• ガソリンスタンドや医療施設で喧嘩騒ぎが起こる

ナジア・フッサリ

ベイルート：ここ数十年間で最悪の経済・金融危機に見舞われているレバノン各地の薬局は11日、深刻な供給不足が起きていることに抗議し営業を停止した。

薬・ガソリン・粉ミルクさえ不足したため2日間に及ぶストライキが実施されたことは、レバノン社会が崩壊の危機にあることを示す最新の兆候だ。

11日に、薬剤師・医師・歯科医師・看護師・検査技師たちが街頭に繰り出し、自らの置かれた苦境を訴えた。保健省の中庭に押しかけ、医療品に対する助成金を適正に支出し医療部門で起きている危機を解決するよう要求した。

彼らは世界保健機関（WHO）に対し、政府当局を相手にせず、レバノン軍やレバノン赤十字社と協議するよう求めた。

今回のストライキにより、医療品不足に苦しむ病院ではパニックが起きた。

患者と医療従事者の間で喧嘩が起きているとの報道があり、一部の事件の様子が動画撮影されSNS上に投稿されている。

救急外来の建物外部を破壊する人すら出てくる一方で、医者たちは医薬品不足による手術延期を拒否する患者たちと激しく衝突せざるを得ない状態が続いている。

ハディ・ムラド医師は、人々の権利を侵害した「支配階級が腐敗をただそうとせず」、腐敗した制度により「罰せられず、支援され、保護されている」ことを非難した。

「こんなことは前代未聞です」とムラド医師はアラブニュースに語った。

「患者を助けられないのです。薬を処方しても、薬局の在庫は空です。血液検査を依頼しても、助成金対象の物資が不足しているため検査室は患者を受け入れてくれません。入院患者を受け入れたくても、病院では点滴の在庫が底をついています。燃料も小麦粉もないというのは承知しています。しかし、こうした事態を引き起こした責任は患者側にあるのでしょうか？現在起きていることは意図されたものであり、当局はあくまで市民を見殺しにするつもりです」

さらにムラド医師は、ハマド・ハサン保健相が医薬品倉庫の在庫を調査するため強制捜索を実施すると発表したことを「メディア向けのパフォーマンス」にすぎないと一蹴した。

「保健相が調査対象としたのは、当局や政治家とのコネがない一般庶民が所有する倉庫だけです。保健相は責任を全く果たしていません。保健衛生調査や法的手続きはどうなっているのでしょう？大臣のやっていることは無意味です」

医薬品不足が助成金廃止の前触れなのかと聞かれると、ムラド医師はこう答えた。「助成金を廃止しようとしているのです。中央銀行が9か月前の請求書の支払いをまだ済ませていないため、輸入企業側は医薬品の出荷を拒否している状態です。したがって、医薬品は闇市場のドル為替レートを基準にした価格で販売されることになります。助成金を受けた医薬品はもう手に入りません」

全国各地で騒動が起きている。

経済状況に対する抗議デモとガソリンスタンドで給油を待つ長蛇の列が、ベイルートとベッカー高原やトリポリに通じる道路で再び見られるようになった。

ベイルートのタリック・ジデ地区のガソリンスタンドでは、給油の順番を巡って喧嘩騒ぎが発生した。空に向けて銃弾が撃たれた。

コーニッシュ・アル・マズラー地区では、人々が閉鎖していた道路の通行を再開させるため機動隊が出動を余儀なくされた。

ガソリンスタンド経営者組合の広報担当者ジョージ・ブラックス氏は、ガソリンとディーゼルは「今のところ」枯渇する心配はないと述べ、市民を安心させようとした。

ブラックス氏はガソリンスタンドで見苦しい真似はしないよう人々に要請した。輸入業者の貯蔵タンクには在庫があり、今後2週間の需要を満たせるという。

「今後数日で、複数の船がレバノンに到着します」と付け加えた。

10日夜に中央銀行は、2019年の同時期と比較して、2021年に輸入されたガソリン・ディーゼル・家庭用ガスの量が10％増加したと発表した。

「現在、輸入業者のタンクにはガソリン6600万リットルとディーゼル1億900万リットルの在庫があり、ガソリンスタンドの在庫を加えると、今後10日～14日間のレバノンの需要を十分満たすことが可能だ。銀行側が最低限必要な資金確保を怠らない限り、燃料輸入用の与信枠の設定許可が当局から出される」

中央銀行は当局に対し「銀行側の責任ではないため必要な措置を講じるよう」求め、「2カ月以上前に2800万ドル相当の燃料や石油2隻分を輸入する許可を受けておきながら、いまだに船荷を受け取ろうとしない某石油輸入企業」を非難した。