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危機に瀕したレバノン、混乱に包まれた学年度

学校は既に過去2年間、一連の出来事で混乱させられている。2019年に始まった抗議活動では学年度が中断された。そして貧困率の上昇である。(AP)
学校は既に過去2年間、一連の出来事で混乱させられている。2019年に始まった抗議活動では学年度が中断された。そして貧困率の上昇である。(AP)
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01 Oct 2021 05:10:04 GMT9
01 Oct 2021 05:10:04 GMT9
  • 何千人もの教員がストライキをしており、ハイパーインフレと通貨の暴落に対処するため給与調整を要求している
  • 苦境に陥った親たちは、一流の教育が謳われていることの多い私立学校から公立学校に子供を転校させている

ベイルート:今年秋、レバノンの学年度は混乱に包まれている。財政・経済破綻しているレバノンの他の領域の全てを飲み込んでいるのと同じ混乱である。

何千人もの教員がストライキをしており、ハイパーインフレや通貨の暴落に対処するため給与調整を要求している。現在の月給は、かろうじて車のガソリンタンクを2回満たせる程度である。

厳しい燃料不足により、満タンにできるかどうかも定かではない。スクールバスはもはや当たり前のものではなくなっており、寒くなる冬季の教室の暖房は保証されていると言うには程遠い。

学校の開始は何度も延期されてきた。資金繰りの苦しい政府が、推定約5億ドルの調整パッケージについて教員組合と交渉を行っているからだ。

その結果、私立学校の中には授業を始めたところもあるが、レバノンの120万人の生徒の大部分は依然として、いつになったら学校に戻れるのか分からない状態である。その一方、教員たちは外国でのより良い機会を求め、大挙して辞職している。

多くの人が恐れているのは単に学年度が失われることではなく、卒業した科学者や技術者の人数で世界的な競争力を誇っていた国の失われた世代となってしまうことを恐れている。

学校は既に過去2年間、一連の出来事で混乱させられている。2019年末に始まった抗議活動では学年度が中断された。2020年にはパンデミックのために大部分がオンライン授業に切り替わった。そして貧困率の上昇。ユニセフによると、2020年は約40万人の子供たちが学校に通っていないという。

苦境に陥った親たちは、一流の教育が謳われていることの多い私立学校から公立学校へと自分たちの子供を転校させている。「セーブ・ザ・チルドレン」のアラア・ハメイド氏によると、去年5万人以上の生徒が転校したが、この人数は今年さらに多くなる可能性が高いと言う。

これにより、リソース不足の公共部門が圧迫され、シリアとパレスチナの難民の入学が犠牲になる可能性が高い。難民たちはレバノンの公共システムが頼りだ。

「将来的に空白が生じる可能性を作りたくはありません。世代全体が教育を受けられなくなるかもしれません」と、アラア・ハメイド氏は述べ、教育リソースの拡充を求めている。

国連の統計によると、現在レバノンの人口の55%が貧困以下の生活状況にある。なお、2018年には28%だった。かつては大きかった中流層が実質的に一掃されてしまった。通貨の対ドルの価値は90%失われ、給与は激減した。

教員組合の代表を務めるロドルフ・アブード氏によると、レバノンの私立学校の教師5万3千人のうち15%以上が国外へ流出し、大きな人手不足が生じていると言う。

この苦境に加え、去年のベイルート港の爆発事故で首都が破壊され、180以上の教育機関が被害を受けた。

苦難の中、親たちは固い決意で自分たちの子供を学校に通わせ続ける方法を模索している。

ララ・ナサール氏(38)は、徐々に貧困に陥っていく一家のやりくりをしている。

ナサール氏は以前はアラビア語幼稚園教師だった。氏の夫の経営するフードビジネスは繁盛しており、3人の子供たちは私立学校に通っていた。しかし、この3年、コストを切り詰めるため、2人の息子(現在は18歳と15歳)を最上級の私立学校から転校させることを余儀なくされた。最初は学費の安い学校へ、その後は公立学校へ。

辛い決断だったが、現在5年生になる娘は、初等教育が終わるまでは私立学校に通わせたいとナサール氏は望んだのだ。

「私は娘を写真に収めています。2年後には公立学校に転校させなければならないことを、本人も分かっているのです。このままというわけにはいきません」ナサール氏はそう語る。

パンデミック中に対面授業が減ったため、ナサール氏は去年解雇された。財政危機のため、氏の夫は従業員を解雇し、事業を大幅に縮小せざるを得なかった。家庭料理を用意する代わりに、燃料や当てにならない冷蔵庫を使わない小規模で基礎的な食料雑貨店を経営している。

今や、ナサール氏が夫の唯一の従業員である。教員ストライキが行われる中、ナサール氏の幼稚園から復職の申し出があった。しかし夫を手伝うため、ナサール氏は申し出を断った。

「私たちは爪に火を灯すように生活しているのです」ナサール氏はそう語る。

ナサール氏は娘の学校からの財政支援を確保することができた。学費の50%が減免になる。授業が始まる1週間前、ナサール氏は引き続き地域の慈善団体で中古の本を探しているところだった。

息子たちがバスケットボールが大好きであることを話すうち、ナサール氏は泣き出してしまった。息子たちは以前は毎年新しいシューズを買うためにお小遣いを節約していた。今、ナサール氏は学校用の靴を買ってやるのが精一杯である。その費用は、国の最低賃金の1ヶ月分の給与に近い額だ。

「どうしてこんなことを心配しなければならないのでしょう?」ナサール氏はそう語る。

ナイマ・サダカ氏は経済危機の展開を3年前に立ち上げたフェイスブックのページで見守っていた。サウジアラビアから家族とともに帰国した後、自分の子供をどの学校に入学させるべきかを見極めるためだ。

ここ数ヶ月で「スクールズ・イン・レバノン(Schools in Lebanon)」のページの会員は50%増加し、1万2千人となった。質問やコメントは、おすすめの私立学校を探す親たちのものから、中古本の広告や、スクールバスが不足する中、車の相乗りの手配の投稿へと変化してきた。

多くの人はサダカ氏に個人メッセージを送信して中古の制服を求める。恥ずかしくてページ上には投稿できないからだ、とサダカ氏は言う。

親は子供の発達やスキルセットの心配をすべきだが、「ここでは、私たちはただ学校に通わせることだけを心配しています」と、南部の都市シドンに住むサダカ氏は語る。

公共の交通機関はほとんどなく、スクールバスの運賃は3倍になり、政府当局は役に立たない。そのためサダカ氏は、自分で3人の子供の通学手段を考えなければならなかった。

9歳と10歳の子供については、通っている学校の近辺に通勤している近所の人に乗せてもらうよう手配した。イスラム教の慈善団体が資金提供してくれた。公立学校の1年生の娘については、サダカ氏はそこでフランス語を教える仕事を受注した。つまりガソリン代になる。サダカ氏の夫が毎朝、サダカ氏と娘をそこまで送っていく。

以前サウジアラビアで教師をしていたサダカ氏は、帰国したことを後悔していると言う。「まるで15年前に戻ったかのようです」と、乏しい給与を受け取りながらサダカ氏は語る。

かつてレバノンの銀行と病院は国家の誇りと現金の源だったが、経済危機に見舞われてからは、「教育部門を救わなければ、私たちには何も残らないことになります」とサダカ氏は言う。

2児の母であるマヤ氏は安全策を取った。燃料不足が厳しいものとなったため、8月に国を離れることを決意した。いつ学校に戻れるかは未定である。

マヤ氏は夫とともにキプロスに移り住んだ。そこで6歳と8歳の子供を英語学校に入学させた。キプロス島で唯一のフランス語学校は最近来たレバノンの生徒で一杯になっている。キプロスからの電話でマヤ氏は、新しいコミュニティに馴染んでおり、プライバシーを守るために名字は載せないで欲しいと言っていた。

マヤ氏によると、マヤ氏の子供が通っていたレバノンの私立学校では、少なくとも50人の教師に加え、マヤ氏の娘のクラスの半数がいなくなってしまったと言う。

「誰が子供たちの教育をするのでしょうか? 友達は残っているのでしょうか? これを私は心配していました。常識が変わってしまったのです」

AP

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