• 経済専門家らは小麦や大麦など一部商品の急激な価格高騰を警告
• 在ウクライナヨルダン人数千名の多くは学生であり、外務省の支援のもと国外脱出を試みている

ダウド・クッターブ

アンマン：ヨルダンはロシアのウクライナ侵攻がもたらす更なる経済的打撃に備えている。

アンマン商工会議所の副会頭を務めた実業家のムーサ・サケット氏は、ロシアのウクライナ侵攻による経済的影響はヨルダン国民の生活にも及ぶだろうと、アラブニュースの取材に語った。

「ヨルダンの国家予算は燃料価格の上昇幅が2.4%を超えないことを前提に組まれていますが、我々は3%を超える値上がりを予想しています」とサケット氏は述べた。

また同氏は、ヨルダンは地場産業に必要な原材料の85%を輸入しているため、世界的な燃料価格の高騰は消費者の負担に直結するだろうと付け加えた。

サケット氏は輸出入の遅れによるサプライチェーンの問題が経済的な損失を生むことも懸念している。「小麦と大麦は間違いなく値上がりするでしょう。化学製品の輸出額は200～300万ヨルダン・ディナール（280～420万ドル）ですが、こうした製品の一部にも影響が出ると予想しています」。

ヨルダン外務省は、避難先を求める数千人の在ウクライナヨルダン人を助けようと奔走している。外務省の情報によれば、ウクライナには同国とヨルダンとの二重国籍を持つ人を含めて3,500名のヨルダン人が暮らしている。

外務省のヘイサム・アブ・アルフール報道官は、ウクライナでは出国を試みる人が大勢集まっていると語った。「100名のヨルダン人が既に出国しており、帰国支援を望む在ウクライナヨルダン人とコミュニケーションを取るために緊急で立ち上げたプラットフォームに1430名が登録しています」と同氏は述べた。

外務省はアラブ・ニュースに対し、戦火に見舞われたウクライナから人々が確実に脱出できる安全な避難路を確立すべく、ウクライナ当局と連絡を取り合っていると述べた。

ウクライナ・ダイアローグ・アンド・コミュニケーション・センターを率いるイマド・アル・アルルブ氏はアラブ・ニュースの取材に対し、ヨルダン人の負傷者は出ていないと語った。 

「一か月まえ、ウクライナに暮らす全てのヨルダン人に退去勧告が出されましたが、こんなにも急速に状況が変化するとは誰ひとり予想していませんでした」とアルルブ氏は述べ、多くのヨルダン人学生が別の大学に転入するために学業の証明書類を取得しようと試みている、と付け加えた。「こちら側のスタッフが国境を超えるヨルダン人を待っており、今回のために借りつけたバスで無償の移送を行っています」。 

アラブ・ニュースの取材に対し、ヨルダン国議会外交委員会のカルドウーム ヘイナ委員長は「ヨルダン人のウクライナ退去の動きは非常に遅れていました」と語った。「4週間前に外務省から警告を受け、プラットフォームへの登録が求められていましたが、彼らは何もしませんでした。しかし戦争がはじまると、登録数は急激に増加したのです」。ヨルダン人らはこの状況を乗り越え、大学生はヨルダン国内の大学で学業を続ける場所を見つけられるだろうと、ヘイナ氏は述べた。

ヨルダンはウクライナからもロシアからも小麦を輸入してはいないが、植物油の価格は侵攻からの数日で急上昇した。

食料品組合のカリル ハッジ テウフィック代表は、アラブ・ニュースの取材に対し、心配は無用だと語った。「ヨルダンがウクライナとロシアから輸入している基礎的な食料品は、ヒマワリ油と冷凍鶏肉だけです」。米、砂糖、ドライミルクなどの食料必需品には他の供給源が確保されていると、同氏は付け加えた。

ヨルダンとウクライナの貿易額は2001年に1億4,800万ドルを記録し、2020年の1億4,400万ドルから14%増加した。ヨルダンは年間400万ドルの商品をウクライナに輸出しており、その大半を医薬品、肥料、化学製品が占めている。