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医療システムの破壊 ウクライナは深刻な人道危機へ

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17 Mar 2022 12:03:11 GMT9
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  • 医師や医療従事者は、戦場から逃げられない病人、高齢者、負傷者のケアを余儀なくされている
  • 特に包囲された都市マリウポルの状況は悲惨であり、援助が入ることも、市民が安全のために逃げることもできない

ラワン・ラドワン

ジェッダ:ウクライナでの戦争は、ほぼ一夜にして、医師や医療従事者を極限状態に追い込んだ。医療施設が空爆や砲撃を受けているため、戦禍の国から逃げ出すことができない病人や高齢者、負傷者のケアを余儀なくされ、超人的な活動を強いられている。

2月24日にロシアがウクライナに侵攻を開始して以来、世界保健機関(WHO)の「医療への攻撃に関する監視システム(SSA)」によって、約43件の医療施設に対する攻撃が記録されている。

報告された攻撃のうち24件では、医療施設が破損または完全に破壊され、5件では救急車が攻撃された。これらの攻撃で合計12人が死亡し、34人が負傷した、しかし、援助機関は全国的な犠牲者は報告よりもはるかに多いことを懸念している。

「WHOは、医療に対する暴力行為を強く非難する」と、同国連機関は14日、声明を発表した。「攻撃の一つひとつが、人々の命を救うサービスを奪っている。医療機関への攻撃は、国際人道法および人権の侵害である」

貿易と流通の途絶により、酸素、インシュリン、手術用品、麻酔薬、輸血キット、その他妊娠合併症の管理機器を含む医療用品が、ウクライナ全域ですでに危険なほど不足している。

WHOは、「サプライチェーンが大きく寸断されている」と述べている。「多くの流通業者が稼働しておらず、軍事行動によりアクセスできない備蓄品もある。医薬品は不足し、病院は病人や負傷者へのケアに苦慮している」

ロシア軍によって産科病院が標的となった。また、産科病棟は死傷者の治療に回されている。このため、ウクライナの妊婦や新生児は特に危険にさらされている。(AFP)

医療インフラの悪化により、極寒の地での低体温症、凍傷、呼吸器疾患などの懸念が高まっている。さらに、精神衛生上の問題や、心血管疾患、糖尿病、癌などの慢性疾患に対する治療不足にも警鐘が鳴らされている。

マーティン・グリフィス人道問題担当国連事務次長は3月14日、中央緊急対応基金から4000万ドルを援助機関に拠出すると発表した。同氏は「この厳しく、深刻化する危機に直面し、私たちは大規模な救援活動を展開する」と述べた。

また、同国の北部、東部、南部における活発な戦闘のため、多くの地域医療従事者が非難や潜伏を余儀なくされている。このため高齢者や移動に問題のある人たちが自活しているのが現状だ。

2022年3月16日、ルーマニアのシレトにあるチャリティセンターで、ウクライナから避難してきた子どもたちが遊んでいる。(クロダギ・キルコイネ/ロイター)

燃え盛る建物、防空壕に詰め込まれた人々、救急隊員に運ばれる負傷者、遺体安置所に運ばれ近親者の身元確認を待つ、段ボール片に覆われた死者。残念ながら、これらの光景は日常となっている。

WHO、国連児童基金(UNICEF)、国連人口基金(UNFPA)は、3月13日に発表した共同声明で、ウクライナの医療従事者や施設に対する攻撃を停止し、即時停戦するよう呼びかけた。

「最も弱い立場にある人々、すなわち乳児、児童、妊婦、すでに病気や疾病に苦しんでいる人々、そして命を救うために自らの命を危険にさらしている医療従事者を攻撃することは、道から外れた残虐行為である」と、彼らは述べた。

ここ数日、ウクライナで最も衝撃的だったのは、3月9日に南部の港町マリウポリにある産科病院がミサイル攻撃を受けたときの惨状を写した画像だろう。

この攻撃で少女を含む少なくとも3人が死亡した。そして3月14日には、この攻撃で負傷した妊婦が胎児とともに死亡している。廃墟から担架で運ばれる女性の写真は、戦争による民間人の残酷な犠牲を象徴するものとなっている。

2022年3月8日。ロシアの攻撃で負傷し、ウクライナ西部ムィコラーイウの中央病院で治療を受けるウクライナ人男性。(Videograb・警察配布資料より/AFP)

国連のリプロダクティブ・ヘルス機関であるUNFPAによると、この攻撃の前には、他の2つの産科病院が攻撃され、破壊されていたという。

キエフ郊外にあるレレカ産科病院は、妊婦に最高の出産体験を提供していた。現在、この病院は負傷した兵士を治療する総合病院であると同時に、緊急の産科医療を提供している。

2月24日以降、この病院では20人以上の赤ちゃんが誕生している。病院には、砲撃から逃れた近隣の村人たちが最大4時間かけて通っている。かつては高速道路で簡単に行けたが、今は田舎道を通って避難しなければならない。

レレカ産科病院のCOO、ヴァディム・ズーキン氏は次のように語った。「キエフで何が起こっているのか、理解するのは難しい。また、ウクライナで最も優れた病院のひとつとされていた私たちの病院で起きていることも。個人的には、ヨーロッパでこんなことが現実になるとは想像もしていなかった。こんな光景は、以前は映画の中でしか見たことがなかった」

キエフ中心部の近くにあるウクライナ最大の小児病院、国立オマットディト小児病院の患者は、今日、ロケット弾の爆発音で目を覚ました。病院の近くには破片が散らばっている。

同病院もまた、すべての戦災患者を治療するために門戸を開いている。ニューヨーク・タイムズ紙の写真家フアン・ディエゴ・アレドンド氏は治療のためオマットディト病院に搬送されたが、同僚のブレント・ルノー氏は現場で死亡が発表された。

オーマットディトの広報担当者アナスタシア・マジェラモヴァ氏は、病院の中の画像や動画を共有した。病棟はシェルショックから回復しつつある患者で埋まっている。医師や病院スタッフは一部の患者を地下に移した。重症患者のそばには、少なくとも1人の主治医と看護師が必要となる。

ロシア当局は、産科病院はウクライナの過激派に占拠された後、基地として使用されており、患者や医療従事者は中に残されていないと主張している。また、ロシアの国連大使と在ロンドンロシア大使館は、攻撃後の画像は偽物だと主張している。

2022年3月14日に撮影された衛星画像は、ウクライナのマリウポリでロシアの空爆により破壊された病院とアパートを示している。(マクサー・テクノロジーズ/AFP)

モスクワは、ウクライナでの「特別軍事作戦」は、ロシアの安全と東部ドンバス地域のロシア語を話す人々の安全を守ることを目的としていると主張している。西側諸国は、ロシアが主権国家を侵略し、戦争犯罪を犯していると非難している。

「医療機関や医療従事者への攻撃は、人々が必要不可欠な医療サービスを利用する能力、特に女性や子ども、その他の弱者に直接影響を与える」と、国連機関は共同声明で述べている。

「私たちはすでに、ウクライナ国内の妊婦、乳児を抱えた母親、小さな子ども、高齢者のヘルスケアニーズが高まっていること、一方で、暴力によってサービスへのアクセスが著しく制限されていることを確認している」

ロシアの侵攻開始以来、ウクライナでは4300人以上の出産があり、「今後3ヶ月で、8万人のウクライナ女性が出産すると予想される」と国連職員は付け加えた。

写真は、米国の救援団体サマリタンズ・パースがウクライナ西部のソキルニキーにあるショッピングモールの地下駐車場に設置した野戦病院。(ユーリイ・ジャチーシン/AFP)

「ウクライナの医療制度は明らかに大きな負担を受けており、その崩壊は大惨事となるだろう。それを避けるために、あらゆる努力をしなければならない」

「私たちは、人道支援を必要とする人々がアクセスできるよう、妨害のないアクセスを含む即時停戦を要求している。ウクライナの戦争を終わらせるための平和的解決は可能である」

マリウポルの人道的状況は特に悲惨である。避難通路の確立に何度も失敗したため、援助が入ることができず、市民が安全な場所に逃げることができない。食料と清潔な飲料水へのアクセスは、特に健康上の懸念事項となっている。

国境なき医師団の緊急管理者であるケイト・ホワイト氏は、3月11日の声明で「小さな子どもたちにとって、これは特に危険なことだ」と述べている。

「大人と違って、子どもたちの体は食べ物や水の摂取量の大きな変動に耐えられないため、脱水症状を起こす危険性が高い。また、汚染された水が下痢を引き起こし、下痢がさらなる脱水を引き起こすという悪循環に陥ることもある。極端な場合には、死に至ることもある」

ウクライナでは約1800万人が戦争の影響を受けたとされ、670万人が国内避難民となっている。

侵攻後2週間で280万人以上が近隣諸国に渡った。その大半は西のポーランドに向かっており、これは第二次世界大戦後、ヨーロッパで最も急速に拡大した難民危機となっている。

赤十字国際委員会によると、18歳から60歳までのウクライナ人男性の出国が禁止されているため、近隣諸国へ渡るのは主に女性、子ども、高齢者、障害者であるという。

援助機関は紛争地域に閉じ込められた民間人を避難させ、医薬品を届け、避難した世帯に衛生的な宿泊施設を提供するために活動している。しかし戦争のトラウマによる目に見えない傷跡の対処は、今後さらに困難なものとなるだろう。

「精神的な傷の回復には何年もかかることが多い。しかし、緊急の援助が必要な場合もある。私たちは、この戦争がもたらす大規模な精神衛生上の影響に、何年にもわたって対処していかなければならない」とホワイト氏は述べた。

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