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スーダン当局、ハマス支援の扉を封鎖

オマル・バシール氏は当時ハマスへの支援を公言しており、同組織の指導者らとも友好関係にあった。 (AFP/File)
オマル・バシール氏は当時ハマスへの支援を公言しており、同組織の指導者らとも友好関係にあった。 (AFP/File)
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24 Sep 2021 03:09:00 GMT9
24 Sep 2021 03:09:00 GMT9
  • ハマスとの関係が指摘される企業の接収はスーダン政府と西側諸国の関係改善に一役買った

ハルツーム: スーダン当局は多大な利益を上げで長年ハマスを支援してきた資産を接収した。これにより、オマル・バシール前大統領の政権下でスーダンがパレスチナ軍事組織の避難場所となっていた実態が明らかになった。

当局がハマスとの関連性を指摘する少なくとも12の企業の接収は、2019年のバシール氏失脚以降のスーダン政府と西側諸国の関係改善に一役買った。

この1年間でスーダン政府は米国のテロ支援国家(SST)リストから除外され、500億ドル超の負債に関しても救済処置を得られる見込みである。

ハマスにとっては、メンバーや支援者が生活し、資金獲得を行い、イランからの武器や資金をガザ地区に送る海外ベースを失ったことを意味する、とスーダンおよびパレスチナの専門家は指摘する。

押収され、スーダン政府高官や西側諸国の諜報筋によって明らかにされた資産は、どれほどこれらネットワークの影響が広範囲に及んでいたかを物語っている。
バシール体制解体のために設けられた特別委員会によると、資産には不動産、企業株式、ハルツーム中心部にあるホテル、信用情報交換所、テレビ局、1万エーカーを超える規模の農地が含まれるという。スーダンは資金洗浄やテロリストの資金繰りの温床となっていた、と「1989年6月30日に発足した政権の解体と公的資金回収のための」特別委員会のリーダーであるワグディ・サリフ氏は述べる。

このシステムは「国内外向けの大きな隠れ蓑であり、大きな傘であった」と同氏は語る。

西側諜報筋によれば、企業は受託者名義で登録され、家賃を現金で徴収し、資金移動は信用情報交換所を通して行われる、など組織犯罪が利用する手法がスーダンでは使われていた。

バシール氏は当時ハマスへの支援を公言しており、同組織の指導者らとも友好関係にあった。

「入札や免税などで優遇され、ハマスやガザ地区に対する無制限の資金移動が許されていた」と特別委員会のある委員は匿名を条件に語った。

スーダンのパーリア国家から米国同盟国への道のりは段階的であった。1989年にバシール氏が政権を握った後10年の間にスーダンは過激派の本拠地となり、数年間故オサマ・ビン・ラデン容疑者を匿っていた。そしてパレスチナ軍事組織との関係性から米国の制裁対象となった。

ハマスにとっては、メンバーや支援者が生活し、資金獲得を行い、イランからの武器や資金をガザ地区に送る海外ベースを失ったことを意味する、とスーダンおよびパレスチナの専門家は指摘する。

のちにバシール氏は過激主義と距離を置き始め、米国政府と安全保障分野での協調を模索した。2016年にスーダン政府はイランとの国交を断絶し、翌年ハマスへの国家的な支援が終了したことを米国政府が確認した上で、スーダン政府に対する米国の貿易制裁は解除された。
だが、バシール氏が失脚するまで、ハマスを支援していたネットワークは依然として存在していた。

特別委員会の委員によれば、スーダンにおけるハマスの投資はファーストフード店などの小規模な企業を通して始まり、そこから不動産や建設業などへと広がっていった、という。

ハッサン・アンド・アラベドという企業はその例だ。セメント企業として始まった同社は大規模不動産開発へと事業を拡大していった。

特別委員会は同社が他10社などと共に、株式保有などを共有するバシール氏の盟友アブデルバシト・ハムザ氏に関連するネットワークの一員を為し、海外の銀行口座を用いて多額の資金を移送していた、としている。

その中で最大のものは、2007年に設立されハルツームの証券取引所に上場されたアルロワド不動産開発会社だ。西側諜報筋によれば、同社の子会社はハマスの資金調達のため資金洗浄や為替取引を行なっていた。

ハムザ氏は4月に汚職の罪で逮捕され、バシール氏が収監されているハルツームの刑務所に刑期10年で送致された。特別委員会によれば、彼は自身の名義で12億ドルを超える資産を保有している、という。バシール氏の弁護士でもあるハムザ氏の弁護士からはコメントが得られなかった。

またテレビ局タイバとアルミシュカトという関連慈善団体の周辺では2000万ドルにおよぶ規模のネットワークの存在が明らかになった。このネットワークはスーダン国籍を獲得したハマスメンバー2名によって管理され企業や不動産を多く買収していた、とタイバの管理人として起用されたマヘル・アブールジョフ氏は述べる。このテレビ局は湾岸地域からの資金を送り込み、何百万ドルもの資金を洗浄し、ハマスと明白な関係を持っていた、とアブールジョフ氏は付け加えた。

ハマス高官のサミー・アブ・ズフリ氏はロイター通信に対して、同組織がスーダンに投資していることは否認したが、スーダン政局の変遷はハマスに影響があることを認めた。「遺憾ながら同国内(スーダン)および同国との限定的な政治的な接点における(ハマスの)活動の存在が弱まることになった要因がいくつかあった」と同氏は述べた。

昨年の時点でスーダンは、負債救済ならびに国際貸出機関からの支援獲得の必要条件であるテロ支援国家リストからの解除に躍起になっていた。

同国は、UAE、バーレーン、モロッコと共にイスラエルとの国交正常化に合意したが、合意の具体的な履行にはここまで慎重である。

トランプ政権下でスーダン関連の業務についていた元外交官は、ハマスのネットワークの封鎖はスーダン政府との交渉の焦点であった、と語る。「我々は開かれた扉を押しているようなものであった」と彼は言う。

スーダン政府筋および前述の西側諜報筋によると、米国は閉鎖すべき企業のリストをスーダンに渡した、という。米国務省はコメントを拒否した。

ハマスに関係する人物の多くは流動資産を持ってトルコへ行ったが、総投資額の80%は置き去りにされた、と特別委員会の委員は語った。

スーダン暫定政府の指導者たちは「自身が地域社会においてバシール氏とは正反対の存在であるとみなしている」とスーダン専門家のマグディ・エル・ガズーリ氏は語る。「地域の安全保障秩序の一員として認められたいと願っているのだ」という。

「バシール氏に対するクーデターはハマスとイランにとって大きな問題を引き起こした」と語るのはパレスチナ専門家のアドナン・アブ・アメール氏だ。「ハマスとイランは代わりとなる場所を見つけなければならなかった。バシール氏に対するクーデターが突然であったため、そうした代わりとなる場所は準備されていなかったのだ」という。

ロイター

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