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乾燥した中東の水不足問題は、技術の進歩で解決できるのか

Dar Si Hmadは、ドイツの「水基金」が開発した霧水捕集システム「CloudFisher」を、モロッコのBoutmezguida山に設置した。(提供)
Dar Si Hmadは、ドイツの「水基金」が開発した霧水捕集システム「CloudFisher」を、モロッコのBoutmezguida山に設置した。(提供)
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16 Apr 2021 11:04:19 GMT9
16 Apr 2021 11:04:19 GMT9
  • 天然地下水を過剰にくみ上げているため、地下水源の補充の速さが、需要に対応できていない
  • 科学、研究、教育が連携すれば、水の処理と保護に取り組むことができるかもしれない

カリーン・マレック

ドバイ:地球の表面の71%は水だが、中東・北アフリカ(MENA)地域には、この、生命を与える資源がほとんどない。

国連によると、同地域は世界で最も水が不足している地域であり、17カ国が水不足の基準を下回っていると考えられている。

人口の急増や貧弱なインフラ、過剰搾取によって、事態はますます悪化している。

世界銀行によると、MENA地域では農業だけで全取水量の約80%を占めている。

このように過剰にくみ上げているため、天然の地下水源の補充の速さが、需要に対応できていない

海水の淡水化や大型ダム計画が有力な解決策として支持されてきたが、これらには環境面でマイナス面がある。

現在、研究者らは、水の供給を守り、地域社会や農業界、産業界に、良い節水の習慣を奨励するための新しい手段を模索している。

世界銀行によると、MENA地域では農業だけで全取水量の約80%を占めている。(提供)

モロッコのNGO「開発と教育、文化のための地域連合Dar Si Hmad 」の事務局長、Jamila Bargach氏は、アラブニュースに対して「この、なくては生きられない、極めて重要な資源を守る手段はたくさんある」と語った。

「水の重要性を人々に再認識させることは、常に重要だ。その方法は、教育をする、個人消費者に水を守る必要があるということを気付かせる、産業や農業での節水方法を発見するための科学的研究を奨励する、などだ」

先日行われた、水に関する「pre-Expo 2020 ドバイ Thematic Week」という会議の前に、 Bargach氏は、水の処理と保護に取り組むには、科学、研究、教育が連携しなければならないと語った。

例えば、モロッコの農村では、霧水捕集技術の採用や、汽水の再利用で節水している。

Dar Si Hmadは、ドイツの「水基金」が開発した霧水捕集システム「CloudFisher」を、モロッコのBoutmezguida山に設置した。(提供)

「しかし、水の安全保障の障壁の一つは、残念ながら、産業界での水の過剰使用だ」とBargach氏は話した。

「ここでは農業が大問題だ。特に私がいるモロッコ南部は、かんきつ系の果物を欧州に大量に輸出している。そうすることで、ここの人々の多くの雇用が創出され、食料安全保障が維持されている」

モロッコの深い帯水層や人工貯水池の水位は、数カ月前に雨が降るまで下がり続けていた。水源が限界に達していることが示されている。

Bargach氏は、国際貿易の需要を原因として特定した。水がモロッコの輸出用果実の栽培に使われており、水が再び一杯になるよりもずっと速いペースであるため、大きな不均衡が生じている。

これに対処するために、同氏のNGOは、霧を集めて作った水の利用を促進している。これまでに、この技術を育成するためにモロッコの田舎で16の村と協力しており、既に他の8つの村とも協力している。この研究は、万博のサステナビリティ・パビリオンで展示された。

このネットは、霧に包まれたモロッコの Boutmezguida 山で初めてテストされた。エネルギーを一切使わず、1つのネットで1日に600リットル以上の飲料水を集めることができる。(提供)

Dar Si Hmadは、世界最大の稼働中の霧水捕集プロジェクトを担当している。ドイツの「水基金」が開発した「CloudFisher」は、合成繊維のネットを使い、空気から大気水蒸気を捕集する。

このネットは、霧に包まれたモロッコの Boutmezguida 山で初めてテストされた。エネルギーを一切使わず、1つのネットで1日に600リットル以上の飲料水を集めることができる。

「可能性はある」とBargach氏は言った。「しかし、事業の規模が非常に重要だ。規模が大きくなればなるほど、需要も増え、このシステムに組み込まれた無駄が出る可能性が高まる」

そのため、使用量を減らすことが、節水の一つの方法になる可能性がある。予測では、2030年までに水の供給量が劇的に減少するため、水の配給が新常態になる可能性がある。

モロッコでは、それが既に始まっている。1月、モロッコの大西洋沿岸の南部に位置するアガディール市では、水の消費量を制限するため、毎晩午後10時から断水が行われた。

研究者らは、水の供給を守り、地域社会や農業界、産業界に、良い節水の習慣を奨励するための新しい手段を模索している。(提供)

「水が不足し、その不足が高まっている。我々が生きていかなければならない未来の現実だ」とBargach氏は話した。

「地球のパターンは変化している。降水量・頻度も変化している。北アフリカや中東の多くの国では、我々は水を得る手段として主に雨を利用している」

水不足は、広い範囲に及ぶ人道的影響をもたらす可能性がある。干ばつは生活を破壊し、人々を農村部から都市部へと移動させ、最悪のシナリオでは紛争や不安になる。

UAEの国際協力担当国務大臣であり、2020年ドバイ万博招致委員会の責任者であるリーム・ハシミ氏にとって、水は、経済、文化、宗教的信仰を形成する、文明の活力源だ。

「水はまさに、我々が何者であるか、何をしているか、我々自身と子供たちの希望と夢の中核だ」と同氏は話した。

「しかし今日、我々は世界中の国々の共通の課題に直面している。需要の急増と供給の減少だ」

チェンナイからケープタウン、さらにはカリフォルニアまで、多くの地域社会はますます水不足や水へのアクセスの悪さの影響を受けている。(提供)

世界的な水危機が迫っている、と同氏は警告した。約11億人が既に水を確実に入手できておらず、27億人が1年のうち少なくとも1カ月は水不足に耐えている。2025年までに、世界人口の約3分の2が水不足に直面する可能性がある。

「これは経済の問題だけではなく、正義、公平、公正の問題でもある」とハシミ氏は述べた。「皆が必要としている、この、生命を維持するための資源へのアクセスを、我々はどうやって保証するのだろうか」

チェンナイからケープタウン、さらにはカリフォルニアまで、多くの地域社会はますます水不足や水へのアクセスの悪さの影響を受けている。「将来、確実に水不足になるので、水の先物がウォール街で売買されている」とハシミ氏は述べた。

「いわゆるブルーゴールドの輸出が拡大している。海洋専門家が予見しているのは、超大型タンカーが、石油ではなく、必需品が不足している国のために真水を積んで海を横断する世界だ」

同氏は、世界経済の中心の移動について話し、水が、進み続ける文明の中核にあると話した。

例えば、インド洋には地球上の水の約20%がある。インド洋沿岸の国々では約27億人が生活している。

インド洋のシーレーンは、世界のコンテナ船の半分を運び、ばら積み貨物輸送の3分の1、石油輸送の3分の2を担っている。

インド洋の海岸線や港は、ますます戦略地政学的な重要性を増している。各国は、影響力を得て、インフラ開発をしようとしのぎを削っている。

「海はあまりに広大で深く、支配できないため、一つの国やブロックが単独で領有権を主張することはできない」とハシミ氏は述べた。「世界の全ての水路は互いにつながっている。この貴重な資源の管理と保全に対する我々の責任もそうだ」

同氏は付け加えた。「我々は、誰のものでもなく、皆のものでもある、全ての外洋に対する世界的な責任へのコミットメントを共有することを真剣に考えている」

霧を集めて作った水の利用は、この技術を育成するために、これまでにモロッコの田舎の16の村で実施されており、他の8つの村でも利用される予定だ。(提供)

水の保護は共通責任だ、と同氏は言った。気候から生物多様性、包括性、知識と学習、旅行、接続性、健康と幸福まで、あらゆるものに影響を与える。

「それぞれが独自の存在でありながら、互いに深くつながっており、一人一人の生活への影響力が強い」と同氏は述べた。「世界のどこにいても、地域社会はますます水不足に悩まされている」

このような背景から、エキスポ2020は、政府や企業、地域社会に、人類共通の課題を解決するための新技術や手法を共有する機会を提供する、とハシミ氏は述べた。

「200以上の国や国際機関が集まり、世界中から来た数百万人の来場者が一生に一度の体験をし、有意義な改革に積極的に参加する力を与えられる。これは、数世代にわたって続く良い影響を与えるための、またとない機会だ」

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Twitter: @CalineMalek

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