• 政治活動家の話：「この改革により、選挙で選ばれた政府にますます近づいていており、これはヨルダンの政治を変えることにつながる」

ダウード・クッタブ

アムマン：ヨルダン議会に、選挙法の改革と行政府における国王の権限拡大を目的とした30の憲法改正案が提出された。

元弁護士のサラー・アルモウティ氏や、元アンマン市長で副首相のマンドゥ・アダディ氏らはこれを「不必要な修正」と批判した。改革案には、「広範な政治、安全保障面の権限を持つ国家安全保障評議会の制定」が含まれる。

新たな評議会は国王を議長とし、首相、陸軍長官、治安部隊長官、外務大臣、内務大臣のほか、国王が任命する2名のメンバーで構成される。

懸念されるのは、評議会が 「政府の行政府や立法府と並行する新たな組織を作る 」ことになる点だ。

また、ヨルダン国王は、これまでも任命・解雇権を保持していた陸軍長官、国家憲兵隊長、諜報機関長だけでなく、主席判事、シャリア法廷の長、グランド・ムフティ、王立ハシミテ裁判所長と顧問も任命及び解雇できるようになる。

以前は、これらの人事はすべて首相の推薦に基づいて行われた。

民主主義と発展のためのアラブ・ルネッサンスの長を務めるサマール・マレブ氏は、改正案には「正当性がない」とアラブ・ニュースに話した。

「これらの改正は政府への不信感を深め、国家に対する責任を果たすべき主権機関が、宮廷による一方的な意思決定に動かさせれてしまうことにつながる」とマレブ氏は述べた。

これら改正案の裏にあるメッセージは、選挙で選ばれた団体には重要な決定を下すことができないというものだと彼は付け加えた。

「市民社会の活動家として我々はこの改正案を拒否する。この改正は、安全保障や外交関係の重要な問題に関する決定権についての父権主義的な態度を反映している」とマレブ氏は言う。

一方で、弁護士で活動家でもあるヘイサム・エレイフェジ氏はアラブ・ニュースに対し、「ただ一つの目標」を目指す今回の憲法改正を歓迎すると話した。

「安全保障や外交の問題は国王の手に委ねることを明確にした上で、選挙で選ばれた政府を作る準備を整えることがその目的だ。選挙で選ばれた首相は、経済、健康、教育などの分野で権限を持つことになる」と彼は付け加えた。

同氏はこの修正案は「改革により選挙で選ばれた政府にますます近づいていており、これはヨルダンの政治を変えることにつながるというメッセージで国民を安心させるものだ」と考えている。

元BBCの記者で調査報道の指導も行っているサアード・ハタル氏はアラブ・ニュースに対し、この修正案は「必要ない。民主的改革への努力を損なう」と話した。

「政府から国王に権限を委譲することで改正案は国王を脆弱な立場に置くことになる。一方で国王は批判を免れるが、国王の任命に政府からの推薦が必要ないため、物事がうまくいかない場合には、国王の免罪符を守ることが難しくなる」とハタル氏は述べた。

MENA地域のWAN／IFRAジェンダー委員会のメンバーで、アルバラドのラジオ局の局長も務めるエタフ・ルーダン氏はアラブ・ニュースに、改正案は「一般の人々に議論の機会がなかった。政府が弱体化したためにこのような改正が提出されたという意見もあるが、首相の任免権は国王にあることを忘れてはならない」と話した。

経済と情報科学研究のためのフェニックス・センター創設者兼所長のアハマド・アワド氏はアラブ・ニュースに対し、これらの改正案の背後にいる人々は、「政府運営に対するリスクと、国家統合のシンボルとしての王様に与える影響を考慮していなかった。憲法上、国王には責任がないのに、国王を行政問題に巻き込むことになるだろう。私は、現行憲法の抑制と均衡を維持することで国王は非難されない存在でり続けるべきだと考えている 」と話した。

ヨルダン政府は、ムサ・マイタ政治問題担当大臣を通じて批判に応えた。

同大臣は、憲法改正によって国家安全保障評議会が創設され、これは「軍部と文民機関の調整に役立つ」と述べた。

火曜日に国会での質問に答えて「紛争、戦争、テロ行為、麻薬などの近年の課題はいずれも国の安全保障に影響を与える問題であり、このことが今回の改正案を推し進める理由である」と同大臣は話した。