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ヒズボラはどのようにしてレバノン国家に浸透してきたか

2020年7月28日、レバノンのレバノンとイスラエルの国境近くのアダイセ村で、ヒズボラの指導者サイード・ハッサン・ナスルッラーフ氏を描いたポスターを車が通りすぎる様子。(ロイター)
2020年7月28日、レバノンのレバノンとイスラエルの国境近くのアダイセ村で、ヒズボラの指導者サイード・ハッサン・ナスルッラーフ氏を描いたポスターを車が通りすぎる様子。(ロイター)
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09 Jul 2021 07:07:42 GMT9
09 Jul 2021 07:07:42 GMT9
  • 英国のトップシンクタンクによる新しい論文で、イランが支援する組織がどのようにしてその影響力を拡大してきたかが詳述されている
  • ヒズボラは 「レバノンの政治システムの産物」であると、アラブニュースが参加したイベントで著者が語った

クリストファー・ハミル-スチュワート

ロンドン:今週発表された論文によると、「レバノン国家に浸透する」ため、ヒズボラはイランの資金支援者と大規模な軍備を使ってきたという。

ロンドンを拠点とするシンクタンクであるチャタムハウスの中東・北アフリカプログラムのディレクターであるリナ・カティブ氏により執筆され、アラブニュースが参加した木曜日のオンラインイベントにおいて発表された当論文では、ヒズボラが、イスラエルの占領に対する抵抗組織から、レバノン国家をイデオロギー的に締め付けるハイブリッド勢力へと変化した経緯が詳述されている。

論文には「ヒズボラは、共和国大統領職から代表的な政治機関や官公庁まで、そしてレバノンの軍事および治安機関など、レバノン国家のあらゆる場所にその影響力を広げている」と記述されている。

「この影響力は、次のようないくつかの要因によるものである:ヒズボラが、レバノンの他の政党とは異なり、頼りになる外部の後援者であるイランから恩恵を受けていること、ヒズボラが、組織、資金、物的資源、信奉者数などの面で、比較するとレバノンの他政党のそれが小さく見えるほどの能力を有していること。」

同論文によると、ヒズボラが使用するその他の手段には「レバノン国家の脆弱性」や、「エリート協定に基づく政治システム 」の存在が含まれる。

カティブ氏はイベント参加者に対し、アナリスト、特に欧米のアナリストには、レバノンとヒズボラの関係を理解するために「微妙なニュアンスを有する」アプローチをとるよう勧めると述べた。

「ヒズボラはレバノン国家の脆弱性の要因ではあるが、レバノンの政治システムの産物でもある」と彼女は述べた。

「レバノンの現在の政治システムが存続する限り、ヒズボラのレバノン国家に対する支配を逆転させることは不可能である。」

カティブ氏は、学者や政策決定者の間では一般的であるように、ヒズボラを「国家の中の国家」と位置付けることは不正確である、と述べた。

そのような位置づけは、「ヒズボラがレバノン国家全体から完全に分離された形で活動しているとほのめかすものだ。代わりに、私が主張するのは、ヒズボラはレバノンの国家に浸透しているということだ」と彼女は付け加えた。

「そして、『国家』と言う時、私は単に国家機関について話しているのではなく、レバノンの権力争いの場としての国家について話しているのだ。

「このことは、私が思うに、ヒズボラが、レバノンの他組織とは異なり、どのように監視能力を有しているかによって鮮明に示されている。つまり、ヒズボラは単に国家機関内で起こることを監視しているのではなく、文化、社会、教育、経済のようなあらゆる分野で味方と敵対者を監視しているのである。このことは、ヒズボラにとって大きな戦術的アドバンテージとなっている。」

カティブ氏は、他の政党もまた、自分たちの利益のためにレバノン国家を利用しているが、「ヒズボラは、そのほかとは異なり、敵対者と味方の両方に対して強制力を持っており、このこともヒズボラを有利にしている。」と述べた。

米国平和研究所の上級顧問であるモナ・ヤコビアン氏が述べたところによると、ヒズボラは20世紀末の 「イスラエルの占領に対する抵抗のるつぼ」から「レバノンの腐敗した縁故主義システムを守る近衛兵」化へと移行したという。

ヒズボラは「自身が有する武器、および、その武器が国家管理の策略の枠外に置かれているということを理由に」国内の他政党とは異なる、と彼女は付け加えた。

レバノンの政治シーンに遅れて登場したにもかかわらず、このシーア派組織は「レバノンの政治階級の最も腐敗した慣行の一部を導入および模倣しており、ある意味ではレバノンの政治システムと完全に絡み合ってしまった。」とヤコビアン氏は語った。

彼女は「ヒズボラは国会、省庁、公官庁などの国家機関をますます利用しており、権力を獲得し、後援を拡大し、収入を得るためにその影響力を使っている。」と付け加えた。

しかし、ヤコビアン氏は、そのような行動によって、このイランの代理人はしっぺ返しを食らっている、と述べている。「我々が2019年10月の(レバノンでの)抗議活動およびそれ以降に目にしたのは、ヒズボラが腐敗と無関係であるとはもはや見なされていないということだ」と彼女は付け加えた。

「そのような行動によってヒズボラが色あせてしまったことが見て取れる。自身の基盤内でさえ、不信感が高まっている。」

レバノンは150年以上ぶりに最悪の財政危機に見舞われており、水曜日にはハッサン・ディアブ首相が、国が「社会的に爆発するまで数日」だと警告した。

ヤコビアン氏は、爆発が迫っていることを受けて、彼女が考える今後の重要な問題は「国家の完全な崩壊によるヒズボラへの影響はどのようなものになるのだろうか?なぜなら、それは現実に起こりえることだと思うからだ。」と語った。

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