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国連の人権専門家、子供たちのシリアからの帰国を拒否する各国の姿勢は「想像を絶する」

フィニュアラ・ニアレンさんによると、わずか12歳の少年が恐怖におびえて暮らしているという。(AFP)
フィニュアラ・ニアレンさんによると、わずか12歳の少年が恐怖におびえて暮らしているという。(AFP)
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26 Jan 2022 05:01:45 GMT9
26 Jan 2022 05:01:45 GMT9
  • 仏・独・英・米を含む57カ国出身の700名を超える子供たちが、ダーイシュ(IS)戦闘員とその家族を収容するアル・グワイラン刑務所に拘留されている
  • 先週ダーイシュ戦闘員数百名が脱獄を狙って反乱を開始、現在も武力衝突が続くなか、これまでに約300名が死亡

エファレム・ コッセイフィ

ニューヨーク:国連の人権専門家が25日、シリア北東部アル・ハサカ県のアル・グワイラン刑務所に収監されている700名を超える子供たちの人権状況に対し、深刻な懸念を表明した。さらにシリアで拘束されている自国民の子供たちを本国に帰国させるよう、全当事国に訴えた。

アル・グワイラン刑務所では先週、ダーイシュ(IS)戦闘員数百名が脱獄を企てて死者が発生した。

「刑務所内で混乱と虐殺が巻き起こるなか、まだ12歳の少年たちが生命の危機に瀕しています」とテロ対策に加えて人権の促進と保護を担当する国連のフィニュアラ・ニアレン特別報告者が述べた。

「指定テロ組織との関係が疑われる親のもとに生まれた以外、少年たち自身には何の罪もないにも関わらず、母国から見捨てられ悲惨な状況の下に放置されているのです。

「刑務所というおぞましい場所で拘留されている少年たちへの扱いは、子供の尊厳を毀損し、すべての子供たちが尊厳をもって扱われる権利を無視する行為です」

アル・グワイラン刑務所では先週木曜日、自動車爆弾2台の爆発により戦闘が発生し、被収容者約300名が死亡している。出身国約60カ国の5000名を超えるダーイシュ戦闘員たちが収容されているこの刑務所では、いまだに武力衝突が続いている。戦闘員たちは、刑務所内の子供たちが収容されている区画を掌握してしまった。

被収容者を取り巻く状況が深刻さを増すなか、いまだにダーイシュ戦闘員たちが占拠を続ける刑務所内の最後の区画を、敵対するシリア民主軍の戦闘員たちが包囲している最中だとみられる。

各人道支援団体は、全当事国の政府に対し自国民をシリアから本国に引き取るよう改めて呼びかけている。

「国家が子供たちの帰国を卑劣にも拒否していることが、ここ数日アル・ハサカ県で発生した治安と人権の崩壊を引き起こした要因の1つとなっています」とニアレン特別報告者は語った。彼女は昨年、シリアの難民キャンプに自国民がいるとみられる57カ国の政府宛てに公開書簡を送った。その57カ国には、フランス・ドイツ・イギリス・フィンランド・アメリカが含まれている。

テロの犠牲者で国際法で保護が必要とされる、収容された子供たちの帰国を認めない各国政府の姿勢は「想像を絶する」とニアレン特別報告者は語った。

「ここ数年で母親や家族から強制的に引き離された少年たちの多くは、生まれてからずっと最も基本的な人権が奪われた状態が続いているのです」と彼女は付け加えた。

「少年たちは理由なく拘束され、自由を奪われる根拠となる司法手続きを1度も受けたことがありません。さらに国際法の下では拷問・過酷で屈辱的な扱いと見なされる状況に置かれています」

「少年たちを別扱いし、子供としての権利を事実上認めないというのは、一種のジェンダー差別です。このジェンダー差別によりアル・ハサカ県の刑務所で武力衝突に巻き込まれている子供たちは、恐ろしい目に遭っているのです」

ニアレン特別報告者は、シリア北東部で活動するすべての国家や準国家組織に対し民間人を確実に保護し、刑務所の支配権を取り戻そうとしている集団に対しては、捕らわれている子供たちを保護しこれ以上危害が及ばぬように善処するよう求めた。

特別報告者とは、国連人権理事会が任命し政府や組織から独立した個人の立場で任務に就く専門家のこと。国連職員ではなく、活動に対して報酬を受け取ることはない。

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