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イラクの市民社会抗議運動、議会での発言力を模索

ナシリヤ中央部のアル・ハブービ広場に集まるデモ参加者。(AFP)
ナシリヤ中央部のアル・ハブービ広場に集まるデモ参加者。(AFP)
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04 Nov 2021 06:11:24 GMT9
04 Nov 2021 06:11:24 GMT9
  • 舞台裏で、議会の多数派を作るための連合の形成を巡る議論が行われている

ナシリヤ:イラクで初めて、新しいタイプの議員が国会入りする。長きに渡り政治を汚してきた腐敗に嫌気が差した市民社会運動から生まれた議員たちである。

薬剤師のアラ・アル・リカビ氏(47)も新人の1人だ。同氏のイムティダド(Imtidad:拡大)党は、固定化した政治エリートに対する2019年10月の抗議運動の余波の中から出現してきた。

リカビ氏はAFPに、イムティダドは自らの立場を、2003年の米軍主導の侵攻以来、非公式に実施されてきた民族・宗派別割り当てシステムによって形成されてきた政権に対する「野党」としていると語った。

非常に限られた資金での選挙活動だったにもかかわらず、10月10日に行われた選挙の中間集計結果によれば、イムティダドはイラク国民議会の329議席中、9議席を確保した。

政治課題を後押しするにあたり、「議会における我々の規模は、あまり多くの自由裁量が可能になるようなものではないことは分かっています」リカビ氏はそう語り、その代わりイムティダド党は見張り役として活動することを目指すと強調した。

「割り当てに基づいてお膳立てされた政権には参加しません。ですので、指導者に責任を負わせることができます」リカビ氏はナシリヤの自宅でそう語った。シーア派の多いイラク南部のナシリヤは抗議活動の火種となった場所である。

全体的に、選挙では大規模な政治連合が勢力を保ったが、投票の棄権率は記録的なものだった。

最大の勝者は扇動的なシーア派の聖職者ムクタダー・サドル師が率いるサドル師派だった。サドル師派は70議席を獲得したと伝えられた。この結果は数週間以内に確定するものと思われる。

舞台裏で、議会の多数派を作るための連合の形成を巡る議論があり、今後の閣僚のポストを分配することになる可能性がある。

しかし抗議運動や、その延長線上にイムティダドが結成されたのは、まさにこのシステムに対抗するためである。

イムティダドは存在感を示すために独自の代替の連合を模索している。9議席しかないため、イムティダドは「議会で影響力を広げることはできないでしょう」と、判事であり政治学者でもあるサレハ・アル・アラウィ氏は言う。

リカビ氏は次のことを指摘する。「憲法によれば、大臣に質問をするには最低でも25人の議員が必要です」

この目標に向けて、他党とチームを組むために「合意形成に取り組んでいます」とリカビ氏は述べた。

特に、イムティダドは小規模なクルド人政党である「新世代運動(New Generation Movement)」と話し合いをしている。新世代運動はイムティダドと傾向が似ており、同じく9議席を獲得している。

2年前に勃発した未曾有の抗議運動で、石油は豊富だが貧困に苦しんでおり若者の失業率が上昇しているイラクを運営する政治階級に対する非難が行われた。

ナシリヤの市街は今も怒りの証言の地となっている。「殉教者」のポスターが壁を飾り、命を捧げた何百人もの活動家の多くに敬意を表している。

「ハシュド・アル・シャアビ (民衆動員部隊)」の派閥が、活動家を標的にしたことについて非難を受けている。ハシュド・アル・シャアビは武装部隊に統合された民兵組織であり、議会では親イランのファタハ(Fatah:征服)連合が代表となっている。

フセイン・アリ氏(28)は、デモ中に背中を撃たれて以来、2年間車椅子で生活していると言う。

「私はイムティダドに投票しました。イムティダドならデモ参加者の権利のために戦うことができると期待しています」アリ氏はそう語った。「怪我を負って以来ずっと、政府からは何も補償を受け取っていません」

イラクの既存の政治家の多くとは違い、リカビ氏のような新人は資金がほとんどなく、低コストの選挙活動をしなければならなかった。

イムティダドはナシリヤを県都とするジーカール県でのイベントやポスターに400万ディナール(約2,700ドル)を使用した。大規模政党では何千万ディナールも使われることが多いのに対し、この金額は僅かなものだ。

リカビ氏は有権者や現実から遊離した議員を「議員のステレオタイプ」と呼び、その打破を目指し、事務所を構えず、自身が所有する車を走らせた。

他の候補者はさらに質素だった。たとえばモハメド・アル・アヌーズ氏もその1人である。同氏はシーア派の聖地ナジャフで独自の選挙ポスターを掲示したことでソーシャル・メディアで知られるようになった。

アヌーズ氏はAFPに、自分には野党以外の選択肢はないと語った。

「大規模政党が私の立ち位置を見定めるために接触してきました」アヌーズ氏はそう語った。「過去数年間イラクを動かしてきた政党と同盟を組むつもりはありません」

「公共サービスはなく、腐敗が蔓延しています。我々をこういう状況に引きずり込んだのは彼らなのです」

AFP

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