にレバノン軍が海上国境を画定する作業を実施したことが原因だ。

レバノンは該当海域を修正する法令を作成して、国連に提出した。

この法令は内閣による承認が保留となっているため、いまだにアウン大統領による署名がなされていない。ハッサン・ディアブ暫定首相は、閣僚の選任手続きが違法だとして閣議の開催を拒否している。

ヘイル国務次官の声明を受けて、アウン大統領は「レバノン・イスラエル間の海上国境を画定するための交渉を継続し、誠実で公正な仲介者としてアメリカが責務を果たせるようにすることが重要だ」と強く述べた。

大統領は述べた「レバノンには国益に沿って、国際法に則り、憲法の原則に従って、国際的な地位を向上させる権利がある」

アウン大統領は「国境線を画定するため国際的な専門家チームを任命し、カリッシュのガス田や近隣海域での探査作業を一切控えるよう約束する」よう求めた。

大統領は「レバノンの主権・権利・国益」を放棄せず、「国境画定についてはレバノン国民全体の同意が必要であり、決して国論が割れてはならず、交渉においてはレバノンの国際的地位を強化するためあらゆる努力を惜しまない」と強く述べた。

ヘイル国務次官はレバノン軍のトップを務めるジョセフ・アウン将軍と会談し「軍事費合理化決定事項が承認されたらどの程度軍に影響が出るか、さらに重大任務の遂行に及ぼす影響」が話し合いの中心となった。

ヘイル国務次官のベイルートでの会談は、ハリリ首相のモスクワ訪問と重なった。ロシア政府は15日、ウラジーミル・プーチン大統領とロシア外務省を訪問していたハリリ首相との間で電話会談が行われたと発表した。電話会談は50分に及んだ。

ロシア政府の声明によると、ハリリ首相はプーチン大統領に対し、組閣の実施と経済危機の克服におけるレバノン国内の進捗状況と当座の措置について説明したという。ロシア政府は、レバノンの主権・独立・領土保全を支持する立場を確認した。

モスクワに派遣されたレバノン代表団に参加した情報筋はアラブニュースに、プーチン大統領とハリリ首相の電話会談は「政府の危機にうまく対処したもので、早急に組閣を実施すべきという点が強調された」と語った。

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