• 8月3日にエルシーシ大統領は見込まれる価格上昇がいくらになるかを明らかにしなかった
• エルシーシ大統領は食料生産工場の開設式で「1斤5ピアストルのパン価格を引き上げる時が来た」と述べた

カイロ：エジプトのアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領は、国の補助金が拠出されているパンの価格を引き上げる時が来た、と述べた。この問題が俎上に載せられるのは1977年以来のことだ。その時は、暴動の発生を前にして、アンワル・サダト大統領が価格引き上げを取り下げた。

8月3日にエルシーシ大統領は見込まれる価格上昇がいくらになるかを明らかにしなかったが、世界最大の小麦輸入国の食料補助制度のいかなる変更もきわめて敏感な問題だ。ホスニ・ムバラク元大統領を引きずり下ろした2011年の暴動で唱えられた象徴的なスローガンの最初の言葉は「パン」だった。

現在、エジプトではパンは6000万人以上の国民を対象に1斤0.05エジプトポンド（0.0032ドル）で販売されている。拡張される一方の補助金制度により、対象者は1日に5斤のパンだけでなく、パスタやコメなども割り当てられており、その費用は数十億ドルに上っている。

エルシーシ大統領は食料生産工場の開設式で、「1斤5ピアストルのパン価格を引き上げる時が来た」と述べた。「この仕事（価格引き上げ）は首相や供給相に任せるようにと進言する人もいるかもしれない。だが、それは違う。私自身が、我が国、わが国民の前で行う」

「たばこ1本の値段で20斤ものパンを販売するなどとんでもない話だ」

1977年の激しいパン暴動を引き起こした前回の補助金制度変更の試みは、アンワル・サダト元大統領と国際通貨基金（IMF）の融資協定の一環として合意されたものだった。

エルシーシ政権もIMFに頼っている。IMFは2016年にエジプトに120億ドルの融資を行い、昨年には52億ドルの期間1年の融資を行った。ただし、食料補助金はもっとも必要とする人たちに限定する必要があるとの指定付きだ。

融資プログラムは燃料価格と電気料金の値上げも求めている。

「パンの生産コストは65ないし60ピアストルだが、そこまでの大幅値上げをすると言っているわけではない。だが、（価格引き上げは）必要だ」と、エルシーシ大統領は述べた。

「この2、30年間、この問題ほど停滞を見た問題はない。国民が、この数字には触らせないぞ、と言っているからだ」

エルシーシ大統領の発言を受けて、エジプト供給省はただちにパン価格引き上げの調査にとりかかり、得られた知見を可及的速やかに内閣に提示する、とアリ・モゼルヒ供給相が現地紙エルワタンに語った。

エルシーシ大統領は、パン価格を据え置いたまま、十分に裕福だと見られる層に対象を絞って、エジプトの巨大な補助金制度を抑制しようと試みてきた。

農業組合長のフセイン・アブ・サダム氏は、「この決定は正しく、タイミングも実に適切だ。古い慣行・慣習を終わらせるのに役立つ。これまで常に、大統領はパン価格に触れることを恐れていた。貧者の抗議が怖かったのだ」と、ロイターに語った。

3日午後、「パンは例外」と訳されるハッシュタグが、ツイート数4000件以上となり、エジプトのツイッターで急拡散した。

昨年、エジプトは補助金を拠出しているパン1斤のサイズを20グラム削った。パン生産業者が標準的な100キログラムの小麦粉の袋から固定価格のパンをより多く作れるようにだ。

エルシーシ大統領は、「今回の件が、価格急騰を計画しているかのように、誤って受け取られないことを願っている。バランスを取りたい、と言っているだけだ」とも述べている。

エジプトは2021/22年度予算で、必需品の供給と農家支援に878億エジプトポンド（56億ドル）の補助金を割り当てている。

うち、448億ポンドがパン補助金だ。

予算を見ると、政府は小麦価格を2021/2022年度はトン当たり255.00ドルと想定している。前年度はトン当たり193.90ドルだった。エジプトによる直近の小麦購入に当たる2日の購入価格は、運賃込み条件でトン当たり293.74ドルだった。

新型コロナウイルスのパンデミックでは、供給懸念から世界の小麦価格が反発している。

ロイター