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イスラエル・パレスチナ和平 「バイデン政権の取り組みは、舞台裏で静かに進んでいる」

パレスチナのマフムード・アッバース大統領は昨年、ラマッラーでハディ・アムル国務副次官補(イスラエル・パレスチナ問題担当)を迎えた。(AFP)
パレスチナのマフムード・アッバース大統領は昨年、ラマッラーでハディ・アムル国務副次官補(イスラエル・パレスチナ問題担当)を迎えた。(AFP)
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01 Apr 2022 07:04:06 GMT9
01 Apr 2022 07:04:06 GMT9
  • 米政権で働くアラブ系アメリカ人はアムル氏など数十人の高官を含む「数百人」へ成長

レイ・ハナニア

シカゴ:バイデン政権は、イスラエル人とパレスチナ人が共に暮らすために静かに物事を進め、人々の生活を改善するために水面下で動いている。ハディ・アムル国務副次官補(イスラエル・パレスチナ問題担当)がアラブニュースの独占インタビューでそう語った。

アムル氏は自身の責務を「イスラエルとパレスチナに対する米国の外交政策の調整」と定義する。そして、ジョー・バイデン米大統領とアンソニー・ブリンケン国務長官は、アラブ系米国人がそのプロセスで「真の役割」を果たすことを確約していると述べた。

アムル氏が2021年1月20日に任命されて以来、初の公式インタビューとなる。その主要な責任について同氏は、和平が可能になる雰囲気を作り出すために、「イスラエルとパレスチナに対する米国の外交政策を個別に、また両者の間の溝を埋める努力において調整する」ことであると述べた。バイデン政権は、この点で前進しているという。

「ヨルダン川西岸地区とガザ地区に住む一般人であれば、この1年でいくつかの変化を目にしたことだろう。イスラエルはガザの水の供給量を40%増やした。小さなことに見えるかもしれない。しかし、人々の生活に大きな違いをもたらしている」

「イスラエルは、ガザのパレスチナ人に対し、イスラエルで働くための労働許可を1万件以上与えている。1年前はそうではなかったし、この何年もの間、どの時期よりも多い数だ。そしてご存知のように、最近イスラエルはその数を約2万人にまで増やすと発表した。その結果、ガザの人々にとって意味のある形で、初めて失業率が低下した。状況は改善されつつある」

アムル氏は別の例を挙げた。「イスラエルは、ヨルダン川西岸地区で身分証明書を持っていない何千人ものパレスチナ人に身分証明書を発行している。私たちの考えでは、これらは単なる行政上の問題でもなければ、経済的な問題でもない。移動の自由に関わる問題なのだ。居住許可証があれば旅行ができる。私たちは、この動きが人々の生活に真の違いをもたらすことを期待している」

たとえニュースメディアの見出しにならなくても、パレスチナ人に対する圧力の緩和は、物事を成し遂げるための前向きな雰囲気を作り出すのに役立っているという例は多数あるという。

アムル氏は、その詳細を説明することはできないが、バイデン政権がアンソニー・ブリンケン国務長官を通じて「舞台裏で他のさまざまな問題に対し、静かに、そして強固に取り組んでいる」と強調した。

アムル氏はブリンケン氏について、「彼は、そのために静かで強固な外交を通じて舞台裏で働くつもりだとも言っており、それが我々の核となる哲学だ」と説明した。

「国務長官は、その哲学自体も大切だが、何より重要なのは、それが交渉により解決に至るための手段だと信じている。これが全体像といえるだろう」

アムル氏は、現在進行中のイスラエル人とパレスチナ人の和平に向けた歩み寄りのための取り組みについては話したくない、と述べた。「なぜなら、このようなことを前もって話せば話すほど、それが実現する可能性は低くなると思うからだ。ただ、私が望むのは、普通の人々の生活水準を向上させるようなステップに今後も取り組んでいくことだ。そして、そのことが自信となり、私たちの進むべき道を示してくれることを願っている」

「米国は、パレスチナの人々への重要な支援を再開した。昨年は5億ドル以上を提供し、そのうち4億ドル以上は国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)を通じてサービスを提供している。そして、これらの資金が一般の人々の生活水準を向上させるために、真の違いを生み出していると感じている」

アムル氏は子供の頃、「あらゆる場所にある不公正さは、あらゆる場所にある公正さへの脅威である」というマーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の言葉に感銘を受けたという。この言葉は、ワシントンDCにあるキング牧師記念碑に、いくつかの引用文と共に記されている。

アムル氏のキャリアは、世界銀行、世界経済フォーラム、ユニセフを含むさまざまな国連組織での勤務を含む。「私は常にその仕事の中に、人々にふさわしい生活と正義をもたらすという概念を吹き込もうとしてきた」

2000年の大統領選挙キャンペーンでは、候補者であり元副大統領のアル・ゴア氏の民族関与ナショナル・ディレクターを務めた。その後、米国国際開発庁の中東担当副長官補として、「対外援助プログラムの管理を支援」した。2013年には、ジョン・ケリー国務長官のもとでパレスチナ・イスラエル交渉の副特使として4年間勤務した。

アムル氏は、バイデン政権から、国務省のブリンケン氏のもとで働き、イスラエル人とパレスチナ人の両方を平等に扱う政策を追求するよう要請されたことを光栄に思うと述べた。

「バイデン大統領は、イスラエル人とパレスチナ人が等しく安全で安心に暮らし、自由、繁栄、民主主義を等しく享受するに値すると信じていると話し、それを明確に示している」

4月1日に「アラブ系米国人文化遺産月間」を迎えるにあたり、アムル氏は、バイデン政権ではアラブ系アメリカ人が重要な役割を担っていると主張する。

「アラブ系アメリカ人は絶対的な役割を担っている。若い頃、そして大学生になってからも、私たちのような名前を政府で見かけることはなかった。いないとは言わないが、見えない存在であった。ある時、私はこの状況を変えるチャンスがあれば、そうしようと心に誓った。自分の子どもたちには、アラブ系アメリカ人が、政府で目に見える役割を果たすことが当たり前のアメリカで育ってほしい」

「アラブ系アメリカ人は米国の人口の1%に過ぎないが、今では国務省における数万人の職員のうち、新入職員から上級職員まで数百人がアラブ系アメリカ人になっている。私が数十年前にワシントンに来たときはそうではなかった。その頃は、アラブ系アメリカ人は私一人だと感じることがよくあった」

「現在では、私の勤務する中東局にも多くのアラブ系アメリカ人が働いている。10年以上前に設立された『アラブ系アメリカ人外交官親睦会』もあり、約400人のメンバーがいる」。このグループは、アフリカ系アメリカ人、ヒスパニック系アメリカ人、アジア系アメリカ人などのエスニック系アメリカ人を代表する多くのグループのひとつである。

「アメリカの多様性とともに、国務省のあらゆるレベルにアラブ系アメリカ人が存在している。国務長官の首席補佐官であるスージー・ジョージ氏はアラブ系アメリカ人だ。ここ近東局を含め、国務省のいたるところにアラブ系アメリカ人がおり、私のチームにもあらゆる経歴を持つ多様なアメリカ人がいる」

「大統領が公約を果たしたかどうかは、(アラブ人)コミュニティーの判断に委ねられる。しかし、私が見たところ、この政権は物事を実現することを約束した政権である。国務省の公務員や外交官には何百人ものアラブ系アメリカ人がいて、どんどん出世している」

アムル氏は、多様性と包括性が「イスラエル人とパレスチナ人の間の平和に貢献する」と述べた。

アムル氏はバイデン政権がイスラエル人とパレスチナ人に対する政策を定める上で、重要な役割を果たすようになった。昨年、バイデン氏が彼を駐パレスチナ米国総領事に任命するのではないかという報道が表面化した。ブリンケン氏は2021年5月、エルサレムに駐パレスチナ米国領事館を再興し、そこで総領事を務めたいとの希望を発表していた。しかし、この構想は保留されたままだ。

「平和、自由、安全、そして繁栄は、イスラエル人とパレスチナ人のために私たち全員が求めるものであり、それは大変で地道な仕事だ。新聞の見出しを飾るようなことばかりではない。ガザのパレスチナ人がイスラエルで働けるようにすることで、ガザ地区の失業率を下げる、ヨルダン川西岸地区のパレスチナ人がより普通の生活を送れるようにするために居住許可証を発行する、水の供給、電気の供給を確保する、といったことだ」

「平和とは、『大きな見出し』だけからは生まれない。普通の人々の生活に影響を与える懸念事項を積み上げ、対処することが全てだ。また、起きてほしくないことが起きないようにすることでもある。基本的に私たちがしようとしていることは、ポジティブなことを強調し、ネガティブなことを最小限に抑え、前に進み、普通の人々の生活をできる限り向上させるために、良い関係を築こうとすることなのだ」

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