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トルコ、動議によりシリアにおける新たな軍事行動が可能に

2018年1月28日親トルコ・シリア人部隊とトルコ軍部隊がシリア・アフリーンのクルド人支配地域とトルコが支配するアザーズの町を隔てるブルサヤの丘を制圧する。(AP Photo)
2018年1月28日親トルコ・シリア人部隊とトルコ軍部隊がシリア・アフリーンのクルド人支配地域とトルコが支配するアザーズの町を隔てるブルサヤの丘を制圧する。(AP Photo)
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28 Oct 2021 03:10:40 GMT9
28 Oct 2021 03:10:40 GMT9
  • 動議はトルコの国家安全保障が脅かされた場合の越境活動を可能とするものだ
  • トルコはシリア北部のユーフラテス川東岸地域におけるクルド人民防衛隊による脅威が増している、と警告している

メネクセ・トキャイ

アンカラ:トルコ国会はイラクおよびシリアにおける対テロ活動のための軍派遣をさらに2年間延長する動議を批准した。これにより近い将来トルコ軍による新たな越境活動が実施されることが懸念されている。

今回の動議はトルコ軍護衛車の隊列や補強部隊がシリアとの国境に派兵されたのと同時に行われた。

主要野党の共和人民党およびクルド系の国民民主主義党を除いた与党公正発展党・民主主義者行動党と野党優良党が紛争の続くトルコ・シリア国境地帯の危険性および脅威の高まりを強調する動議に賛成した。

また動議には、トルコは「イラクの領土保全性・国家統一性・安定性の保護を重要視する」が「イラクにおける違法組織クルディスタン労働者党(PKK)やダーイシュの存在は(中略)地域の平和と安定、およびトルコの安全保障に対して直接的な脅威をもたらす」と明記された。

トルコ軍はイラク北部カンディル地域にあるPKKの潜伏拠点に対する攻撃を定期的に実施しているが、イラク政府はこれらの軍事行動が「イラクの主権を侵害する」と非難している。

反体制派が支配するイドリブ県をとりまく状況に関して動議は「アスタナ会合によって始まった平和と安定の枠組みが脅威にさらされ続けている」としている。

今回の動議はトルコの国家安全保障が脅かされた場合の越境活動を可能とするものだ。

トルコは2016年以来「ユーフラテスの盾」「オリーブの枝」「平和の泉」と3度にわたってシリア北部への越境軍事行動を実施してきた。そのうちの2回はクルド人勢力に対する攻撃であった。タル・アブヤド、ジャラーブルス、アフリーンを含む安全地帯とされる地域は現在トルコの支配下にある。

最近になってトルコはシリア北部のユーフラテス川東岸地域におけるクルド人民防衛隊(YPG)によるトルコ側の国境の町への砲撃や警官殺害などの脅威が増している、と警告している。トルコ政府高官は同地域において軍事行動を実施する可能性に言及している。

シリア国軍高官からアラブニュースに伝えられた情報によると、トルコ軍側はシリア国軍に対して軍事行動に向けた部隊準備を要請したというが、その作戦の詳細や時期、攻撃目標に関しては明らかにされなかった。

オムラン戦略研究センターの専門家でアンカラにあるトルコ中東研究センター(ORSAM)の非常勤研究員を務める紛争アナリストのナッヴァール・サバン氏は、トルコは越境軍事行動の準備をちらつかせてロシア側に圧力をかけている、とみている。

一方でサバン氏は、トルコ政府はおそらく「地域状況の機が熟するのを待ってから」軍事行動をとるだろう、と付け加えた。

「個人的には、すぐに軍事行動が実施されることはない、と考える。トルコ側は北部のシリア民主軍拠点に対する砲撃を強化し、この地域におけるロシア政府との交渉の切り札として軍事行動を利用するだろう」と同氏はアラブニュースに対して語った。

「トルコは軍司令官数名にシリア北部ラス・アル・アインに向けて増援を派遣するよう指示している。私が思うには、トルコは現地の代理軍事勢力を利用していくつかの前線で時間を稼ぎ、そのあとで全参加者が受け入れられる条件の交渉の場にロシアを引き出そうとしている」とサバン氏は述べた。

攻勢に出ようというトルコの動きに対してロシアは立場を明確にしておらず、アスタナ会合の和平プロセスに基づく二国間の約束の範囲内でトルコ政府がどこまで、どれほどの行動を起こすのかを地域の安全保障国として見守っている状況だ。

これとは別に米国上院は月曜日にジェフ・フレーク氏の在トルコ大使任命を承認した。トルコ政府は米国が対ダーイシュ戦略の主要地域協力者としてYPGを支援していることを批判し続けている。

中東政治評論家レヴェント・ケマル氏は、タル・リファートやタル・タムルにおいてトルコにさらなる攻撃を許すことにロシアは二の足を踏んでいる、とみている。

シリア北西部に位置するタル・リファートは2016年よりYPGの支配下に置かれており、2018年のトルコ軍による攻撃を受けてアフリーンを脱出したクルド人が住民の大半を占める。トルコ政府はタル・リファートを攻撃の「発射拠点」として使っているとしてYPGを非難している。

「米国とトルコの両大統領は今週会談を予定している。長いこと期待されていたトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領と米国のジョー・バイデン大統領の会談を前にして、トルコが軍事行動を起こす可能性は低い。同じ戦線において米露両国を怒らせることはリスクが高すぎる」とケマル氏はアラブニュースに対して語った。

この数ヶ月トルコ政府が支援する反政府勢力が劣勢に立たされているイドリブとタル・リファートの支配権を交換することについて、トルコとロシアの高官協議が行われている、と報じられている。

トルコとロシアが交換に合意した場合、エルドアン氏は戦略的に重要な領土をクルド人勢力から奪ったとしてトルコの国家主義的支持基盤から強い支持を得られる可能性がある。だが専門家はシリアがタル・リファートの支配権だけのためにイドリブの支配権を完全に放棄することはなく、替わりとしてさらに多くの領土を要求するだろう、とみている。

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