• イランは16日、濃縮度60％のウラン製造を開始したと発表
• イランと米国の当局者たちが帰国して協議できるよう、交渉は区切りに至るまで数日間続くと見られている

米国のジョー・バイデン大統領は16日、イランによる濃縮度60％の高濃縮ウランの製造を、無益な行いだと批判したが、イラン政府が2015年のイラン核合意への米国・イラン両国の復帰に関して米政府と間接的な交渉を続けていることについては、歓迎する意向を示した。

イランは16日、ウランの濃縮度を60％にまで上げる作業を開始したと明らかにした。60％はイランで過去最大の濃縮度であり、核兵器レベルの90％に近づくものだ。ウラン製造が行われているナタンツ工場では今週初めに爆発事件が起きており、イラン政府はイスラエルが関与しているとして非難している。

バイデン大統領は、菅義偉首相とのワシントンでの共同記者会見で、記者団に対し「我々は、イランによる濃縮度60％のウラン製造を支持せず、まったく益のないことだと見ています」と述べた。

「しかし一方、イランが、これからどう進んでいくべきか、また（核合意に）復帰するためには何が必要なのかについて、我々および我々のパートナーたちと、間接的にではありますが話し合うことに同意する姿勢を変えていない点は、我々は歓迎しています。だからといって我々がしたくない譲歩をすることはありませんが」とバイデン大統領は付け加えた。

イランはここ数ヶ月ですでに濃縮度を20％の純度に引き上げていた。これは、高度のウラン濃縮とされるレベルであり、兵器レベルの濃縮に向けた大きな一歩と言える。

制裁解除の見返りにイランの核への野心の抑え込みを目指す、世界の諸大国とイランの間の2015年の核合意はウラン濃縮度の上限を3.67％としている。イランは、核兵器開発の意図を否定している。

イラン原子力庁のアリ・アクバル・サレヒ長官は国営テレビに、「私たちは1時間に濃縮度60％のウランを約9グラム製造しています」と語った。

「しかし、私たちは調整して製造量を1時間あたり5グラムに下げる予定です。そうなれば、濃縮度20％（のウラン）を同時に生産していくことになります」とサレヒ長官は言う。

長官の発言に先立ち、モハンマド・バーゲル・ガリバフ国会議長は、イランの科学者たちが深夜0時40分、濃縮度60％の高濃縮ウランの製造を成功裡に開始した、と宣言していた。

「イランという国の意志は、いかなる陰謀をも打ち破る奇跡を起こせるのです」とカリバフ議長はツイートしている。

国連の核監視機関としての役割を持つ、国際原子力機関（IAEA、本部ウィーン）のスポークスマンは、約60％のウラン濃縮を開始したというイランの発表についてコメントを拒否している。

今回のイランの動きは、核合意への復帰にイラン政府が本気ではないというサインと思うかという質問に対して、バイデン大統領は「話し合いは今も続いており、その結果について判断はまだできません。ただ、話し合いが継続していることは確かです」と答えている。

イランおよび各大国は、トランプ前米大統領が3年前に離脱した2015年の核合意を再び有効に活用するため、ウィーンで会合を行う予定だ。しかしこの交渉も、ウラン濃縮度を高めるというイラン政府の決定によって複雑なものになる可能性がある。

欧州連合（EU）の当局者は16日、イランと米国の当局者たちが帰国して協議できるよう、交渉は区切りに至るまで数日間続くだろうと述べた。

「私たちには、ウランの濃縮度を60％まで引き上げるという今回の（イランの）決定が、条件として与えられました。これは明らかに、交渉を簡単にしてくれるものではありません」とEU当局者は記者団に語り、ナタンツでの高濃縮ウラン製造を「意図的な妨害」と呼んだ。

関連の話し合いにおけるイラン側の主任交渉者であるアッバス・アラグチ外務次官は13日、イランはナタンツで最先端の遠心分離機を1,000台稼働させるだろうと述べた。

イスラエルの複数のメディアは、同国の情報機関・モサドがナタンツの複合施設で妨害活動を行ったという、匿名の諜報筋の話を引用して報じている。イスラエルは中東における唯一の核兵器保有国とされているが、ナタンツの事件については正式なコメントは出していない。

イスラエルのガビ・アシュケナジ外相は、イランが核兵器を保有しないようにするためには「必要なことは何でも」行うと述べている。

ロイター