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石油資源に恵まれながらも、貧困に苦しむイラク南部の人々

バスラ県は、イラク国内全体の原油生産量の約70%を生産しているにもかかわらず、イラクを悩ませる多くの問題の影響を特に強く受けている。(AFP)
バスラ県は、イラク国内全体の原油生産量の約70%を生産しているにもかかわらず、イラクを悩ませる多くの問題の影響を特に強く受けている。(AFP)
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06 Nov 2021 02:11:54 GMT9
06 Nov 2021 02:11:54 GMT9
  • バスラ県は、イラク全体の原油生産量の約70%を生産している。
  • バスラ県の失業率は、国民全体の20%から25%となっており、若者に至ってはその失業率は30%近くに及んでいる。

バスラ県、イラク:イラク南部に位置するバスラ県では、石油は自由に出回っているものの、その富がバスラの人々にはほとんど行き渡らず、多くの人々が生活に苦しんでいる。

バスラ県内に住む17歳のサジャドさんは、「現在も未来もない」と述べる。バスラの他の若者と同様に、彼もただ生き延びているだけだと述べた。彼はバラク県の病的な状況を表している。

バスラ県は、サウジアラビアに次ぐ中東第2位の輸出国であるイラクの原油生産量の約70%を生産している。

しかし、2003年の米軍侵攻により、独裁者サダム・フセイン氏が倒されて以来、長年にわたる戦争と混乱から立ち直ろうとしているイラクを悩ます多くの問題の影響を、バスラ県は特に強く受けている。

公式な数字はないものの、イラクの経済学者バリク・シューベルト氏は、バスラ県の失業率は20%から25%となっており、若者に至ってはその失業率は30%近くに及んでいる、と推定する。

世界銀行の統計によると、イラクの国全体の失業率は13.7%となっており、バスラにおける失業率高さが比較できる。

バスラ県では水や電気の供給不足、道路の汚染、炭化水素の採掘による有害な汚染などの問題があり、同県とその人口400万人は苦境に立たされている。

しかし、最も衝撃的なのは、バスラ県の若者が抱える絶望だ。

16歳のサジャドさんとジャワドさんは、水たばこを囲みながら、何か楽観的になれるものを探すのに苦労していた。

サジャドさんは働いておらず、ジャワドさんは「1日7,000ディナール(約4.80ドル)でレストランで8時間から13時間」働いていると話した。

ティグリス川とユーフラテス川が合流するシャット・アル・アラブ水路の岸辺に座りながら、サジャドさんは、「ここでは将来が見えない、バグダッドに行きたい」と話した。

2023年1月にバスラ県で開催されるサッカー大会「ガルフカップ」に向けて建設中の新しいスタジアムなど、同県では一部投資も行われている。

しかし、バスラ県の副知事であるドルガム・ アル・アジュワディ氏は、「バスラ県の人々は怒っている」ことを認めている。

副知事は、冷ややかなイラク政府が連邦予算を不公平に分配していると非難した。

同氏は「2021年、イラクの全体予算は約130兆イラクディナール(890億ドル)だが、バスラに配分された予算は1兆円以下だ」と述べ、「一方バスラ県からは108兆円以上の予算が出ているのにもかかわらず、バスラ県には国全体の予算の0.7%程度しか配分されていない」と指摘した。

しかし、バスラ県内在住の27歳のモルタダさんにとって、非難されるべきはイラク政府ではなく、バスラ県の地元の行政機関である。

モルタダさんはコロナ禍以前、無登録のアイスクリーム屋を経営していたと説明した。

モルタダさんは、「その後、当局は私の事業を含む違法な事業を停止させた」と述べ、「特定の人々」とのトラブルを避けるために、苗字を公表しないでほしいと求めた。

10月10日に行われたイラクの議会選挙では、「彼なら世の中を変えられると信じている」という理由で、モルタダさんは主要政党に属さない無所属の候補者に投票した。

多くのバスラの人々が抱える不満は非常に深い。

バスラ県は2018年半ばに大規模な抗議活動の温床となり、2019年10月から国を揺るがすほぼ全国規模の抗議デモの震源地となった。

バスラ県では、汚職や公共サービスの低下、そして何よりも隣国イランの影響に対する人々の怒りが噴出し、バスラのイラン領事館が放火された。

イランは、特定の政党や、かつてイラク軍に組み込まれていた準軍事組織「​ハシュド・アル・シャアビ 」の各武装グループを通じて、長年にわたりイラクに影響力を行使してきた。

バスラ県では、「イランに忠誠を誓うグループ」が有害な影響力を行使しており、経済構造に浸透していると非難する声もある。

そのような非難をする一人は、「名前が公表されたら殺される恐れがある」と述べ、氏名を明かさなかった。

バスラ県での大規模な抗議デモから3年が経ても、モルタダさんによると、状況はほとんど何も変わっていない。彼は雑用の仕事をしながら「国家のために」働くことを夢見ている。

バスラ県では、イラク国内のどの地域よりも、石油産業での仕事が安定と繁栄を約束された最高の仕事であるとみなされている。

しかし、イラク・クルディスタンにある地域国際問題研究所のエグゼクティブ・ディレクターを務めるマック・スケルトン氏によると、バスラ県における石油産業の仕事は、縁故採用で行われているという。

スケルトン氏は、「シーア派の主要政党は、バスラ県の石油会社や油田の警備契約など、さまざまな資産をめぐって争っている」と説明する。

しかし、職を得るためには「コネ」が必要であり、「結局のところ、これらの異なる権力の領域から恩恵を受けられる人の数には、ある程度限界がある」と加えた。

叔父が石油省で働いているサジャドさんは、「コネがあっても、仕事を得られない人もいる」と言う。

サジャドさんは、その親戚がすでに「自分の家族から既に2人に仕事を与えている」ため、彼は「自分を雇うことはできない」と不満を述べた。

AFP

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